薬物代謝能力測定キットの開発と医薬品適正使用への応用

文献情報

文献番号
199800687A
報告書区分
総括
研究課題名
薬物代謝能力測定キットの開発と医薬品適正使用への応用
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
中島 恵美(共立薬科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 飯笹久(共立薬科大学)
  • 服部研之(共立薬科大学)
  • 柴崎敏昭(共立薬科大学)
  • 福原守雄(国立公衆衛生院)
  • 乾 賢一(京都大学医学部附属病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
3,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は小児・高齢者に対する医薬品の適正使用を推進するために、患者の薬物代謝能力の指標となる主な代謝酵素量を事前に診断するキットを開発し、これにより加齢変動要因を解析し、治療薬の薬物療法最適化をはかることを目的としている.
研究方法
(1) in vivo 代謝酵素量診断法の開発
各種CYPに特異的な診断プローブを用いてin vivo での各CYP量をPK-CYP Testで測定する.プローブの条件検討や微量定量方法の確立を行い、加齢変動解析を行った.
(2)薬物療法設計ソフトの開発
治療薬の固有情報を組み込んで、 個々の患者に最適な薬物療法を自動的に得られる普遍的な薬物療法設計ソフトへの応用をはかる.初年度は主としてCYP1A2の情報を収集した.
結果と考察
これまでに我々は、薬物療法の個別化を成功させるためには、(1)精度良く、個々の患者の代謝能を測定すること、及び、(2)個々の患者の肝代謝酵素活性の測定値をもとに、適切な薬用量を普遍的に算出するシステムを確立すること、が必要であると考えて以下の研究を展開してきた.
研究代表者の中島は、生理学的薬物速度論を用いた病態時の体内動態変動要因の機構論的解析を行って、プローブを用いた非侵襲的な患者の代謝能力を診断するPK-CYP Testを考案するに至った.
飯笹は、最先端の分子生物学的経験と技術に熟知しており、PK-CYP Testの診断原理を立証し、臨床応用への可能性をさらに高めることができた.服部は、生体分子の分離定量について経験を有しており、CYP酵素量の定量法、CYP酵素の活性測定法、並びに、プローブ薬物の?中濃度測定法の確立等を担当した.
これらの協力体制のもとに、初年度は主としてラットを用いた代謝能測定方法の確立に向けて研究を展開した.また、酵素量変動モデル動物の作製並びに抗体を用いた酵素量の定量を行った.さらに、これらの動物を用いて、病態への応用をはかる基礎検討を実施して、ある程度の成果を得た.すなわち、酵素誘導剤を投与して肝代謝酵素を誘導させたラットをモデル動物として、生体レベルでのCYP1A2量をPK-CYP Testにより診断した.一方で、生化学的な手法によってCYP1A2量を測定し、両者がよく一致することを確認した(日本薬物動態学会、平成10年11月、仙台で発表).また、肝障害モデル動物として、コリン欠乏食でラットを飼育し、CYP酵素量が減少したモデル動物を作製した.このラット並びに先程の酵素誘導剤投与ラットについて、プローブ薬を用いて測定した代謝酵素活性から、他の薬物の投与量を決定することにも成功した(日本薬学会、平成11年3月、徳島で発表).
結論
生体のCYP量を測定する原理は未確立であったが、本研究により、サブタイプ毎の薬物代謝酵素量を測定し、診断値に基づいた投与設計を行うことが可能になった.これにより波及的にTDMが成功すると考えられた.多くの薬物の過剰投与や相互作用による副作用を減少させ、医薬品の適正使用をより効率的に推進することができよう.高齢者などで今後問題となる多剤投与など無駄な投薬を減らすことにより、薬剤費の節減も期待される.さらに、本システムが普及することで、新薬開発がより効率的になることも期待される.

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