障害福祉サービス等報酬における医療的ケア児の判定基準確立のための研究

文献情報

文献番号
201817017A
報告書区分
総括
研究課題名
障害福祉サービス等報酬における医療的ケア児の判定基準確立のための研究
課題番号
H30-身体・知的-一般-008
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
田村 正徳(埼玉医科大学 総合医療センター小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 前田 浩利(医療法人財団はるたか会)
  • 岡 明(東京大学医学部 小児科)
  • 江原 伯陽(医療法人社団エバラこどもクリニック)
  • 北住 映二(心身障害児総合医療療育センター)
  • 荒木 暁子(公益社団法人 日本看護協会)
  • 星 順(医療型障害児入所施設カルガモの家)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
8,067,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では非重症心身障害児の医療ケア児に対する支援体制についての現状と課題を明らかにし、児の安全性を確保して家族の負担の少ない適切な医療・福祉サービスが受けられるような判定基準を確立する。
研究方法
I-1. 移動可能な要医療的ケア児者の、短期入所の現状とケアの問題点についての全国調査
全国の医療型障害児入所施設、療養介護施設、および重症心身障害病棟のある国立病院機構250箇所を対象としたアンケート調査。
I-2.埼玉県における移動可能な要医療的ケア児者の、通所施設利用の現状とケアの問題点についての調査
埼玉県内の日中利用の通所事業所のうち、事前の調査で医療的ケア児の受け入れ実績がある34箇所を対象としたアンケート調査。
Ⅱ-1.パイロット事例分析を通してのリスク度評価点の算出方法の検討:見守り度を定量的に評価するために高度医療的ケア児を対象として1秒間に1枚の静止画を撮影する複数台のカメラを調査対象患者宅に設置し、24時間の定点撮影を行い、5分毎のケア内容の記録を併用した。
Ⅱ‐2 医療的ケア児の介護・見守り度の定量化モデルの検討
医療的ケア児の介護・見守り必要度の算出法として、①運動機能、②知的機能、③医療依存度の指標を設定し、介護・見守りの負担の度合いを示すADL係数を設定し、介護・見守り必要度=ADL係数×重症児スコアというモデルを、班会議で協議した。
Ⅱ-3. 人工呼吸器装着児の危険行動の早期認識装置の開発に向けての試行
最先端の工学研究者の協力を取り付けてパイロット装置の開発を試行した。
III. 医療的ケア児判定基準案の文献的または学会での検討案の調査と分析
結果と考察
I-1. 109施設から回答があり、42施設で1年内に移動可能な要医療的ケア児者118名の短期入所が実施された。49名において、職員による24時間又は睡眠時以外はほぼ常時の見守りや1対1での対応が必要とされていた。「今後、動く医療的ケア児者の短期入所を受入れますか」の設問に対して「はい」は9施設で、23施設が「いいえ」であった。動く医療的ケア児の短期入所が保障されるためには、ハード面の整備とともに、必要に応じて加配が可能な職員体制とそれを支える施設給付費などの行政からの対応が条件とされた。
I-2. 移動可能な要医療的ケア児者を受け入れは、返送のあった22施設のうち、14施設であり、看護師を配置していたが、2施設は保護者付き添いであった。「今後積極的に受け入れたい」と答えたのは7施設であるが、現在受け入れている14施設中5施設であった。
Ⅱ-1. 7例の高度医療的ケア児の観察研究から、1)超重症児スコアでは、動ける子どものケアの負荷を評価できない。2)見守り度の構成要素は、患者のリスクと実際のケア量と質、介護者のストレスがある。3)使用デバイス毎のリスク評価に、①発生頻度、②回復の容易さ、③トラブル発生が命にかかわるか、の3つの視点で係数を設定し、リスクに影響する身体状態評価によるデバイスの係数調整表を作成。4)リスクに影響する運動機能評価として、①上下肢、首の動作、②移動の可否、方法を評価して加算した。5)リスク度係数、運動機能評価点を個々に算出し、リスク度係数に運動機能評価点を乗じた点数を該当デバイス数分合計した数値をリスク度評価点とした。
Ⅱ‐2.①運動機能、②知的機能、③医療依存度、④ケア頻度の4指標が必要。①運動機能は、運動不能、上肢運動可能、移動運動機能の3区分を設定。②知的機能は、7歳相当の知的機能の有無で2区分を設定。運動機能と知的機能に基づき、ADL係数を設定。③医療依存度は、医療デバイスの抜去が及ぼす生命の危険を加味した拡大版重症児スコアを設定。④ケア頻度は、吸引などのケアの頻度に基づいた加算を設定。この4つの指標を用いて、介護・見守り必要度の定量化モデルは①昼の介護・見守り必要度=医療依存スコア×ADL係数、②夜の介護・見守り必要度=医療依存スコア×上肢運動係数+頻回ケア加算。
Ⅱ‐3. 電池不要なパッシブRFIDに基づく計測原理で,腕輪のRFIDタグを読み込み,手の接近を検出し記録する装置を作成した。
III. Family-centered careの観点から見た医療的ケア児の療養の文献的考察, 医療的ケア児判定基準案を日本小児科学会の立場から検討, 「育児ストレスショートフォーム」等の報告がなされた。
結論
移動可能な高度医療的ケア児は、生命のリスクの観点からも家族負担の観点からも課題が大きいが現状では短期入所や日中一時預かりサービスを受けることが困難な事が明らかになり、客観的な介護・見守り度計測法に基ずく評価法の確立が急務である。

公開日・更新日

公開日
2020-05-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-09-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201817017Z