障害者の地域移行及び地域生活支援のサービスの実態調査及び活用推進のためのガイドライン開発に資する研究

文献情報

文献番号
201817015A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者の地域移行及び地域生活支援のサービスの実態調査及び活用推進のためのガイドライン開発に資する研究
課題番号
H30-身体・知的-一般-006
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
田村 綾子(聖学院大学心理福祉学部心理福祉学科)
研究分担者(所属機関)
  • 藤井 千代(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・地域・司法精神医療研究部)
  • 行實志都子(神奈川県立保健福祉大学・保健福祉学部)
  • 鈴木孝典(高知県立大学・社会福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
4,570,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1.地域相談支援の実施状況及び内容や実績に係る実態を把握することと併せて、地域相談支援の効果的な展開を図るためのモデルを導き出すための基礎データを統計的研究によって得る。
2.上記の統計的調査の結果を質的研究によって追証すること及び、地域相談支援の展開モデルを好事例の実践分析より検討するためのフォーカスグループ・インタビュー調査から明らかにする。
3.1、2を踏まえて、地域相談支援の効果的な展開及び活動評価のためのガイドライン作成に向けた理論的枠組及び研究課題を検討する。
4.実態調査の分析結果より、障害福祉サービス報酬の次期改定に向けてより実効性のある仕組みや報酬のあり方に関する検討に資する基礎資料を得る。
研究方法
先行研究レビュー及び研究代表者、研究分担者、企画委員、ワーキングメンバー(研究者5人、地域相談支援に従事する相談支援専門員、ピアサポーター、医師、行政職)によるワーディングを経て質問紙調査票案を作成し、パイロットスタディと修正を重ねて質問紙調査票および質的調査のインタビューガイドを作成した。
厚生労働省障害保健福祉部障害福祉課の協力を得て、H30年9月1日現在、都道府県、政令市、中核市が指定している一般相談支援事業所(以下、事業所と省略)について調査し(回収率100%)、3,775か所の事業所を対象と確定したのち、郵送法による自記式質問紙を用いた悉皆調査をH30年11月22日から12月20日まで実施した。
調査対象となる好事例を企画検討会及びワーキングメンバーによる機縁法により選定し、4か所でインタビュー調査を実施した。調査は、研究協力者へのガイダンスを行い、研究者とワーキング等の相談支援専門員経験者等との2名体制での訪問によるフォーカスグループインタビュー調査とした。インタビュー内容は協力者全員に口頭及び文書での説明と同意を行ったうえでICレコーダーに録音したものを逐語記録化したのちに、質問項目及び各調査対象グループの特性に沿って重要項目を抽出し、これらを比較検討しながら重要カテゴリーを分類した。
これらの統計的調査及び質的調査の結果を踏まえて総合的に考察した。
結果と考察
指定一般相談支援事業所の悉皆調査により、全国の3,775事業所のうち1,473か所から有効回答を得た(回収率39%)ことで、全国における指定一般相談支援事業所の運営実態および障害者の地域移行・地域定着支援の実施に関する概況を把握できた。また特性の異なる4か所でのグループインタビューから汎化できる知見の収集と特色ある取組みを聴取できた。
1.地域相談支援の推進には、支援の担い手として事業所へのピアサポーターの配置及びソーシャルワーク専門職である精神保健福祉士や社会福祉士を位置付けることの有効性が示唆された。
2.事業所職員の自立支援協議会への関与と地域相談支援の実績との関連を分析した結果、地域相談支援の推進には、事業所が自立支援協議会や地域移行に関する部会など、地域相談支援の実施体制を整備する組織や取組みに関与することの有効性が示唆された。
3.地域相談支援の実施を困難にする因子の統計的な探索より、事業所の地域相談支援に係る「ノウハウ不足」と支援を実施する「体制の確保困難」が抽出された。このため地域相談支援の推進に向けて、研修企画や好事例からの知識を移譲する方策と合わせ、実施体制確保の方策を講じる必要があると考えられる。
また、地域定着支援については、上記2因子に加え、支給決定を行う市町村及び実施主体である事業所の双方において「必要性の認識欠如」が抽出された。この因子は「体制の確保困難」及び「ノウハウ不足」の因子と正に相関している。よって、「必要性の認識欠如」は、単なる認識不足ではなく、地域相談支援のマンパワーや報酬体系、求められる支援の特性などが関連し合い、構造化された課題によって生じるものと推量する。
結論
障害者の地域移行・地域定着支援の実施状況および好事例の特徴ともに、地域特性や障害に応じた取組みの促進要因と課題が明らかとなった。すなわち、相談支援事業所における地域相談支援に専従する職員の配置や、精神保健福祉士及びピアサポーターの配置が有効であること、相談支援専門員等の市町村自立支援協議会への参加も含めた地域内の関係機関の連携体制が構築されていること等が挙げられる。一方、地域移行・地域定着支援の稼働率を上げるためには、相談支援事業所職員における方法論の習熟と、人員配置を含む実施体制確保の課題が大きく、また給付決定する市町村が必要性を認識することも求められるほか、精神科医療機関および障害者支援施設との連携体制の構築も課題となることが推察され、次年度にこの実態調査を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2019-08-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-08-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201817015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,941,000円
(2)補助金確定額
5,941,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 971,956円
人件費・謝金 62,500円
旅費 1,119,325円
その他 2,416,328円
間接経費 1,371,000円
合計 5,941,109円

備考

備考
執行額の不足分109円(会議出席のための交通費)を自己資金にて補填した。そのため収入の「(2)補助金確定額」と支出の合計に差異が生じた。

公開日・更新日

公開日
2020-06-09
更新日
-