発達障害診療専門拠点機関の機能の整備と安定的な運営ガイドラインの作成のための研究

文献情報

文献番号
201817010A
報告書区分
総括
研究課題名
発達障害診療専門拠点機関の機能の整備と安定的な運営ガイドラインの作成のための研究
課題番号
H30-身体・知的-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 進昌(公益財団法人 神経研究所 研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 太田 晴久(昭和大学 発達障害医療研究所)
  • 齊藤 卓弥(北海道大学 医学研究院児童思春期精神医学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
8,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 発達障害が社会に認知されるとともに、行政への相談や医療機関への受診者が急増している一方、対応できる人材の不足と包括的な医療システムの未整備が喫緊の課題となっている。過去の厚労科研で提言された「各地域の実状に合わせた医療システム」を実装するために、本研究では児童・思春期の拠点機関を北海道大学、成人期の拠点機関を神経研究所附属晴和病院、拠点統括を昭和大学発達障害医療研究所としてモデルを構築し、全国化を見据えた運営ガイドラインの作成を目的とする。
研究方法
(1)札幌市全域をカバーする児童精神科医療の連携とレベルアップを目的とした先駆的な試みであり、行政のバックアップのもとで相談・紹介と逆紹介を円滑に行う「コンシェルジュ事業」がスタートしている。全国の実状をアンケート調査した上で、児童思春期精神科医療の札幌での拠点を実際に運用し、多職種・機関が連携した運営ガイドラインを作成する。
(2)昭和大学発達障害医療研究所と晴和病院では、全国に先駆けて専門外来とともに自閉スペクトラム症(ASD)に特化したデイケアを開設した。10年余で計6,000名を越える患者を受け入れており、標準ショートケアプログラムはすでに出版されている。このような当事者の生活支援・社会参加を目指す事業は他に例を見ない。本研究ではこの実績をもとに、1)拠点機関に必要な機能について調査検討を行う。2)東京都における拠点モデルを晴和病院に構築する。3)支援研究会の学会化と研修会や出張講義を通して、発達障害診療の可能な医療機関を増やし、モデルの全国化を図る。
結果と考察
発達障害診療専門拠点機関に必要な機能について、全国の医療機関(697機関)および行政(精神保健福祉センター:69機関、発達障害者支援センター:94機関)に対してアンケート調査を行なった。回答数は医療機関では207機関、行政機関では87機関であった。アンケート調査で明らかとなった事柄を踏まえ、ガイドラインを作成していく必要がある。医療機関に対するアンケート調査では64%が関東地方からの回答であり偏りがみられた。拠点機関に望まれる機能は地域の特性により異なる可能性もあり、より全国的にアンケートを配布・回収する必要がある。また、よりニーズに合った支援を提供するため、プログラムの拡充(就労準備プログラム、一人暮らし調理プログラム、家族プログラム等:すでに実施中)を行う必要がある。これらの情報を基にしてガイドライン作成のための検討会議を令和元年8月に実施していく予定である。
結論
本研究では、晴和病院を東京都拠点病院モデルとして、発達障害者の包括的支援システムの構築を目指す。現在展開している大学生グループ、就労ADHDグループ、就活支援プログラムを拡充して発達障害者の自立支援を目指す。民間の就労移行支援施設ともネットワークを作り、連携を具体化していく。家族に対しても「家族のつどい」を開催して家族同士が助け合える家族会組織を目指す。今後はグループホームのより詳細な実態調査のため、回収したアンケートを解析し、追加のヒアリング調査を行い(ヒアリング調査目標数:5例)、発達障害者に求められる生活支援手法の内容検討を行い、包括的支援システムの中でのグループホームの役割を明らかにしていく。
 発達障害診療拠点医療機関の整備にあたっては地域の実状を考慮する必要がある。その意味で児童と成人の領域でそれぞれ実績があり、かつ背景の異なる札幌市(地方中核都市)と東京都(首都圏)が実際の運営ガイドラインを作成する意味は大きい。なお、児童思春期から成人期への診療移行・引継ぎも大きな課題であり、昭和大学発達障害医療研究所では対象患者に中高校生を含めることも視野に入れている。当事者の生活支援拠点としてのグループホームの利用、全国化に向けて診療報酬改訂への提言も必要と思われる。同時に、海外での知見も参考にして、運用の成果を海外に発信していく。

公開日・更新日

公開日
2019-08-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-08-14
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201817010Z