障害者支援施設等におけるロボット技術を活用した支援機器の効果実証及び開発課題の明確化に関する研究

文献情報

文献番号
201817009A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者支援施設等におけるロボット技術を活用した支援機器の効果実証及び開発課題の明確化に関する研究
課題番号
H29-身体・知的-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
東 祐二(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 障害工学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 小野 栄一(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 )
  • 森 浩一(国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
2,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 平成29年度研究として、障害者支援施設(以下支援施設)における介護等の支援の実態についてタイムスタディを行い、24時間内の自立・介護支援行為をリスト化した上で、既存のロボット技術等の応用により解決が可能と考えられる課題を抽出した。
 平成30年度研究として、前年度分類した課題のうち、既存の技術や機器等を組み合わせることにより解決可能な課題に対応する、ロボット・センサー機器等を支援施設に導入し有効性について実証評価を行うこととした。
研究方法
 導入した機器は、肢体不自由者に対して、夜間のリスク(転倒・転落)を検知し通報、遠隔場所から確認可能な見守り支援システム眠りSCAN(NN-1310パラマウントベッド社製)及び、高次脳機能障害者と視覚障害者に対して、音声・映像等による応答機能を有する情報支援型ロボットPARLO(PRT-F050JW-BZ 富士ソフト社製)とした。
 対象は、国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局に所属する支援施設利用者13名及び支援に関わる介護(訓練)支援スタッフ34名とした。
 ロボット等の支援機器の、導入場面は、肢体不自由者で夜間(夜勤)のベッド上での異変等の見守りとし、高次脳機能障害では、デイ訓練プログラム(メモ練習、訓練説明、調理訓練)とし、視覚障害ではIT訓練プログラム(音声読み上げによる、タイピング練習)とした。
効果の測定は、導入した機器の日々の稼動状況を、稼動日誌に以下の事項を継続的に記録してもらうこととした。記録事項:稼動状況、安全性、堅牢性、誤作動・誤表示、スタッフの使用感、業務上の有用性、利用者の満足感。
 また、機器の利用満足度についてQUEST(対象:当事者・支援スタッフ)及びアンケート調査(対象:支援スタッフ)を機器導入前後に行った。
 分析は、得られたデータから、障害領域別に1.稼働日誌の分析として、稼働状況の推移 2.QUESTの分析として、機器の使用満足度の評価 3.アンケート結果分析としてロボット等を利用した介護等に関する意識の変化について評価した。
結果と考察
 見守り支援機器の導入では、無意識・無拘束による自動計測機器であることから、被験者及びスタッフの負担は少ないことが解った。
 一方で誤作動が頻発する場合にはスタッフの対応頻度等の負担が増加する傾向にあった。
 今回の実証評価においては、稼働日誌の分析で、支援スタッフは業務の役に立つとの意見も見られ、QUESTによる評価においても、「満足」度が向上しており有用性があることが示唆された。
他方、利用者にとっては、ユーザビリティ評価の満足感は高いものの、不満の評価も一定程度あったこのことから、個人の意向にあわせた機器の運用の必要性が示唆された。
 情報支援型ロボットの導入では、内蔵されているプログラム(高齢者用)の制御と利用者の社会生活訓練等における効果的な利用方法をカスタマイズする必要があり、スタッフの負担が生じることが解った。
 今回の実証評価において、高次脳機能障害領域では、稼働日誌の分析で、スタッフが業務上の有用性を感じるといった評価はない一方で、利用者は満足する傾向にあった。QUESTによる評価では、スタッフは「やや満足している」の評価であり、利用者は「満足している」の評価であった。これをみると、利用場面に併せたカスタマイズが上手くできなかったことが影響しており、システムにも簡便性が求められていることが示唆された。視覚障害領域では、稼働日誌の分析で業務上の有用性を評価する意見もあり、利用者の満足度も得られていた。QUESTによる評価においても、スタッフ、利用者ともに「やや満足している」との評価であった。これは、利用場面に併せたカスタマイズが上手くできたことが評価に結びついたものと考えられた。
結論
 肢体不自由者の領域に導入した見守り支援機器では、支援スタッフにおいて業務の役に立つとの意見がみられ、満足度も向上したことから、業務上の有用性があることが示唆された。
 高次脳機能障害領域に導入した情報支援型ロボットでは、支援スタッフにおいて、業務上の有用性を感じるといった評価はない一方で、利用者は満足する傾向にあった。
 視覚障害領域に導入した同型の情報支援型ロボットでは、支援スタッフにおいて、業務上の有用性を評価する意見があり、利用者の満足感も得られていた。以上のことから、情報支援型ロボットの有用性は、内蔵されているプログラムの制御と利用者の状態にあわせたカスタマイズが重要であり、システムにおいても簡便な操作性が求められていることが解った。

公開日・更新日

公開日
2019-08-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-08-14
更新日
2019-09-18

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201817009B
報告書区分
総合
研究課題名
障害者支援施設等におけるロボット技術を活用した支援機器の効果実証及び開発課題の明確化に関する研究
課題番号
H29-身体・知的-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
東 祐二(国立障害者リハビリテーションセンター研究所 障害工学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 小野 栄一(国立障害者リハビリテーションセンター研究所)
  • 森 浩一(国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 平成29年度研究として、障害者支援施設(以下支援施設)における介護等の支援の実態についてタイムスタディを行い、24時間内の自立・介護支援行為をリスト化した上で、既存のロボット技術等の応用により解決が可能と考えられる課題を抽出することとした。平成30年度研究として、既存の技術や機器等を組み合わせることにより解決可能な課題に対応する、ロボット・センサー機器等を支援施設に導入し、有効性について実証評価を行うこととした。
研究方法
 タイムスタディは、測定単位を1分間とし、時間内の支援スタッフの介護行為等を記録させた。
対象は、国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局(以下センター)に所属する支援施設利用者18名(高次脳機能障害者、視覚障害者、重度肢体不自由者)及び支援に関わる介護(訓練)支援スタッフ63名とした。 
分 析は、障害領域別に、実施頻度が多く、負担の大きい介護に分類し、ロボット・センサー技術等の応用により解決が可能と考えられる生活支援行為を、予め設けた基準(ニーズ、技術的優位性、社会実装までの期間)に基づいて選出した。
 実証評価は、前年度抽出した課題の解決に必要な機器として、肢体不自由者に対して、夜間のリスク(転倒・転落)を検知し、通報可能な見守り支援システム、眠りSCAN(NN-1310パラマウントベッド社製)及び、高次脳機能障害者と視覚障害者に対して、音声・映像等による応答が可能な、情報支援型ロボットPARLO(PRT-F050JW-BZ 富士ソフト社製)を導入し行った。
対象は、センターに所属する支援施設利用者(高次脳機能障害者、視覚障害者、重度肢体不自由者)13名及び支援に関わる介護(訓練)支援スタッフ34名とした。
 導入機器の支援場面は、肢体不自由者で夜間(夜勤)のベッド上での異変等の見守りとし、高次脳機能障害では、デイ訓練プログラム(メモ練習、訓練説明、調理訓練)、視覚障害ではIT訓練プログラム(音声読み上げによる、タイピング練習)とした。
効果の測定は、稼動日誌に、機器の日々の稼動状況を継続的に記録してもらった。併せて、機器の利用満足度について、福祉用具満足度評価QUEST第2版(以下、QUEST)及びアンケート調査(対象:支援スタッフのみ)を機器導入前後に行った。
結果と考察
 平成29年度成果として、高次脳機能障害や視覚障害の支援では、情報支援の頻度が高く負担もあることから、社会生活訓練場面等で、当日のスケジュールやメニュー、インターネット情報検索等、口頭アクセスによる照会に対応可能なロボットの導入が有効であると考えられた。
 一方、頚髄損傷者等の重度肢体不自由者の支援では、夜間の見守り支援の頻度が高く負担もあることから、夜間のリスク(転倒・転落)を検知し、通報可能なロボットの導入が有効と考えられた。
 平成30年度成果として、実証評価で導入した機器のうち、見守り支援機器では、稼働日誌の分析で、スタッフは業務の役に立つとの意見もあり、QUESTによる評価では、満足度が向上しており有用性があることが示唆された。他方、利用者にとっては、ユーザビリティ評価の満足感は高いものの、不満の評価も一定程度あったことから、個人の意向にあわせた機器の運用の必要性が示唆された。
 情報支援型ロボットでは、高次脳機能障害領域における、稼働日誌の分析で、スタッフが業務上の有用性を感じるという評価はない一方で、利用者は満足する傾向にあった。QUESTによる評価では、スタッフは「やや満足している」、利用者は「満足している」の評価であった。これは、利用場面に併せたカスタマイズが上手くできなかったことが影響しており、システムも簡便性が求められることが示唆された。視覚障害領域では、稼働日誌の分析で、業務上の有用性を評価する意見もあり、利用者の満足度も得られていた。QUESTによる評価では、スタッフ、利用者ともに「やや満足している」との評価であった。これは、利用場面に併せたカスタマイズが上手くできたことが評価につながったと考えられた。
結論
 障害者支援施設における介護等の支援の実態についてタイムスタディを行い、ロボット技術等の応用により解決が可能と考えられる課題を抽出し、ロボット・センサー等機器を一定期間支援施設に導入し実証評価を実施した。
 肢体不自由者の領域に導入した見守り支援機器は、業務上の有用性があることが示唆された。
 一方、情報支援型ロボットは、内蔵されているプログラムの制御と利用者の状態にあわせたカスタマイズが重要であり、システムも簡便な操作性が求められることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2019-08-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-08-14
更新日
2019-09-18

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201817009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
平成29年度研究として、障害者支援施設における高次脳機能障害や視覚障害、重度肢体不自由者の自立・介護支援を対象としたタイムスタディを行い、ロボット技術等の応用により解決が可能と考えられる課題を抽出した。これらの成果の活用は、今後の介護負担軽減及び自立支援の観点について検討する上で社会的・行政的有用性があると考えられる。
臨床的観点からの成果
平成30年度は、課題解決に有効と考えられるロボット・センサー等の機器を導入し、実証評価を行った。その結果、肢体不自由者領域での見守り支援機器や視覚障害領域での」情報支援型ロボットで、支援スタッフにおいて業務の役に立つとの意見があり、有用性が示唆された。これらの成果の活用は、障害福祉領域における生産性の向上を検討する上で、臨床的、社会的有用性があると考えられる。
ガイドライン等の開発
該当なし。
その他行政的観点からの成果
厚生労働省「令和4年度障害者総合福祉推進事業」(障害福祉サービス事業所等における ICT/ロボット等導入による生産性向上効果検証)において、検討委員会委員として、当該実証研究で得た知見やノウハウ等に基づいて意見等を行った。
その他のインパクト
該当なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2019-08-14
更新日
2024-03-28

収支報告書

文献番号
201817009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,600,000円
(2)補助金確定額
2,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 689,892円
人件費・謝金 500,720円
旅費 12,948円
その他 1,396,440円
間接経費 0円
合計 2,600,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2020-06-09
更新日
-