文献情報
文献番号
201817004A
報告書区分
総括
研究課題名
医療的ケア児に関する実態調査と医療・福祉・保健・教育等の連携促進に関する研究
課題番号
H28-身体・知的-一般-006
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
田村 正徳(埼玉医科大学 総合医療センター小児科)
研究分担者(所属機関)
- 岩崎 裕治(東京都立東部療育センター)
- 前田 浩利(医療法人財団はるたか会)
- 谷口 由紀子(淑徳大学 看護栄養学部看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
児童福祉法改正において、地方自治体は、医療的ケア児の支援のために医療、福祉、保健、教育等の関係機関が連携するための調整を求められるようになったがその方法は不明確である。そのため本研究では、①地域における医療的ケア児と社会資源の把握、②地域における医療・福祉・保健・教育等の連携促進、③医療的ケア児コーディネータやその支援体制を強化する人材育成、④重症心身障害児施設の医療的ケア児の短期入所推進を目的とする。
研究方法
I. 医療的ケア児の実数と社会資源の把握
全国の在宅の医療的ケア児数及び人工呼吸器児数を、診療報酬の算定件数によって算出した。更にレセプト情報第三者提供制度によるデータを解析し、地域別の医療的ケア児数を算出した。また、医療的ケア児の合理的な算出方法を検討した。また5年毎に施行している全国調査①NICU長期入院児とNICUからの小児在宅医療移行数、地域中核病院の②NICU長期入院児の在宅医療への移行の受け入れ、③呼吸管理を必要とする在宅医療児の緊急時受け入れを実施した。
II. 都道府県における医療・福祉・保健・教育等の連携を進めるための手引書作成
昨年作成した手引書の妥当性を検証するために、市町村版手引書を東京都と千葉県の全市区町村へ郵送してアンケート調査した。同時に、過去2年間に試験的実践を行った千葉県松戸市並びに東京都世田谷区の行政担当者へ、協議の場の設置と手引書についてインタビュー調査を実施した。都道府県版手引書は、47都道府県へ郵送し、アンケート調査した。
III. スーパーバイザー等の育成研修
医療的ケア児のコーディネータに助言するアドバイザー及び地域診断して社会資源を創出するコンサルタントを育成する研修プログラムを完成させ、A県とB県においてパイロット的に研修会を実施して評価した。
IV. 重症心身障害児施設等における高度医療的ケア児の短期入所の実態と課題に関する研究
一昨年に引き続いて全国の小児科学会指導医のいる477施設と全国の重症心身障害施設(公法人立重症児施設134施設、国立病院機構重症心身障害病棟74施設)、肢体不自由児施設29施設を対象に、医療的ケア児を含む短期入所・入院受けいれ実態と課題について調査を行った
全国の在宅の医療的ケア児数及び人工呼吸器児数を、診療報酬の算定件数によって算出した。更にレセプト情報第三者提供制度によるデータを解析し、地域別の医療的ケア児数を算出した。また、医療的ケア児の合理的な算出方法を検討した。また5年毎に施行している全国調査①NICU長期入院児とNICUからの小児在宅医療移行数、地域中核病院の②NICU長期入院児の在宅医療への移行の受け入れ、③呼吸管理を必要とする在宅医療児の緊急時受け入れを実施した。
II. 都道府県における医療・福祉・保健・教育等の連携を進めるための手引書作成
昨年作成した手引書の妥当性を検証するために、市町村版手引書を東京都と千葉県の全市区町村へ郵送してアンケート調査した。同時に、過去2年間に試験的実践を行った千葉県松戸市並びに東京都世田谷区の行政担当者へ、協議の場の設置と手引書についてインタビュー調査を実施した。都道府県版手引書は、47都道府県へ郵送し、アンケート調査した。
III. スーパーバイザー等の育成研修
医療的ケア児のコーディネータに助言するアドバイザー及び地域診断して社会資源を創出するコンサルタントを育成する研修プログラムを完成させ、A県とB県においてパイロット的に研修会を実施して評価した。
IV. 重症心身障害児施設等における高度医療的ケア児の短期入所の実態と課題に関する研究
一昨年に引き続いて全国の小児科学会指導医のいる477施設と全国の重症心身障害施設(公法人立重症児施設134施設、国立病院機構重症心身障害病棟74施設)、肢体不自由児施設29施設を対象に、医療的ケア児を含む短期入所・入院受けいれ実態と課題について調査を行った
結果と考察
I.診療報酬の算定件数によって医療的ケア児数を推計する方法はおおむね妥当であり、経時的、網羅的な統計データとして貴重であるとの合意は得られた。ただし、個々の患者に対して医療的ケア児かどうかを判定するためには、過去の歴史的経緯を踏まえ、慎重かつ柔軟に対応すべきとの意見も出された。この定義による医療的ケア児は右肩上がりに増加を続け、特に人工呼吸器等の高度医療を必要とする児が急増状態にあることが判明した。医療的ケア児の都道府県分布には大きなバラツキが認められた。①NICUの長期入院児の増加傾向は一段落したが、NICUからの小児在宅医療移行児の増加傾向は継続していた。②NICUからの小児在宅医療移行支援を行う日本小児科学会研修施設は回答施設の25%で前回調査の20%に比べて増加していた。在宅医療支援の経験も前回の調査に比べて増加していた。③呼吸管理を必要とする在宅医療児が急変した時に受入が可能と回答した施設は115箇所(回答施設の34%)で2013年の調査時の38%より減っていた。行政等による更なる経済的、人的支援が必要であると考えられた。
II.「医療・福祉・保健・教育等の連携を進めるための手引書」は、全国都道府県と東京都・千葉県の市町村を対象としたアンケート調査では、概ね分かりやすいとの評価が得られた。しかし医療の専門家でない行政担当官が実践するには、医療用語や医療機器の名称などを一般用語に置き換える必要がある。
III.谷口等が開発した、相談支援員のスーパーバイザー育成の研修プログラムに関してはコンサルタント育成コースもアドバイザー研育成コースも受講要件に合致した人材が受講すれば、概ね目標に到達することが実証され、それぞれの役割を果たすための基礎的知識の付与ができる研修プログラムとなったと考えられる。
IV.短期入院・入所は療育施設での実施は、一昨年とほぼ同様の実施率であったが地域小児科施設での受け入れは減少傾向であった。重症心身障害以外の短期入所・入院の利用実人数は、464名であり、全体の4.5%であった。受け入れ困難な理由としては動くことのリスクなどであった。
II.「医療・福祉・保健・教育等の連携を進めるための手引書」は、全国都道府県と東京都・千葉県の市町村を対象としたアンケート調査では、概ね分かりやすいとの評価が得られた。しかし医療の専門家でない行政担当官が実践するには、医療用語や医療機器の名称などを一般用語に置き換える必要がある。
III.谷口等が開発した、相談支援員のスーパーバイザー育成の研修プログラムに関してはコンサルタント育成コースもアドバイザー研育成コースも受講要件に合致した人材が受講すれば、概ね目標に到達することが実証され、それぞれの役割を果たすための基礎的知識の付与ができる研修プログラムとなったと考えられる。
IV.短期入院・入所は療育施設での実施は、一昨年とほぼ同様の実施率であったが地域小児科施設での受け入れは減少傾向であった。重症心身障害以外の短期入所・入院の利用実人数は、464名であり、全体の4.5%であった。受け入れ困難な理由としては動くことのリスクなどであった。
結論
医療的ケア児は経時的に右肩上がりの増加傾向を示しているが医療・福祉機関による支援体制は不十分であり、当班で開発した「医療・福祉・保健・教育等の連携を進めるための手引書」やコーディネーターの上位のキャリアとしてのコンサルタント、アドバイザー育成プログラムの行政による積極的な活用が望まれる。
公開日・更新日
公開日
2020-06-09
更新日
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