一億総活躍社会の実現に向けた認知症の予防、リハビリテーションの効果的手法を確立するための研究

文献情報

文献番号
201816004A
報告書区分
総括
研究課題名
一億総活躍社会の実現に向けた認知症の予防、リハビリテーションの効果的手法を確立するための研究
課題番号
H29-認知症-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
岡村 仁(広島大学 大学院医系科学研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,426,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 認知症施策総合戦略の一つの柱として、「認知症の人の介護者への支援」が掲げられている。申請者らが行った厚生労働科学研究費補助金による「BPSDにより精神科病院に入院する患者を対象とした全国規模での入院実態調査」においても、患者の早期退院を阻害する要因のひとつとして入院前の介護者の介護負担が抽出されるなど、認知症介護者の介護負担の軽減は喫緊の課題といえる。しかし、介護負担は中等度あるいは重度の認知症の介護者のみにみられるわけではなく、軽度認知障害(MCI)や初期認知症の人であっても大きいことが報告されている。したがって、認知症やその進行を予防するとともに、残存する生活機能を維持することができれば、住み慣れた地域での生活や就労を継続可能とし、結果的に介護者負担の軽減に資すると期待できる。
 先行研究によれば、MCIや在宅で生活する認知症の人の介護者の介護負担に関連する要因として、認知機能やADLの低下、認知症初期から高頻度でみられる周辺症状のひとつであるアパシーが報告されている。このため、これらの改善を目指したリハビリテーションアプローチが効果的と考えられるが、これまでMCIや初期認知症の人を対象に、認知症の予防あるいは進行予防を目指し、認知機能、ADL、アパシーのすべての側面に焦点を当てたアプローチはない。また、コクランシステマティックレビューによると、認知症患者に対して、運動、認知トレーニングのいずれも単独では、認知機能障害や周辺症状の改善あるいはADL向上に対する効果は明確となっていない。
 そこで本研究は、MCI及び在宅で生活する認知症の人を対象とし、認知機能障害や周辺症状の進行を予防し、かつADLを維持・向上させることで、結果的に介護負担を軽減させる効果的なリハビリテーション手法を確立することを目的とする。
研究方法
 平成29年度~30年度途中(12か月)で、申請者らがこれまで取り組んできた、認知症患者を対象とした運動と認知トレーニングを組み合わせた認知機能障害改善システムを応用・発展させ、MCIや在宅で生活する認知症の人が、自宅や施設など地域で幅広く利用できる新たな認知機能障害・周辺症状改善システムを作成した。それに基づき、平成30年度は、作成した新たなリハビリテーション手法の効果検証のため、在宅で生活しており、通所施設を利用しているMCIおよび認知症の人を対象に3か月間の介入を行い、認知機能、アパシー、ADL、さらには介護者の介護負担を効果指標としたランダム化比較試験を計画し、開始した。併せて、本手法が脳活動に与える影響を評価するために、携帯型近赤外線組織酸素モニタ装置を用いて、介入実施中の脳前頭部の酸素化/脱酸素化ヘモグロビンの濃度をリアルタイムで計測した。
結果と考察
 平成30年度は、作成した新たなリハビリテーション手法の効果検証に着手した。研究の進捗にあたっては、以下のステップを踏んだ。
①臨床研究計画書の原案を作成し、広島大学総合医療研究推進センターにおいて内容のチェックを受け、修正を繰り返した後、計画書を完成させた。
②研究計画書等を広島大学臨床研究倫理審査委員会に提出し審査を受け、承認された。併せて、UMINへの臨床試験登録を行った(UMIN試験ID:UMIN000033694)。
③当初予定していた5施設の研究協力施設に対して説明会を実施した。
④各協力施設において、在宅で介護者と生活している通所中のMCI及び認知症の人のリクルートを行い、同意の得られた対象者を介入群か対照群に割り付け、それぞれの群に対し介入を開始した。
 現在まで、介入群50名と対照群50名への割り付けが終了し、すべての施設において介入が開始となっている。ただし、介入開始時期が施設によって異なっているため、すべての施設で介入終了3か月後の評価が終了するのは、平成31年春頃の予定である。
 また、今回の研究においては、本手法が脳活動に与える影響を評価するために、同意の得られた対象者に対して、携帯型近赤外線組織酸素モニタ装置を用いて、介入実施中の脳前頭部(前頭前野)の酸素化/脱酸素化ヘモグロビン濃度(oxy-Hb/deoxy-Hb)をリアルタイムで計測することを計画した。現在までに介入群6名、対照群7名からデータを収集でき、その結果、介入群は対照群に比べ課題後半部において左前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度が有意に増加していることが示された。
結論
 現在はまだデータ収集中であるが、ほぼ当初の研究計画での予定に沿って進行しており、令和元年度はすべての施設での最終評価を終え結果の解析を行い、その解析結果に基づきシステム等の改良を行い、地域や自宅で簡便に実施できるリハビリテーション手法を完成させる予定である。

公開日・更新日

公開日
2020-02-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-02-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201816004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,453,000円
(2)補助金確定額
4,453,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,586,668円
人件費・謝金 628,257円
旅費 0円
その他 211,075円
間接経費 1,027,000円
合計 4,453,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-02-27
更新日
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