文献情報
文献番号
201816002A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症発生リスクの減少および介護者等の負担軽減を目指したAge-Friendly Cities の創生に関する研究
課題番号
H28-認知症-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
尾島 俊之(浜松医科大学 医学部健康社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
- 相田 潤(東北大学大学院歯学研究科国際歯科保健学分野)
- 横山 由香里(日本福祉大学社会福祉学部社会福祉学科)
- 近藤 克則(国立長寿医療研究センター・老年学・社会科学研究センター・老年学評価研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,943,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
3年間の研究計画期間の最終年度の研究を実施した。認知症高齢者等にやさしい地域の評価指標を開発し、手引きを作成して試用と評価を行い、認知症高齢者等にやさしいまちづくりに貢献することが研
研究方法
今年度の重点的な実施内容として、これまでの検討結果を集大成し、「認知症の人・高齢者等にやさしい地域づくりの手引き ~指標の利活用とともに~」作成し、改訂を行った。一旦作成した手引き案について、研究班内でブラッシュアップするとともに、協力自治体の担当者等に見ていただき、有用性や修正すべき点についてのヒアリングを行い、改訂を行った。また、取り組みの試行と評価として、認知症当事者による認知症サポーター養成講座が地域づくりに果たす役割と、認知症に関する講演会・教室等への参加等と地域指標との関連の検討を行った。また、昨年度までに蓄積されたデータの分析とその発信として、認知症の人・高齢者等にやさしい地域指標の地域間差の検討、自治体による認知症発生の地域差の要因とその改善可能性についての分析、地域診断指標の妥当性の検証と見える化システムの改良を行った。
結果と考察
(1) 手引きの作成と改訂
完成した手引きは5章構成とした。冒頭に、全体の概要がわかるようにPDCAサイクルに沿った手引きの使い方早見表を入れた。
自治体へのヒアリングにおいては、このような手引きは有用であるという意見が大勢を占めた。行政で使用する際に、「高齢者等にやさしいまちづくり」が強調されている方が担当部署に広がりがでて、施策の展開に活用されやすいなど、修正すべき点についてのコメントをいただき、見直しを行った。
(2) 認知症当事者による認知症サポーター養成講座が地域づくりに果たす役割
公立中学校及び福祉系大学における認知症当事者による認知症サポーター養成講座の結果、「認知症の人も地域活動に役割をもって参加した方が良いと思いますか。」「家族が認知症になったら、協力を得るために近所の人や知人などにも知っておいてほしいと思いますか。」という項目で、認知症への理解が有意に深まっていた。地域を変えていく役割を認知症当事者が担うことの重要性が確認できた。
(3) 認知症に関する講演会・教室等への参加や健康交流の家と地域指標との関連
認知症に関する講演会・教室等への1年以内の参加割合は16.3%であった。講演会や教室への参加と認知症の人にやさしい地域指標との関連を検証したところ、参加群は非参加群に比べ、共生、受援力が高い傾向がみられた。認知症に関する講演会や教室は、認知症の人にやさしい地域づくりに寄与する可能性が示唆された。
(4) 認知症の人・高齢者等にやさしい地域指標の地域間差
地域間差の大きい指標は、目耳の障害があっても利用できるバス等、駅やバス停、地域のサービスを知っているなどであり、地域間差の小さい指標は、幸福度、行動・心理症状の理解、相談は恥ずかしくないなどであった。
(5) 自治体による認知症発生の地域差の要因とその改善可能性についての分析
16自治体(合併前の自治体を含む)の56,521人を6年間追跡した結果、5874人が認知症を発生した。1000人年あたりの発生率は19.8であり、最も少ない自治体で15.1、最も多い自治体で25.5と大きな差が見られた。生存分析の結果、健康や行動、社会的交流の改善で自治体間の認知症発生の地域差が減少する部分があるが、そのパターンは一様ではなく、地域による多様性が存在することが明らかとなった。
(6) 地域診断指標の妥当性の検証と見える化システムの改良
地域診断指標の妥当性の検証について、ソーシャル・キャピタル関連指標では、社会的サポート、社会参加、就労、それらの要約指標としてのSaitoのSC指標(社会参加、助け合い)など15指標が地域診断指標として妥当性が高かった。複数の論文で妥当性が検証済みなのは14の量的指標(うつ割合、閉じこもり割合、転倒者割合など)であった。
「見える化」システムの改良については、Age Friendly Cities 指標「見える化」システムのページを作成し、寄せられた改善要望を元にシステムの改良を行った。
完成した手引きは5章構成とした。冒頭に、全体の概要がわかるようにPDCAサイクルに沿った手引きの使い方早見表を入れた。
自治体へのヒアリングにおいては、このような手引きは有用であるという意見が大勢を占めた。行政で使用する際に、「高齢者等にやさしいまちづくり」が強調されている方が担当部署に広がりがでて、施策の展開に活用されやすいなど、修正すべき点についてのコメントをいただき、見直しを行った。
(2) 認知症当事者による認知症サポーター養成講座が地域づくりに果たす役割
公立中学校及び福祉系大学における認知症当事者による認知症サポーター養成講座の結果、「認知症の人も地域活動に役割をもって参加した方が良いと思いますか。」「家族が認知症になったら、協力を得るために近所の人や知人などにも知っておいてほしいと思いますか。」という項目で、認知症への理解が有意に深まっていた。地域を変えていく役割を認知症当事者が担うことの重要性が確認できた。
(3) 認知症に関する講演会・教室等への参加や健康交流の家と地域指標との関連
認知症に関する講演会・教室等への1年以内の参加割合は16.3%であった。講演会や教室への参加と認知症の人にやさしい地域指標との関連を検証したところ、参加群は非参加群に比べ、共生、受援力が高い傾向がみられた。認知症に関する講演会や教室は、認知症の人にやさしい地域づくりに寄与する可能性が示唆された。
(4) 認知症の人・高齢者等にやさしい地域指標の地域間差
地域間差の大きい指標は、目耳の障害があっても利用できるバス等、駅やバス停、地域のサービスを知っているなどであり、地域間差の小さい指標は、幸福度、行動・心理症状の理解、相談は恥ずかしくないなどであった。
(5) 自治体による認知症発生の地域差の要因とその改善可能性についての分析
16自治体(合併前の自治体を含む)の56,521人を6年間追跡した結果、5874人が認知症を発生した。1000人年あたりの発生率は19.8であり、最も少ない自治体で15.1、最も多い自治体で25.5と大きな差が見られた。生存分析の結果、健康や行動、社会的交流の改善で自治体間の認知症発生の地域差が減少する部分があるが、そのパターンは一様ではなく、地域による多様性が存在することが明らかとなった。
(6) 地域診断指標の妥当性の検証と見える化システムの改良
地域診断指標の妥当性の検証について、ソーシャル・キャピタル関連指標では、社会的サポート、社会参加、就労、それらの要約指標としてのSaitoのSC指標(社会参加、助け合い)など15指標が地域診断指標として妥当性が高かった。複数の論文で妥当性が検証済みなのは14の量的指標(うつ割合、閉じこもり割合、転倒者割合など)であった。
「見える化」システムの改良については、Age Friendly Cities 指標「見える化」システムのページを作成し、寄せられた改善要望を元にシステムの改良を行った。
結論
これまでに開発した指標や、その調査結果等を集大成し、「認知症の人・高齢者等にやさしい地域づくりの手引き ~指標の利活用とともに~」作成し、協力自治体の関係者のヒアリング等を行って改訂を行った。また、講座による普及等の取り組みの試行と評価を行い、概ね良好な結果が得られた。また、自治体による認知症発生の地域差の要因とその改善可能性についての分析を行い、地域による多様性が明らかとなった。地域診断指標の妥当性の検証と論文化を進めるとともに、調査結果の発信のための見える化システムの改良を行った。
公開日・更新日
公開日
2020-02-13
更新日
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