要介護認定データ等を活用した高齢者の状態等の経時的変化の類型化のための研究

文献情報

文献番号
201815011A
報告書区分
総括
研究課題名
要介護認定データ等を活用した高齢者の状態等の経時的変化の類型化のための研究
課題番号
H30-長寿-一般-008
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
下方 浩史(名古屋学芸大学 大学院栄養科学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 大塚 礼(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター NILS-LSA活用研究室)
  • 森本 茂人(金沢医科大学 高齢医学)
  • 楽木 宏実(国立大学法人大阪大学 老年・総合内科学)
  • 島田 裕之(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター)
  • 安藤 富士子(愛知淑徳大学 健康医療科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,251,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、加齢による生活機能や認知機能の低下等を明らかにし、その類型化を行うために、無作為抽出された地域住民を対象とした大規模な疫学調査の20年間の蓄積データと今後の追跡調査データ、介護保険データを用いて解析を行う基幹コホート研究と、その結果との比較検証やメタ解析を行う3つの検証コホート研究を実施する。さらに地域介護保険データ研究により、必要な医療・介護・福祉を特定し、高齢社会における疾患等の予防・治療、社会参加支援等に有用な知見を得る。
研究方法
①基幹コホート研究
 1997年から追跡されている「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」では、無作為抽出された地域住民を対象に、医学・心理学・運動生理学・身体組成・栄養学・遺伝子解析などの詳細な調査を毎日7人ずつ実施し、2年ごとに追跡観察をしてきた。これらのデータを用いて、認知機能、身体的フレイルなどの加齢曲線を求めた。また、加齢変化のパターンを類型化し、その割合を推定した。
②地域介護保険データ研究
地域で平成12年4月以降に要介護認定データの解析を行った。65歳以上で2回以上の要介護認定を受けている高齢者7,250人の要介護認定区分、自立度の経時変化から、要介護者の類型化を行った。
③要支援・要介護者数将来推計
 厚生労働省介護保険事業状況報告および国立社会保障・人口問題研究所による将来推計人口推計を用いて、要介護者・自立高齢者数の将来推計を行った。
④検証コホート研究
 高齢者機能健診コホート研究:地域在住高齢者5,104名を対象としたデータベースを構築した。また、アウトカムである要介護認定情報は継続して収集し、データベースの構築を行なった。これらのデータを用いて要介護となる要因を検討した。
地域行政コホート研究:地域在住自立高齢者4,022人を健康診査受診群、基本チェックリストのみ回答群、両者無関心群の3群に分類し、死亡率、認定率、認定例の要介護度、認定期間、認定割合を積算した一人当り推定介護費を比較した。
SONIC研究:高齢者長期縦断疫学(SONIC)研究において、2010年時で69歳から71歳の者をベースラインとして、2013年、2016年時調査に参加した1,227人を対象とし、認知機能を類型化した。さらに多項ロジスティック回帰分析により類型化されたグループに関連する要因を明らかにした。
結果と考察
心身の加齢変化については、握力では時代の影響ははっきりしなかったが、歩行速度と知能では、加齢による変化は平均すると10歳ほど遅くなっていた。類型化解析では、すべての項目で、40代で高い値であった人たちは、低い値であった人たちと比べて、その後の人生でも高い値でありつづけるという結果となった。すなわち、若い頃から体力や知識、思考力などを高めておけば、高齢になっても高い能力を維持できる可能性が高いと推測された。
フレイル該当項目数はどの調査時期でも年齢とともにほぼ直線的に増加していた。フレイルの進行は時代が進むにつれて全体にどの年齢でも項目数が減少しており、平均すると5~10年近くフレイルの進行が遅くなっているものと思われた。フレイル該当項目数の加齢変化の類型化では5つのグループに分けることができた。フレイルが進行しているグループは年齢が高く、女性に多かった。また、栄養摂取量が少なく、運動量も少ない傾向があった。
 要介護者を対象とした研究では、日常生活自立度の進行は「高度障害維持群」、「改善群」、「軽度障害維持群」、「急速悪化群」、「緩やかな悪化群」の5つのグループに類型化することができた。介護区分の進行の類型化は、「高度障害維持群」、「軽度障害維持群」、「急速悪化群」、「緩やかな悪化群」の4つのグループに類型化することができた。日常生活自立度、介護区分の進行の類型別に身体機能や生活機能などの違いを明らかにした。
 さらに検証コホート研究では、健康活動への参加が、死亡リスクを低下させ、介護費用の削減に役立つ可能性、歩行速度の低下が要介護の予測因子となること、高血圧、糖尿病の罹患が認知機能の急激な低下を引き起こす可能性があることなどが示された。
結論
本年度の研究により、健常高齢者数は2050年までわずかに増加するにとどまるも、65歳以上の要支援・要介護認定数は2015年の約590万人から2050年の約942万人へと約1.6倍に増加すると推定された。その一方で、地域住民では、歩行速度と知能では、加齢による変化は平均すると10歳ほど遅くなっており、日本老年医学会の提言を裏付ける結果が本研究から得られている。また、本研究での解析から、フレイル項目数の加齢変化、要介護状態区分、自立度の加齢変化の類型化にて、進行の違いを明らかにすることなどができた。

公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
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研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201815011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,825,000円
(2)補助金確定額
6,825,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,844,910円
人件費・謝金 1,523,386円
旅費 769,578円
その他 1,113,126円
間接経費 1,574,000円
合計 6,825,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
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