住民主体の介護予防システム構築に関する研究

文献情報

文献番号
201815001A
報告書区分
総括
研究課題名
住民主体の介護予防システム構築に関する研究
課題番号
H28-長寿-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 秀典(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター )
研究分担者(所属機関)
  • 山田 実(筑波大学 人間系)
  • 大倉 美佳(京都大学医学研究科)
  • 荻田 美穂子(滋賀医科大学臨床看護学講座)
  • 宮松 直美(滋賀医科大学臨床看護学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,761,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
H28-29に実施した研究では、専門職不在な地域の通いの場などで、個々の状態に応じた適切な予防・改善策の提供を目的に介護予防アルゴリズムの作成および運動・栄養のプログラム開発を推進してきた。本研究では、このアルゴリズムとプログラムを用いることによる、運動機能やフレイル状態への改善効果を検証した。
研究方法
1.対象
都内10箇所の高齢者センター内のセンター内サロン(計107サロン)を利用している高齢者を対象とした。定期的に体操を行っているようなサロンは含めず、コーラス、囲碁、手芸等の文化的な活動を週に1回程度行っているサロンに限定した。
対象者の包含基準は対象となったサロンに定期的に参加している独歩可能な65歳以上の高齢者とした。除外基準は、要支援・介護認定を受けている者、中枢神経系の疾患を有する者、重篤な骨関節疾患・呼吸循環器疾患等を有する者とした。

2.介入試験
研究デザインは、サロン単位で群分けを行うクラスター無作為化比較対照試験とした。同意が得られたサロン・対象者は、サロン単位で無作為に介入群とコントロール群に分類した。介入群は開発したアルゴリズムとプログラムを用いた介入を実施し、コントロール群は特別な介入は実施せず通常通りのサロン活動を継続してもらった。
介入群に対して、アルゴリズムとプログラムを用いた運動指導を実施するが、運動指導員が関与するのは初回のみとした。ただし、運動指導員もあくまで補助的な役割であり、基本的には対象者自身でアルゴリズムに回答し、プログラムの選択を行うよう指示した。介入群は、週に1回のサロン時に運動を実施するとともに、それ以外の日にも自宅でプログラムを実施するように指導した。介入期間は6ヶ月間とした。なお、本研究は筑波大学人間系研究倫理委員会の承認を受け実施した。 

3.アウトカム
アウトカム指標としては、フレイル関連指標および運動機能指標を用いた。フレイル関連の指標としては、基本チェックリストと日本語版CHS基準を用いた。運動機能の指標としては、快適歩行速度、最速歩行速度、片脚立位、5回立ち座りテスト、握力、それに生体電気インピーダンス法による体組成計を用いた骨格筋指数および位相角とした。
結果と考察
4. 研究結果
対象者は、介入群148名(76.8±7.2歳、女性80.4%)、コントロール群145名(76.5±6.0歳、女性84.8%)であり、両群間に基本属性に差は認められなかった。
二元配置分散分析により有意な交互作用を認めた項目は、快適歩行速度、最速歩行速度、5回立ち座りテスト、骨格筋指数、位相角であり、いずれの項目も介入群で有意な改善を示した(P<0.05)。

5.考察
本研究で開発したアルゴリズムおよびプログラムを実施した介入群では運動機能の改善が認められた。特に、下肢の運動機能の向上効果が認められており、要介護予防に重要となる筋群の強化につながったものと考えられた。一般的に、運動指導の専門家が不在な環境では、十分な指導が行いにくく、効果が得られにくいと考えられている。しかし、今回のように、専門家の視点を“見える化”し、それを教材として提供することで、運動機能の向上効果が期待できることが示唆された。
結論
本研究で用いたアルゴリズムとプログラムは運動機能向上効果が期待できるものであり、各地の通いの場で活動できるツールである。

公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201815001B
報告書区分
総合
研究課題名
住民主体の介護予防システム構築に関する研究
課題番号
H28-長寿-一般-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 秀典(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター )
研究分担者(所属機関)
  • 山田 実(筑波大学 人間系)
  • 大倉 美佳(京都大学医学研究科)
  • 荻田 美穂子(滋賀医科大学臨床看護学講座)
  • 宮松 直美(滋賀医科大学臨床看護学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、通いの場の設置を先進的に行ってきた自治体を研究フィールドにして、自主グループの参加要因や介護予防効果の検証を行い、さらにこの通いの場で利用可能な介護予防アルゴリズムとプログラムの開発・検証を行った。ここで作成するアルゴリズムはいくつかの質問で構成されるものを想定しており、開発したプログラムとともに地方自治体への配布・ホームページ等への掲載が可能であり、多くの地方自治体での利用が可能となる。
研究方法
2016年度は本研究では地域住民が主体となる介護予防の構築を目指し、地域に根ざした通いの場の設置とその介護予防効果の検証を行うため、自主グループの参加要因や介護予防効果の検証を行った。

2017年度は介護予防の運動指導・栄養指導のアルゴリズムの作成や、運動と栄養合わせて46のプログラムを作成を行った。介護予防に関与している理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、保健師、管理栄養士、健康運動指導士の計15名が対象となった。介護予防を目標とした運動および栄養の対策として、高齢者自身で取り組めるプログラムを列挙し、それぞれのプログラムの意義を整理した。その上で、協議により重複するような内容や不要と思われる内容を決定し、必要なプログラムを選定した。さらに、作成した各プログラムが、どのような機能レベル(昨年度作成したアルゴリズムを用いて機能分類)の高齢者に必要となるのかを検討した。

2018年度は前年度までに開発したアルゴリズムとプログラムを用いることによる運動機能やフレイルへの改善効果を検証した。東京都内の高齢者センターのセンター内サロンに参加している高齢者を対象とした。対象者はサロン単位で介入群とコントロール群に分類した(クラスター無作為化)。開発したアルゴリズムとトレーニングプログラムを用い、高齢者個々人に応じた介入プログラムを提供し、6ヶ月間実施した。
結果と考察
2016年度:介護予防活動を強化している自治体では、自主グループに11.2%もの高齢者が参加しており、自主グループへの参加によって要介護への進展を抑制していた。また、自主グループの立ち上げを促進することで、さらに多くの高齢者が参加できる事業に発展する可能性が示唆された。
通いの場でより効率的・効果的に介護予防を実現するために、自身の状態を適切に把握することが可能なアルゴリズムを作成し、そのアルゴリズムに対応するプログラムを開発した。これは13項目で構成される運動指導用アルゴリズム、11項目で構成される栄養指導用アルゴリズムであり、非専門職や高齢者本人であっても短時間で行える内容であり、介護予防現場で広く利用できる。

2017年度:介護予防の運動指導・栄養指導のアルゴリズムを作成した。また、運動と栄養合わせて46のプログラムを作成した。アルゴリズムによって機能レベルを判定し、そのレベルに合わせてトレーニングを選択するようになっている。運動プログラム、栄養プログラムともに、高齢者本人でも取り組める内容であり、介護予防の現場でも広く利用可能なものと考えられた。特に運動内容は、バランス、敏捷性、筋力、持久力など包括的な内容となっており、介護予防現場での活用が期待される。しかし、これらの有用性については十分に検討が行えておらず、次年度に予定している介入研究によって有用性の検討を実施する予定である。

2018年度:介入群は148名(76.8±7.2歳、女性80.4%)、コントロール群は145名(76.5±6.0歳、女性84.8%)であり、基本属性に有意差は認められなかった。6ヶ月間の介入前後で有意な交互作用を認めた項目は、歩行速度、5回立ち座りテスト、体組成計による骨格筋量および位相角であり、いずれも介入群で改善を示した(P<0.05)。つまり、開発したアルゴリズムおよびトレーニングプログラムを用いた指導は、サロンに参加している高齢者に対する運動機能向上に有用であると考えられた。
結論
本研究で開発したアルゴリズムおよびプログラムを実施した介入群では運動機能の改善が認められた。特に、下肢の運動機能の向上効果が認められており、要介護予防に重要となる筋群の強化につながったものと考えられた。一般的に、運動指導の専門家が不在な環境では、十分な指導が行いにくく、効果が得られにくいと考えられている。しかし、今回のように専門家の視点を“見える化”し、それを教材として提供することで、運動機能の向上効果が期待できることが示唆された。本研究で用いたアルゴリズムとプログラムは運動機能向上効果が期待できるものであり、各地の通いの場で活動できるツールである。

公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201815001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究で開発したアルゴリズムおよびプログラムの実施により動機能の改善が認められた。運動指導の専門家が不在な環境では、十分な指導が行いにくく、効果が得られにくいが、専門家の視点を“見える化”し、それを教材として提供することで、運動機能の向上効果が期待できることが示唆された。本研究で用いたアルゴリズムとプログラムは運動機能向上効果が期待できるものであり、各地の通いの場で活動できるツールである。
臨床的観点からの成果
本研究で開発したアルゴリズムおよびプログラムは、リハビリテーションの専門家の視点を見える化したものであり、専門家不在の中でも専門家に近い運動指導の実現を目指し作成した。介護予防現場では非専門職が運動指導に当たることも少なくなく、このようなツールを用いることで、運動機能の改善効果、特に下肢の運動機能に改善効果が認められたことは現場での活用にも期待が持てる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
なし
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
46件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
10件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Okura M, Ogita M, Yamamoto M, Nakai T, Numata T, Arai H.
The relationship of community activities with cognitive impairment and depressive mood independent of mobility disorder in Japanese older adults.
Arch Gerontol Geriatr ,  70 , 54-61  (2017)
10.1016/j.archger.2016.12.010
原著論文2
Okura M, Ogita M, Yamamoto M, Nakai T, Numata T, Arai H.
Self-assessed kyphosis and chewing disorders predict disability and mortality in community-dwelling older adults.
J Am Med Dir Assoc , 18 (6) , 550.e1-550.e6  (2017)
10.1016/j.jamda.2017.02.012
原著論文3
Okura M, Ogita M, Yamamoto M, Nakai T, Numata T, Arai H.
Community Activities Predict Disability and Mortality in Community-Dwelling Older Adults.
Geriatr Gerontol Int , 18 (7) , 1114-1124  (2018)
10.1111/ggi.13315
原著論文4
Okura M, Ogita M, Yamamoto M, Nakai T, Numata T, Arai H.
Health checkup behavior and individual health beliefs in older adults.
Geriatr Gerontol Int , 18 (2) , 338-351  (2018)
10.1111/ggi.13169
原著論文5
Okura M, Ogita M, Kami town municipal office staff,Arai H
Self-reported cognitive frailty predicts adverse health outcomes for community-dwelling older adults based on an analysis of sex and age
J Nutr Health Aging , 23 (7) , 654-664  (2019)
10.1007/s12603-019-1217-7

公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
2023-06-19

収支報告書

文献番号
201815001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,889,000円
(2)補助金確定額
4,768,000円
差引額 [(1)-(2)]
121,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 570,576円
人件費・謝金 1,423,692円
旅費 1,389,300円
その他 257,126円
間接経費 1,128,000円
合計 4,768,694円

備考

備考
千円未満切り捨てのため補助金確定額4,768,000円、支出合計額4,768,694円と694円の差異がでた。

公開日・更新日

公開日
2020-04-24
更新日
-