小児からの臓器提供に必要な体制整備に資する教育プログラムの開発

文献情報

文献番号
201813005A
報告書区分
総括
研究課題名
小児からの臓器提供に必要な体制整備に資する教育プログラムの開発
課題番号
H30-難治等(免)-一般-101
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
荒木 尚(埼玉医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 永田 繁雄(東京学芸大学 教育学研究科)
  • 瓜生原 葉子(同志社大学 商学部)
  • 多田羅 竜平(大阪市立総合医療センター 緩和医療科)
  • 西山 和孝(北九州市立八幡病院 小児科)
  • 種市 尋宙(富山大学大学院 医学薬学研究部(医学) )
  • 日沼 千尋(東京女子医科大学 看護学部)
  • 別所 晶子(埼玉医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 移植医療基盤整備研究分野)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
4,448,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 西山和孝 諏訪赤十字病院・救急科・第一救急部長(平成30年4月1日~平成30年6月30日) ↓ 北九州市立八幡病院・小児科・部長(平成30年7月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国において脳死下臓器提供が開始されてから20年を経て、年間の臓器提供件数は緩徐に増加している。2010年7月17日改正法施行以降、18歳未満の小児の臓器提供は34件(2019年4月9日時点)を数える。現在の制度に関しては、小児脳死判定基準、小児の意思表示、被虐待児の対象除外など課題が指摘されている。これら課題に対し施設判断で対応しており、一定の指針は示されていない。本研究では、18歳未満の小児脳死下臓器提供を経験し施設名を公表した医療機関より聴き取り調査を行い、課題を抽出した。特に被虐待児の除外に関わる経緯、家族ケアに関わる経緯については重点を置いて検討する。最終的に小児脳死判定の実践、小児の終末期に関する考え方と家族への支援の仕方、小児の臓器提供を実施するにあたり必要な知識を得るための包括的教育ツールの作成を目的とする。
研究方法
研究班は日本小児救急医学会の協力を得て、1名の研究協力者を加え研究班を構成した。現在34例実施された18歳未満の小児の脳死下臓器提供がどのような体制で実施されてきたか把握するため、施設名公表の家族同意を得た医療機関を訪問した。聴き取り調査の内容は逐語録を作成し、分担研究者と共有し研究する。本研究は匿名性の高い診療情報を取り扱うことから、埼玉医科大学総合医療センター倫理委員会の承認を得た。研究に際しては人を対象とした医学系研究に関する倫理指針(平成26年12月 文部科学省、厚生労働省)に則って行った。
結果と考察
令和元年5月27日現在3施設からの聞き取り調査が終了し、令和元年度内に10施設における12例の臓器提供の概要を集約する。制度の複雑さや現行の施行規則に関する疑問が指摘され、中でも被虐待児の除外に関する判断は最も困難である。「被虐待児除外マニュアル」の解釈が容易ではないことや諸機関との連携など現場判断に即する資料作成が喫緊の課題である。全ての施設から調査を終了し、施設の想いを大切に研究に活かす。逐語録完成後、具体的考察に入る。先行研究では、子どもの保護者には、臓器提供について説明を聞いてみたいという意見は半数を上回り、小児救急医学会員には被虐待児から臓器提供を進めることに肯定的な意見もある。また家族ケアについては脳死下臓器提供を決断する前の心理的葛藤が大きいこと、家族は医療者に対し共同決定を望んでおり、子どもが救命救急センターに運ばれてきた直後から継続的に家族への情緒的支援が必要である。ドナー家族に関わる医療者向けの教育プログラムの必要性が指摘された。このような背景を踏まえると、現在乳幼児の保護者である世代は全否定ではなく前向きに捕える可能性があり、医療従事者においても同様の傾向が認められる。学校教育に於ける研究については、中学校道徳が必修化、主要7社の教科書に臓器移植が含まれることを契機に「臓器移植に関する教育を実施してみようと思い(行動意図),複数名が実施し(行動),その経験を共有する」ことを行動目標とした教育支援ツールの作成を試みている。「授業を行う」までのステップを、行動変容ステージモデルを適用し、障壁と促進要因を明確にする予定である。
結論
平成30年度の研究成果から、令和元年度に対応すべき課題について各研究班が相互理解を深め、互いの研究内容を共有することが出来ている。令和元年度もこの研究を継続し、より具体性に富んだ成果の発表、セミナー受講生に対する教育ツールの応用とフィードバック、教育効果の検証を行いながら、より良い成果物の完成を果たしたい。

公開日・更新日

公開日
2019-12-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2019-12-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201813005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,612,000円
(2)補助金確定額
5,612,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,066,609円
人件費・謝金 305,478円
旅費 1,402,105円
その他 1,735,187円
間接経費 1,164,000円
合計 5,673,379円

備考

備考
研究費に不足が生じ、人件費の不足分を自己負担にて支払ったため。

公開日・更新日

公開日
2019-12-26
更新日
-