文献情報
文献番号
201813001A
報告書区分
総括
研究課題名
骨髄バンクコーディネート期間の短縮とドナープールの質向上による造血幹細胞移植の最適な機会提供に関する研究
課題番号
H28-難治等(免)-一般-101
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
福田 隆浩(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 造血幹細胞移植科)
研究分担者(所属機関)
- 岡本 真一郎(学校法人慶應義塾大学医学部内科学(血液)教室)
- 日野 雅之(大阪市立大学医学部附属病院 血液内科・造血細胞移植科)
- 高梨 美乃子(日本赤十字社 血液事業本部)
- 金森 平和(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター 血液内科、企画情報部、輸血医療科)
- 熱田 由子(一般社団法人日本造血細胞移植データセンター)
- 吉内 一浩(東京大学医学部附属病院 心療内科)
- 田渕 健(がん・感染症センター都立駒込病院 小児科)
- 黒澤 彩子(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 造血幹細胞移植科)
- 山崎 裕介(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 造血幹細胞移植科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 移植医療基盤整備研究分野)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
5,355,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
骨髄バンクのコーディネート期間を短縮し、安全性が確立されている非血縁骨髄移植の機会提供を増やすために、コーディネートが順調に進みやすい有効ドナーを確保することによるドナープールの質向上と、コーディネートプロセスの効率化を目指した具体的な施策に取り組む。
研究方法
【1】患者側・ドナー側からみた骨髄バンクコーディネートの実態把握調査
2004年から2013年までに骨髄バンクドナーコーディネートを開始した患者18,487人、ドナーのべ223,842人に関する追加解析を行う。
【2】バンクコーディネート期間短縮を目指した研究
医師・骨髄バンク(JMDP)や施設のコーディネーターを対象とした「コーディネート期間短縮を目指した対応策に関するアンケート調査」を行う。採取施設の最新の受け入れ可能情報を更新するWEBシステムの運用の効果を検討する。また海外バンクへの横断的調査を行う。
【3】ドナープールの質向上を目的とした取り組み
ソーシャルマーケティング手法を用いて若年ドナーの初期コーディネート進行率増加を目指す下記の研究を行う:①計18人のインタビュー調査、②コーディネート経験ドナーを対象とした「小規模アンケート調査」、③40歳未満ドナーの10,000人を対象とした行動経済学的な質問項目を含む「大規模アンケート調査」。
2004年から2013年までに骨髄バンクドナーコーディネートを開始した患者18,487人、ドナーのべ223,842人に関する追加解析を行う。
【2】バンクコーディネート期間短縮を目指した研究
医師・骨髄バンク(JMDP)や施設のコーディネーターを対象とした「コーディネート期間短縮を目指した対応策に関するアンケート調査」を行う。採取施設の最新の受け入れ可能情報を更新するWEBシステムの運用の効果を検討する。また海外バンクへの横断的調査を行う。
【3】ドナープールの質向上を目的とした取り組み
ソーシャルマーケティング手法を用いて若年ドナーの初期コーディネート進行率増加を目指す下記の研究を行う:①計18人のインタビュー調査、②コーディネート経験ドナーを対象とした「小規模アンケート調査」、③40歳未満ドナーの10,000人を対象とした行動経済学的な質問項目を含む「大規模アンケート調査」。
結果と考察
平成29年度は、2004年から2013年までの患者側・ドナー側からみた骨髄バンクコーディネートの実態把握調査を論文化した(臨床血液2018)。複数回コーディネートを行ったドナーを解析した結果、前回コーディネートでドナー理由による中止の場合、採取到達率は1~3%と低く、前回と同じ理由で中止となる割合が高かった。幹細胞提供に至りやすい有効ドナーを選択できる「コーディネート登録検索システム」の導入やドナープールの管理方法の再検討が必要である。ドナー年齢・性別ごとのコーディネート終了理由を比較したところ、高齢ドナーでは健康理由による終了が多く、若年ドナーでは都合による終了が多かった。
「コーディネート期間短縮を目指した対応策に関するアンケート調査(計717人から回答)」の最終解析レポートを作成し、平成30年度に回答者およびJMDPへ報告した。本調査を基にした「移植時期の最適化を目指した調整方法」が平成29年 12月から導入され、平成30年4月~5月にドナーが選定され移植を実施した患者における第一希望週に施行した割合が前年度よりも大幅に増加していた(39%→68%)。「開始ドナー増加(5人→10人)トライアル」の結果を基にして、平成30年4月より10人コーディネートが開始され、登録患者の約半数が10人でコーディネートを開始していた。採取施設の最新の受け入れ可能情報を更新するWEBシステムの運用により、採取依頼が効率化し、ドナー選定から採取までのコーディネート期間の短縮に有用であった。
若年ドナーの初期コーディネート進行率増加を目指したソーシャルマーケティング研究を行い、平成30年度はインタビュー調査と385人の郵送アンケート調査結果を論文化した(日本造血細胞移植学会雑誌2019)。本人の協力度が非常に高いこと、不安が少ないこと、職場・家族の調整や説得が難しくないこと、(雇用状態のドナーでは)年休のとりやすさが、幹細胞提供に至りやすい有意な要因であった。終了群における提供できなかった主な理由は「仕事への影響」が43%、「家族の反対・家庭生活への影響」36%であった。行動経済学的な質問項目を含む40歳未満ドナーの10,000人を対象とした「大規模アンケート調査」は3,261名より回答が得られた。
「コーディネート期間短縮を目指した対応策に関するアンケート調査(計717人から回答)」の最終解析レポートを作成し、平成30年度に回答者およびJMDPへ報告した。本調査を基にした「移植時期の最適化を目指した調整方法」が平成29年 12月から導入され、平成30年4月~5月にドナーが選定され移植を実施した患者における第一希望週に施行した割合が前年度よりも大幅に増加していた(39%→68%)。「開始ドナー増加(5人→10人)トライアル」の結果を基にして、平成30年4月より10人コーディネートが開始され、登録患者の約半数が10人でコーディネートを開始していた。採取施設の最新の受け入れ可能情報を更新するWEBシステムの運用により、採取依頼が効率化し、ドナー選定から採取までのコーディネート期間の短縮に有用であった。
若年ドナーの初期コーディネート進行率増加を目指したソーシャルマーケティング研究を行い、平成30年度はインタビュー調査と385人の郵送アンケート調査結果を論文化した(日本造血細胞移植学会雑誌2019)。本人の協力度が非常に高いこと、不安が少ないこと、職場・家族の調整や説得が難しくないこと、(雇用状態のドナーでは)年休のとりやすさが、幹細胞提供に至りやすい有意な要因であった。終了群における提供できなかった主な理由は「仕事への影響」が43%、「家族の反対・家庭生活への影響」36%であった。行動経済学的な質問項目を含む40歳未満ドナーの10,000人を対象とした「大規模アンケート調査」は3,261名より回答が得られた。
結論
骨髄バンクコーディネートの実態把握調査では、前回コーディネート結果により次回コーディネート時の採取到達率や中止理由を予測することが可能であった。「コーディネート期間短縮を目指した対応策に関するアンケート調査」や「開始ドナー増加(5人→10人)トライアル」を基にした施策をJMDPへ提言し、コーディネート期間短縮へ寄与した。平成30年度上半期の患者登録から移植日までのコーディネート期間中央値はBMTが126日、PBSCTが113日、全体で123日と、これまでで最短のコーディネート期間であった(平成28年度は144日)。
若年ドナーの初期コーディネート進行率増加を目指したソーシャルマーケティング研究は、インタビュー調査と「小規模アンケート調査」の結果、本人の協力度が非常に高いこと、不安が少ないこと、職場・家族の調整や説得が難しくないこと、(雇用状態のドナーでは)年休のとりやすさが、幹細胞提供に至りやすい有意な要因であった。今後、「大規模アンケート調査」も含めて、ドナープールの質向上へ繋げていきたい。
若年ドナーの初期コーディネート進行率増加を目指したソーシャルマーケティング研究は、インタビュー調査と「小規模アンケート調査」の結果、本人の協力度が非常に高いこと、不安が少ないこと、職場・家族の調整や説得が難しくないこと、(雇用状態のドナーでは)年休のとりやすさが、幹細胞提供に至りやすい有意な要因であった。今後、「大規模アンケート調査」も含めて、ドナープールの質向上へ繋げていきたい。
公開日・更新日
公開日
2019-09-10
更新日
2019-12-24