文献情報
文献番号
201812007A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病及び慢性腎不全による合併症足潰瘍・壊疽等の重症下肢虚血重症化と予防に関する実態調査
課題番号
H30-免疫-指定-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
大浦 武彦(医療法人 社団 廣仁会 褥瘡・創傷治癒研究所 )
研究分担者(所属機関)
- 東 信良(旭川医科大学 血管外科)
- 上村 哲司(佐賀大学医学部附属病院 形成外科)
- 中村 正人(東邦大学医療センター大橋病院 循環器内科)
- 大浦 紀彦(杏林大学医学部 形成外科)
- 市岡 滋(埼玉医科大学 形成外科)
- 菊地 勘(医療法人豊済会 下落合クリニック)
- 秋田 定伯(福岡大学医学部 形成外科・創傷再生学)
- 田中 純子(広島大学大学院医歯薬保健学研究院 疫学・疫病制御学)
- 安部 正敏(医療法人社団廣仁会 札幌皮膚科クリニック)
- 田中 康仁(奈良県立医科大学 整形外科)
- 安藤 亮一(武蔵野赤十字病院 腎臓内科)
- 谷口 雅彦(聖マリア病院 移植外科)
- 森田 隼人(シャボン玉石けん株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 免疫アレルギー疾患政策研究分野)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
1,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成27年度に透析患者の四肢切断回避を提案し、下肢末梢動脈疾患指導管理加算の保険収載を受けることが出来た。欧米では透析に先んじて施行されている腎移植について足病への影響についての研究を行い、下肢・足病重症化予防に繋げる。
研究方法
課題1. 免荷と創傷治癒の検討を行う。
課題2. バイオフィルム感染を伴う創における創傷管理、脂肪酸カリウム洗浄の有用性について検討を行う。
課題3. レーザースペックルフローグラフィ―(LSFG) による血流評価測定の臨床効果を検討する。
課題4. 腎移植患者の足・下肢病の状態、重症化状態への進行状態の実態比較を行う
課題2. バイオフィルム感染を伴う創における創傷管理、脂肪酸カリウム洗浄の有用性について検討を行う。
課題3. レーザースペックルフローグラフィ―(LSFG) による血流評価測定の臨床効果を検討する。
課題4. 腎移植患者の足・下肢病の状態、重症化状態への進行状態の実態比較を行う
結果と考察
課題1. 今回の遡及的調査では、免荷の影響の創傷治癒期間に与える影響が大きいことが示された。適切免荷群で 91日、不適切免荷群で166日と有意に免荷群の創傷治癒が早く、免荷の有用性が示された。今後、医療用サンダルやフェルトなどの免荷装具を普及啓発させさらに、TCC導入によって創傷治癒期間を短縮させ入院期間の短縮を推し進めるべきである。
課題2. オレイン酸カリウムは、MRSAを含む複数の細菌を殺菌可能であり、バイオフィルム形成MRSAの除去にも効果的であった。また、合成洗浄剤であるラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)やラウリル硫酸ナトリウム(SLS)と比較して、有意に細胞傷害性が低い結果となった。よって、オレイン酸カリウムは創傷洗浄剤として費用対効果が高い。
課題3. LSFGは、術前の高度虚血を的確に捉えることができ、かつ、バイパス術に加えて血管内治療前後の血流改善効果についても鋭敏に捉えることができることが証明された。さらに、治療中の血流変化をリアルタイムで知ることができるため、血行再建手術の効果を容易に判定でき、且つ過大治療を回避できる機器である。
課題4. 本邦ならびに世界でも初めて、糖尿病患者において腎移植は透析療法と比較し、心疾患・脳血管疾患など透析による動脈硬化による死亡リスクを減らすメリットがあることが証明された。また、医療経済的にも、国民のQOLの面においても早急な献腎移植推進、さらにはそのための臓器提供推進を行うべきである。
課題2. オレイン酸カリウムは、MRSAを含む複数の細菌を殺菌可能であり、バイオフィルム形成MRSAの除去にも効果的であった。また、合成洗浄剤であるラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)やラウリル硫酸ナトリウム(SLS)と比較して、有意に細胞傷害性が低い結果となった。よって、オレイン酸カリウムは創傷洗浄剤として費用対効果が高い。
課題3. LSFGは、術前の高度虚血を的確に捉えることができ、かつ、バイパス術に加えて血管内治療前後の血流改善効果についても鋭敏に捉えることができることが証明された。さらに、治療中の血流変化をリアルタイムで知ることができるため、血行再建手術の効果を容易に判定でき、且つ過大治療を回避できる機器である。
課題4. 本邦ならびに世界でも初めて、糖尿病患者において腎移植は透析療法と比較し、心疾患・脳血管疾患など透析による動脈硬化による死亡リスクを減らすメリットがあることが証明された。また、医療経済的にも、国民のQOLの面においても早急な献腎移植推進、さらにはそのための臓器提供推進を行うべきである。
結論
日本の医療には足病医がいなかったため100年前より足病医がいた諸外国に比べて100年遅れていると言わざるを得ない。しかしこの中で、足病の血行再建の医療技術は日本においても遅れは取っていない。しかし足病の診断や足潰瘍治療の遅れは大きい。従ってこれからは下肢の血行再建と共に下肢潰瘍の治療を積極的に行う必要があるが、日本独自の治療法として入院させず外来治療で下肢潰瘍を治す方向で進むべきだと考えている。当然義肢、義足や靴なども遅れているので、この領域にも力を注ぎたい。大浦研究班の活躍により、足病治療の普及・発展は大きく前進したといえる。
公開日・更新日
公開日
2020-03-13
更新日
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