プリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究

文献情報

文献番号
201811095A
報告書区分
総括
研究課題名
プリオン病のサーベイランスと感染予防に関する調査研究
課題番号
H30-難治等(難)-指定-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
水澤 英洋(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター  理事)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 正仁(金沢大学・医薬保健研究域医学系・教授)
  • 齊藤 延人(東京大学・医学部附属病院・教授)
  • 北本 哲之(東北大学・医学系研究科・教授)
  • 中村 好一(自治医科大学・地域医療学センター公衆衛生学部門・教授)
  • 金谷 泰宏(国立保健医療科学院・健康危機管理研究部・部長)
  • 原田 雅史(徳島大学・医歯薬学研究部・教授)
  • 佐藤 克也(長崎大学医歯薬学総合研究科・運動障害リハビリテーション分野・教授)
  • 村山 繁雄(東京都健康長寿医療センター・神経内科・バイオリソースセンター・高齢者ブレインバンク(神経病理)・部長)
  • 太組 一朗(聖マリアンナ医科大学・脳神経外科・准教授)
  • 佐々木 秀直(北海道大学大学院医学研究院・神経病態学分野神経内科学教室・特任教授)
  • 青木 正志(東北大学大学院医学系研究科・教授)
  • 小野寺 理(新潟大学・脳研究所・教授)
  • 三條 伸夫(東京医科歯科大学 大学院・脳神経病態学分野・プロジェクト教授)
  • 村井 弘之(国際医療福祉大学・医学部・主任教授)
  • 塚本 忠(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター院・脳神経内科・医療連携福祉部・医長)
  • 田中 章景(公立大学法人横浜市立大学・大学院医学研究科・教授)
  • 道勇 学(愛知医科大学・内科学講座神経内科学・教授)
  • 望月 秀樹(大阪大学・大学院医学系研究科・教授)
  • 阿部 康二(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科・脳神経内科学・教授)
  • 松下 拓也(九州大学病院・神経内科・講師)
  • 田村 智英子(FMC東京クリニック・医療情報・遺伝カウンセリング部・部長・認定遺伝カウンセラー)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
59,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
稀少かつ致死性感染症であるプリオン病の発症・感染機序の解明・克服を目指して、①全例サーベイランスによる疫学的研究を通じて、わが国における発生状況や新たな医原性プリオン病の出現を監視し、②遺伝子・髄液検査、画像読影の改良、新規の早期診断技術の開発を推進し、患者・家族への心理カウンセリング等の支援を提供し、③プリオン対応の滅菌法も含めた感染予防を研究・周知することで、プリオン病患者の外科手術を安全に施行できる指針を提示し、④手術後にプリオン病であることが判明した事例を調査して、器具等を介した二次感染対策をとるとともにリスク保有可能性者のフォローアップを行い、⑤プリオン病の臨床研究コンソーシアムJACOPと連携・協力してプリオン病の各病型の自然歴を解明し、開発中の治療薬・予防薬の全国規模の治験研究を支援する。
研究方法
全国を10ブロックに分けて地区サーベイランス委員を配置し、脳神経外科、各種検査(遺伝子、髄液、画像、電気生理、病理)の担当専門委員を加えてサーベイランス委員会を組織し、各都道府県のプリオン病担当専門医と協力して全例調査を目指す。プリオン蛋白質遺伝子検索と病理検索、画像読影、髄液14-3-3蛋白・タウ蛋白の測定、RT-QUIC法などの診断支援を提供し、診断感度・特異度の向上を図る。カウンセリング専門家を含むインシデント委員会を組織し、各インシデント事例を評価し、新規事例に対する対策とリスク保有可能性者のフォローを行う。
結果と考察
1999年4月より2019年2月までに6950人を調査し、3503人をプリオン病と認定し、本邦におけるプリオン病の実態を明らかにした。
遺伝子検査施行3109例の解析から、コドン129のMet/Met多型は発症に対して、プリオン病全体では有意な関連はないが、孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(sCJD)ではリスクとして作用し、遺伝性CJD (gCJD)とゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)では予防的に作用することを解明した。 本年度の遺伝子解析は329例であり、変異症例は74例であった。コドン180変異が最多であり、ついで232変異、200変異、102変異の順であった。本年度は、末梢神経障害を示すY162stop変異を新しく検出した。ウエスタンブロット(WB)解析を38例施行し確定診断を補佐した。
脳波解析から、PSD(周期性同期性放電)の出現頻度はCJD全体で60%、孤発性CJD(sCJD)で70%、gCJDで25%、硬膜移植後で61%。PSD非出現群に比べて出現群ではMRI異常高信号が大脳皮質と基底核の両方に確認されやすい。
4213症例を調べた髄液研究では、sCJDの髄液中のバイオマーカー(14-3-3蛋白WB,14-3-3蛋白ELISA、総タウ蛋白,RT-QUIC法)の感度は81.7%、71.1%、74.9%、70.3%、特異度は79.2%, 85.1%、77.6%、98.9%であった。RT-QUIC法での擬陽性症例が13例あった。
2017年に運用開始された自然歴調査とサーベイランス研究の一体化を本年度も推進し、委員会での討議をタブレット端末で行えるように整備した。
昨年度に続き、診断能力の向上、遺伝子検索、髄液検査の精度の向上、画像読影や滅菌消毒、感染予防対策などの面で更なる成果が得られた。新規インシデント可能性事案は5件であり、1例がインシデント事例であった。2018年末までの全17例のインシデント事例のうち10事例で10年間のフォローアップ期間が終了した。二次感染事例はまだない。
研究班で得られた最新情報は、直ちにプリオン病のサーベイランスと感染対策に関する全国担当者会議あるいはホームページなどを通じて周知され、適切な診断法、治療・介護法、感染予防対策の普及に大きく貢献している。
関係するプリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班にはサーベイランス委員長とインシデント委員長が研究分担者として参加し、合同班会議やプリオン病関連班連絡会議を共同で開催し連携を進めた。
英語論文による学術情報の発信のみならず、PRION2018(スペイン)やアジア大洋州プリオン研究会によるAPPS2018(東京)の開催の協力・参加の推進など広く情報発信と研究協力を行った。
サーベイランスと自然歴調査の一体化事業ならびに調査票のデジタル化を推進した。
結論
プリオン病サーベイランス事業の継続により、わが国におけるプリオン病の疫学的特徴を明らかにした。診断に必要な画像・脳波・遺伝子・髄液バイオマーカーの諸検査の重要性を明らかにし、インシデント事例の発生に対応し二次感染予防に努めた。自然歴調査とサーベイランス調査の一体化とともに、調査データのデジタル化を推進した。

公開日・更新日

公開日
2019-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201811095Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
76,000,000円
(2)補助金確定額
71,417,000円
差引額 [(1)-(2)]
4,583,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 22,657,531円
人件費・謝金 12,629,242円
旅費 8,301,132円
その他 10,829,834円
間接経費 17,000,000円
合計 71,417,739円

備考

備考
自己資金 739円

公開日・更新日

公開日
2020-04-21
更新日
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