難病対策の推進に寄与する実践的基盤提供にむけた研究

文献情報

文献番号
201811092A
報告書区分
総括
研究課題名
難病対策の推進に寄与する実践的基盤提供にむけた研究
課題番号
H28-難治等(難)-指定-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
秋丸 裕司(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 難治性疾患研究開発・支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 羽鳥 裕(日本医師会)
  • 王子野麻代(日本医師会総合政策研究機構)
  • 大倉 華雪(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 難治性疾患研究開発・支援センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
40,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
厚生科学審議会疾病対策部会の取り纏めで、「指定難病患者データベースの利活用のあり方」「現在の登録方法を見直し、オンラインシステムの検討」、「臨個票の登録項目や同意書の見直し」、「小児慢性特性疾病児童等データベースとの連携」が中長期的課題として提言され、難病法の施行5年後見直しの課題整理と議論が進んでいる。また、指定難病患者データベースへは既に100万件以上の臨個票データが登録されて平成31年度中にデータ提供・利活用が始まろうとしている。このような状況下、当研究班がこれまでの2年間で実施した研究課題を5年後見直しの複数の課題と直結し、かつ喫緊の研究テーマに絞り、議論を円滑に進めるための基礎的資料を取りそろえることを本研究の目的とする。
研究方法
1.難病データベース利活用に関する企業意向調査
難病・希少疾患創薬や医療機器の研究開発を行う企業団体に対して、難病データベースのデータ利活用に関する意向調査を実施して、回答結果の分析と考察を行った。
2.臨床調査個人票の登録に関する指定医の意向調査
臨個票作成の現状把握および今後のデータ登録のあり方に関する指定医の意向調査を全国3市県の医師会及び病院協会ならびに行政への協力依頼をして、得られた回答結果の分析と考察を行った。
3.オンラインによるデータ登録システムの検討
現状の難病データ登録システムが抱える様々な課題を解決できるオンラインによる難病データ登録システムのプロトタイプとそれを構築する仕様要件、構築・運用等に係る総合的なコストをIT業者と協議した。
4.第5次指定難病の臨個票作成と既存疾病の局長通知表記統一修正
第5次指定難病2疾病のOCR臨個票を新規作成すると共に、2疾病の局長通知を公用文表記に準じた適性修正を行った。331疾病の一部の局長通知に記載内容の更新と適正化がなされたため、これらの適応修正も行った。
5.小児慢性特定疾病から指定難病への移行期・成人期における課題検討
日本小児科学会小児慢性疾病委員会に協力している各専門学会および研究会から推薦された各疾患の専門家より提供された情報を基に、指定難病と小児慢性特定疾病について、各々の対象疾病の疾患概念を検証し指定難病と小児慢性特定疾病の対応状況について検討を行った。
結果と考察
データベース利活用の促進には、データ利用の申請・承認、データ配布までの時間、データの信頼性やコストを考慮する必要があり、これらは配布するデータ形式とあわせ今後さらに検討する必要性を強く感じる。
2.臨床調査個人票の登録に関する指定医の意向調査
指定医の意向調査により以下の実態が把握できたと考える。
・ 臨個票はどこで書かれているか?
・ 臨個票作成の現状 -いつ、どこで、誰が、どうやって作成しているか―
・ オンラインシステムの利用環境と利用意思のギャップ
・ 臨個票項目の見直し
・ 臨個票データ利活用に係る患者への説明と同意
・ 指定医の質の向上
3.オンラインによるデータ登録システムの検討
提案したWeb登録システムのプロトタイプを導入することで、現状のデータ登録システムの課題を以下のように大きく改善できる可能性を示唆した。
・ 難病指定医の臨個票記載の負担軽減
・ 難病指定医が記載する臨個票データの精度向上
・ 認定審査を行う自治体の審査作業の迅速化/効率化と臨個票送付の負担軽減
・ 難病データベースに登録されるデータの正確性向上
4.第5次指定難病の臨個票作成と既存疾病の局長通知の表記統一修正
本研究班が有するOCR臨個票作成と局長通知の公用文表記ルールに準じた表記統一のノウハウを活用して、OCRベンダーを介さずに迅速で、かつ低予算の作成を行い、両文書の発出を支援した。
5.小児慢性特定疾病から指定難病への移行期・成人期における課題検討
これまでの研究から小児慢性特定疾病から見た指定難病との対応率は以下のようになっており、小児期患者からみた場合、指定難病や小児慢性特定疾病の対象範囲の拡充に伴い、以前よりも多くの疾患についてトランジッションの可能性が広がったと言える。
778疾病⇒381疾病(52.8%)*指定難病330
827疾病⇒404疾病(48.6%)*指定難病331
833疾病⇒465疾病(55.8%)*指定難病333
結論
難病法の5年後見直しへの包括的な議論が行われている中、その議論をより深めるための基礎的資料を以下の項目に取りまとめた。本研究成果によって5年後見直しの検討が円滑に進むことを期待する。
①データ利活用の企業の意見
②医療現場の指定医の意見
③Web登録システムのあり方
④第5次疾病の通知文書
⑤小児慢性特定疾病から指定難病への移行の状況

公開日・更新日

公開日
2019-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201811092B
報告書区分
総合
研究課題名
難病対策の推進に寄与する実践的基盤提供にむけた研究
課題番号
H28-難治等(難)-指定-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
秋丸 裕司(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所 難治性疾患研究開発・支援センター)
研究分担者(所属機関)
  • 羽鳥 裕(日本医師会)
  • 王子野麻代(日本医師会総合政策研究機構)
  • 大倉 華雪(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所)
  • 掛江 直子(国立成育医療研究センター・臨床研究開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「難病対策の改革について(提言)」及び「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」に示された難病対策のあり方に対して実践的基盤を提供し、以下の推進に寄与する基礎的資料を提示することを目的とする。1.長期の療養による医療費の経済的な負担が大きい患者を支援する 2.治療方法の確立等に資するため、難病患者データの効率的収集を行い、治療研究を推進する
研究方法
本研究では、分担研究項目として以下を実施した。1. 指定医研修プログラム作成に関する研究 2. 難病データ登録システム開発 3. 難病患者データの活用方策の検討 4. 難病に関する国際連携方策の検討 5. 難病患者等の実態把握 6. 臨個票の登録に関する指定医意向調査 7. 難病DB利活用に関する企業意向調査 8. オンラインによるデータ登録システムの検討 9. 希少・難治性疾患の類型化等の方法の検討
結果と考察
1. 指定医研修プログラムの作成に関する研究 指定医研修用の日医総研ワーキングペーパー(第2版)以降の新たな制度動向及び地域のニーズを踏まえ、「難病対策の概説 第3版」を公表した。また、自治体および指定難病審査会委員への調査を実施した結果、疾病毎の誤記入事例、改善案、人材育成への具体的な項目が明らかになった。
2. 難病データ登録システム開発 平成28~29年度の2年間で331疾病444臨個票のOCR化と臨個票ごとの難病DB設計図を作成し、全臨個票のOCR読取システムと難病データ登録システムを完成させた。2019年7月に助成開始予定の第5次2疾病のOCR臨個票を作成した。指定難病検討委員会から局長通知の表記統一を指摘されたため、公用文表記に準じて333疾病の局長通知の適正修正を行った。
3. 難病患者データの活用方策の検討 ①認定作業の効率化のため、臨個票データを使った「一次判定機能」の診断ロジックを424臨個票で構築した。②現状の「同意文」で可能なデータ利活用の範囲及び難病法に則した同意文改訂案を提案した。③難病DBの利活用を難病対策委員会(平成29年2月)にて提案した。
4. 難病に関する国際連携方策の検討 ①IRDiRCの体制強化と2020年度への目標(200以上の治療薬創出)、米国が2106年12月に成立させた21st century cure actの情報収集を行い、両者のsynergy効果を取り纏めた。②諸外国の難病創薬に関する情報を論文化した。
5. 難病患者等の実態把握 ①統計調査及び自治体ヒアリングから、平成27年度の認定患者数は94.3万人、平成28年度は98.6万人、平成29年度は89.2万人(減少は56特定疾患の経過措置終了による影響と推測)であった。不認定者数は申請の約2~3割で、難病制度の普及・啓発が必要といえる。②自治体からは診断基準を疾患群毎に整理・統一、重症度分類の均霑化、指定医用診断マニュアルや都道府県用審査マニュアルの必要性の意見があった。
③指定難病の疾病、傷害及び死因の統計分類のため、306指定難病に付与すべきICDコードの調査を72政策研究班に対して行い適正化した。
6. 臨個票の登録に関する指定医意向調査 指定医の意向調査により以下の実態が把握できたと考える。・臨個票はどこで書かれているか?・臨個票作成の現状・オンライン環境と利用意思のギャップ・臨個票項目の見直し・データ利活用に係る患者への説明と同意・指定医の質の向上
7. 難病DB利活用に関する企業意向調査 難病データベース事業の認知度約70%、未認知度30%であることから、その啓発と利活用促進には説明用パンフレット配布、HP掲載、利用申請・承認、データ配布時間、データ信頼性やコストを考慮する必要性を強く感じた。
8. オンラインによるデータ登録システムの検討 Web登録システムのプロトタイプを導入することで、現状のデータ登録システムの課題を改善できる可能性を示唆した。・臨個票記載の負担軽減、データ精度向上・審査作業の迅速化/効率化、臨個票送付の負担軽減・登録の正確性向上
9.希少・難治性疾患の類型化等の方法の検討 3年間の研究から小児慢性特定疾病から見た指定難病との対応率は以52.8%-48.6%-55.8%と推移しており、以前よりも多くの疾患についてトランジッションの可能性が広がったと言える。移行の可能性は以前より改善してきているが、成人以降の支援がない慢性疾病を抱える患者への支援の在り方について、引き続き検討が必要である。
結論
本研究成果として、今後一層の効果的かつ効率的な難病対策の推進、新規治療法の開発とその普遍化にむけた患者データ活用方策とその体制の提示、患者の長期にわたる療養と社会生活を支える総合的な対策の確立、患者及びその家族のQOLの向上へむけた、データ収集の枠組みが提示しえた。

公開日・更新日

公開日
2019-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2019-06-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201811092C

成果

専門的・学術的観点からの成果
研究課題「オンラインによるデータ登録システムの検討」のWebデータ登録システム構築の仕様要件(ハード・ソフト・ミドルウェア)は、難病データベースの次期システムの検討を行う参考資料として利用された。
臨床的観点からの成果
1. 研究課題「難病患者等の実態把握」の指定難病に付与するICDコードの調査結果は、疾病、傷害及び死因の統計分類の基礎資料として活用された。
2. 研究課題「小児慢性特定疾病から指定難病への移行期・成人期における課題検討」の小児慢性特定疾病から見た指定難病との対応率より明らかになった臨床的なトランジッションの拡充と移行未対応の疾病が多数ある状況は、移行期の施策の検討に参照された。
ガイドライン等の開発
1.「難病対策の概説(第3版)」は都道府県での難病指定医研修用テキストとして活用されている。2. 第1~3次指定難病330疾病の424臨床調査個人票(OCR方式)は2017年4月、第4次指定難病1疾病と既存疾病の変更14疾病の20臨床調査個人票は2018年4月よりそれぞれ医療費支給申請に使用されている。第5次指定難病2疾病の臨床調査個人票は2019年7月に申請使用される予定である。3. 333疾病の局長通知(概要・診断基準・重症度分類)を公用文表記に準じて修正し、厚生労働省HPに通知掲載された。
その他行政的観点からの成果
1.「難病対策の概説(第3版)」は都道府県での難病指定医研修用テキストとして活用されている。2. 第1~3次指定難病330疾病の424臨床調査個人票(OCR方式)は2017年4月、第4次指定難病1疾病と既存疾病の変更14疾病の20臨床調査個人票は2018年4月よりそれぞれ医療費支給申請に使用されている。第5次指定難病2疾病の臨床調査個人票は2019年7月より申請に使用されている。3. 333疾病の局長通知(概要・診断基準・重症度分類)を公用文表記に準じて修正し、厚生労働省HPに通知掲載された。
その他のインパクト
平成29年度から稼働した指定難病患者データベースの構築および運用、データ登録、疾病研究者(データ依頼申出者)へのデータ提供を以下のように実施する基盤となった。
・データ登録:330万件
・データ提供:35万件

発表件数

原著論文(和文)
9件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
10件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Tada M, Masui T, Matsuyama A, et al.
The Rare Disease Bank of Japan: establishment, current status and future challenges
Human Cell  (2018)
原著論文2
Tada M, Okura H, Matsuyama A , et al.
Trends of intractable disease research using biosamples
Journal of Translational Science  (2017)
原著論文3
王子野麻代
「難病対策の概説第3版」
日医総研ワーキングペーパー  (2017)

公開日・更新日

公開日
2019-06-06
更新日
2021-06-08

収支報告書

文献番号
201811092Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
43,782,000円
(2)補助金確定額
21,539,589円
差引額 [(1)-(2)]
22,242,411円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 6,123,373円
旅費 164,800円
その他 5,148,416円
間接経費 10,103,000円
合計 21,539,589円

備考

備考
プロトタイプ構築と運用検証を当初予定していたが、難病対策課との協議で要件提案を成果物とすることになったため。

公開日・更新日

公開日
2021-02-22
更新日
-