好酸球性副鼻腔炎における治療指針作成とその普及に関する研究

文献情報

文献番号
201811088A
報告書区分
総括
研究課題名
好酸球性副鼻腔炎における治療指針作成とその普及に関する研究
課題番号
H30-難治等(難)-一般-016
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
藤枝 重治(福井大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 春名 眞一(獨協医科大学 医学部)
  • 竹野 幸夫(広島大学大学院 医歯薬保健学研究科)
  • 檜垣 貴哉(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科)
  • 吉川 衛(東邦大学・医学部)
  • 鴻  信義(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 三輪 高喜(金沢医科大学 医学部)
  • 小林 正佳(三重大学大学院・医学系研究科)
  • 近藤 健二(東京大学大学院・医学系研究科)
  • 都築 建三(兵庫医科大学 医学部)
  • 池田 勝久(順天堂大学 医学部)
  • 吉田 尚弘(自治医科大学 医学部)
  • 松根 彰志(日本医科大学 医学部)
  • 中丸 裕爾(北海道大学大学院医学研究院)
  • 太田 伸男(東北医科薬科大学 医学部)
  • 田中 康広(獨協医科大学 医学部)
  • 浦島 充佳(東京慈恵会医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難治性疾患である好酸球性副鼻腔炎は、本研究班のJESRECスコアいう診断基準を作成しえたことで、受診後早期に診断できるようになった。そのためこれまで様々な保存的治療を行い、最終的に好酸球性副鼻腔炎であると診断され、内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)を行っていた症例が、かなり早い段階で手術を行い、厳重な術後経過観察をとることで鼻茸が再発しても早期かつ容易に外来で摘出できるようになってきた。このことは、患者のQOLを改善し、再手術の必要性も減少させれると思われたが、実際には再発があまり減少していないようであった。そこで、各施設のESSの工夫している点を班会議で検討し、情報を共有することとした。さらに好酸球性副鼻腔炎の診断と治療において予後が予測できるような臨床マーカーを探索した。
研究方法
手術法に関して、各研究者が手術ビデオと自分の手術法における工夫点をpower pointで作成し、2018年9月24日福井市AOSSAで行われた西日本ESSセミナー終了後に班会議を行い、それぞれが発表した。
鼻茸と同一患者の下鼻甲介粘膜の遺伝子発現を次世代シークエンサーで検討した。得られた因子に関して鼻茸にて免疫組織化学を行い、JESREC研究の重症度分類別発現程度を比較検討した。さらに鼻腔NOを測定し比較検討した。
結果と考察
残存蜂巣がないようにする。好酸球性副鼻腔炎は術中出血多いので、術中の出血コントロールが広い視野つながり、手術のできに反映していた。形式はIV型が推奨され、十分な単洞化が条件であった。前頭洞はDraf IIb、 Draf III型の選択が好結果につながっていた。
血清中のペリオスチンをELISAにて測定すると、好酸球性副鼻腔炎の重症度が上がるにつれて、血清中ペリオスチン値も有意に上昇することが判明し、末梢血中好酸球率と有意な正の相関を示した。ぺリオスチン高値群では有意に術後再発率が高いことが判明した。
次世代シークエンサーの検討でペリオスチンに次いで発現が多かったのは、CST-1であり、ペリオスチンと同様に鼻茸組織の免疫組織化学を行うと、好酸球性副鼻腔炎が重症化するにつれて、CST-1の染色強度が高まった。鼻茸中のCST1 mRNAは、鼻茸組織内の好酸球数、TSLP ・IL-33 ・CCL11・periostinのいずれのmRNAとも有意な正の相関関係が認められた。鼻粘膜上皮細胞においては、IL-4、dsRNA、CST-1の刺激によってTSLP産生は亢進し、鼻粘膜線維芽細胞においてCST-1刺激でEotaxin-1とペリオスチンの産生が亢進した。
鼻呼気NO値から呼気NO値を引き、鼻腔NOと定義した。好酸球性副鼻腔炎患者において鼻腔NOは、非好酸球性副鼻腔炎患者に比較して、有意に低値であった。さらに好酸球性副鼻腔炎患者の鼻腔NO値は、末梢血中好酸球率および鼻茸組織中好酸球数と有意な負の相関を認めた。特に鼻茸好酸球数と高い相関であった。また鼻腔NO値はLund-MackayスコアによるCTスコア値、JESREC値とも有意な負の相関を認めた。
結論
ペリオスチンはVEGF、RANTESとも関連性が高く、ともに好酸球性副鼻腔炎では高値を示していることが報告されている。さらにペリオスチンをin vitroで上昇もしくは低下させると、VEGFとRANTESも同じように変動し、好酸球性副鼻腔炎の発症や予後に関係深いと別のグループも報告している。気管支喘息には鼻茸合併慢性副鼻腔炎を伴うことが多いが、そのような症例は、鼻茸を伴わない気管支喘息症例よりも血清中ペリオスチンが有意に高く、副鼻腔CTスコアと有意な正の相関を認めた。今回のESS後の再発に血清中ペリオスチン高値が有意に関連していたことは、今後術前に測定することで予後判定に使用できるものである。
CST-1に関しては、まだ血清中CST-1の測定系が確立されていないので、臨床マーカとしてはまだ不十分である。しかし好酸球性副鼻腔炎において好酸球浸潤亢進に関与している可能性が示され、治療標的分子の可能性が高いと思われた。
鼻腔NOはペリオスチンやCST-1とは異なって、実際の外来でできる臨床マーカーとして有効であった。鼻茸ありの慢性副鼻腔炎(CRSwNP)では鼻茸なしの慢性副鼻腔炎(CRSsNP)よりも鼻腔NOが有意に低く、鼻腔NOはCTスコアと有意な負の相関を認るという我々と同じような結果も報告されている。

好酸球性副鼻腔炎の手術の検討は、今後治療効果を高めるうえで重要である。
血清ペリオスチン値は、術前の予後因子として臨床応用できると思われる。また鼻腔NOは、好酸球性副鼻腔炎の診断や外来での治療効果判定に使用可能であると思われた。

公開日・更新日

公開日
2019-10-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-10-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201811088Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,940,000円
(2)補助金確定額
4,940,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 355,925円
人件費・謝金 2,042,841円
旅費 581,920円
その他 819,314円
間接経費 1,140,000円
合計 4,940,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-03-15
更新日
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