自己免疫性出血症治療の「均てん化」のための実態調査と「総合的」診療指針の作成

文献情報

文献番号
201811087A
報告書区分
総括
研究課題名
自己免疫性出血症治療の「均てん化」のための実態調査と「総合的」診療指針の作成
課題番号
H30-難治等(難)-一般-015
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
一瀬 白帝(山形大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 今田 恒夫(国立大学法人山形大学 大学院医学系研究科)
  • 惣宇利 正善(国立大学法人山形大学 大学院医学系研究科)
  • 尾崎 司(国立大学法人山形大学 大学院医学系研究科)
  • 森兼 啓太(国立大学法人山形大学 医学部附属病院)
  • 横山 智哉子(国立大学法人山形大学 大学院理工学研究科)
  • 和田 英夫(国立大学法人三重大学 医学系研究科)
  • 朝倉 英策(国立大学法人金沢大学 附属病院高密度無菌治療部)
  • 家子 正裕(北海道医療大学 歯学部生体機能系内科学分野)
  • 橋口 照人(国立大学法人鹿児島大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 小川 孔幸(国立大学法人群馬大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「後天性出血症」は誰でも罹患する可能性がある疾病であり、これまでは希少であったが、超高齢社会となった我が国では次第に症例数が増加している。特に「自己免疫性出血症」は難治性疾患であるため、本事業は、本症に含まれる各疾患の症例を確定診断して実態を解明し、診断基準、重症度分類、診療ガイドライン等を作成、確立、改定することが主な目的である。
研究方法
研究代表者1名と分担者10名が、3年間本症の症例のデータを集積・分析し、そのエビデンスに基づいた全国共通の診断基準・重症度分類の作成や改定、総合的な診療指針の確立や改定及び普及等を行って臨床現場における医療の質の向上を目指す。

全期間
1)広報活動
 チラシ配布や学会発表で本症の周知を図り、調査活動の成果を本研究班、難病情報センター、日本血栓止血学会等のHPで無料公開
2)全国症例調査
a) 毎年同一時期にアンケート用紙を送付して、1年間相談がなかった症例の発掘
b) 症例データベース構築に必須な項目を決定し、「難病プラットフォーム」を利用して、症例レジストリを構築
3)臨床研究・調査
a) 症例相談の受付、全国アンケート調査からの症例発掘とJBATによるスクリーニング
b) 統一特別委託検査(計28項目)の実施と解析
c) 研究的精密検査の実施
d) 一次基礎疾患別に、二次性欠乏の機序、要因のデータ収集と解析
e) 危険因子のデータ収集と解析
f) 「ステップアップ療法」、「トップダウン療法」の追跡調査
g) 止血と寛解段階での治療効果の判定など
h) 対象5疾患の症例報告を定期的に文献検索

平成30年度
 臨床調査を継続しつつ、各疾患の研究結果に基づきそれぞれの診断基準、検査アルゴリズム、診療指針、JBATの使用方法、抗線溶薬の止血治療の推奨ランク、免疫抑制療法の推奨ランクなどを検証、改定する。
1)AiF13D治療指針作成の基礎資料として、治療(止血療法/抗体根絶療法)、治療効果/寛解の判定等の新規及び追跡調査を実施
2)AiVWFD疑い症例調査、研究的精密検査による臨床データの蓄積、診断基準案の検証、改定
3)AiF8D診断基準を改定、抗体の消長を含む治療効果/寛解の判定基準案を作成、検証
4)AiF5D診断基準を検証し、必要に応じて微調整
5)AiF10D診断基準案を新たに作成、提唱し、総合的診療指針に統合
6)自己免疫性出血病検査アルゴリズム、統一特別委託検査の検証、改定
結果と考察
結果
 平成30年度は、症例相談、アンケート調査、文献検索を実施して、本症の検査、診断、治療のデータを集積・分析した。また、各疾患の診断基準、重症度分類、診療指針を作成・確立・検証・改定しつつ、「難病プラットフォーム」の患者レジストリ構築の準備を開始した。
 特筆すべき成果は、研究班ホームページの作成と運用を開始したこと、新たにモデル医療機関を指定して新規症例の「迅速な確定診断と治療開始」を試験的に実施し始めたこと、外部精度管理の一環として総F13-Bサブユニット抗原量の国際基準創設のための国際共同研究を実施したこと、AiF10D診断基準(研究班最終版)を策定して学会誌で公表したことなどである。

考察
 研究班のHPを開設したので、これを活用して非専門医へ本研究事業や本症、特に診断方法、医療費助成申請等の紹介、周知を図る。
 新たにモデル医療機関を指定して新規症例の迅速な確定診断と治療開始を可能にしたので、同様の医療機関を増やして「診療の均てん化」が進むようにしたい。
 総F13-Bサブユニット抗原量の国際基準創設のための国際共同研究を実施したので、国際的に検査・診断のレベルが向上することが期待される。
 データベースソフトウェアを利用して検体検査精度管理台帳のテンプレートを作成したので、難病プラットフォームとの統合にも活用され、本症の予後が明らかにされることが期待される。
 AiF10D診断基準を策定して学会誌で公表したので、新しい症例が発見されると予想される。
 中間評価で「検査方法の一般化」が要求されており、抗凝固因子モノクローン抗体産生株を内製して有用性を確認したので、研究班での抗体検出(と凝固因子抗原量測定)を安定的に実施し、将来は研究用試薬としてより一般的に利用できるようにしたい。
結論
自己免疫性出血症治療の「均てん化」のためには、疾患の周知、スクリーニング・確定診断用検査の一般化、実態調査が不可欠である。特に疾患の実態については、「難病プラットフォーム」に参加して、新しい症例レジストリを構築することによって長期的な症例の追跡が可能になり、より正確な予後が判明すると期待される。また、AiF10Dについて調査研究を継続して新しい指定難病288-5として追加申請し、「公平な支援」による診療の均てん化に貢献したい。

公開日・更新日

公開日
2019-11-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-11-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201811087Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,000,000円
(2)補助金確定額
13,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,985,693円
人件費・謝金 836,220円
旅費 809,400円
その他 2,368,895円
間接経費 3,000,000円
合計 13,000,208円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-03-15
更新日
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