強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎の疫学調査・診断基準作成と診療ガイドライン策定を目指した大規模多施設研究

文献情報

文献番号
201811086A
報告書区分
総括
研究課題名
強直性脊椎炎に代表される脊椎関節炎の疫学調査・診断基準作成と診療ガイドライン策定を目指した大規模多施設研究
課題番号
H30-難治等(難)-一般-014
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
冨田 哲也(国立大学法人大阪大学 大学院医学系研究科運動器バイオマテリアル学)
研究分担者(所属機関)
  • 中村 好一(自治医科大学 公衆衛生学部門)
  • 渥美 達也(北海道大学大学院 医学研究院)
  • 高木 理彰(山形大学 医学部)
  • 門野 夕峰(埼玉医科大学 医学部整形外科脊椎外科)
  • 小林 茂人(順天堂大学 大学院医学研究科)
  • 竹内 勤(慶應義塾大学 医学部)
  • 田村 直人(順天堂大学 大学院医学研究科)
  • 岸本 暢将(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
  • 松野 博明(東京医科大学 医学総合研究所)
  • 中島 利博(東京医科大学 医学総合研究所)
  • 西本 憲弘(東京医科大学 医学総合研究所)
  • 藤尾 圭志(東京大学 医学部附属病院)
  • 亀田 秀人(東邦大学 医学部)
  • 森田 明理(名古屋市立大学 大学院 医学研究科)
  • 中島 亜矢子(三重大学 医学部附属病院リウマチ・膠原病センター)
  • 岡本 奈美(大阪医科大学 医学研究科)
  • 辻 成佳(独立行政法人国立病院機構大阪南医療センター 臨床研究部 免疫異常疾患研究室/リウマチ 膠原病 アレルギー科)
  • 松井 聖(兵庫医科大学 内科学 リウマチ・膠原病科)
  • 山村 昌弘(岡山済生会総合病院 内科)
  • 中島 康晴(九州大学大学院医学研究院整形外科)
  • 川上 純(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
分科会を含めH30年度は5回の班会議を行ったが、出席予定者の欠席があったため差異が生じた。

研究報告書(概要版)

研究目的
強直性脊椎炎(Ankylosing spondylitis; AS)は、10代〜30代の若年者に発症する原因不明で、体軸関節である脊椎・仙腸関節を中心に慢性進行性の炎症を生じる疾患であり、進行期には脊椎のみならず四肢関節の骨性強直や関節破壊により重度の身体障害を引き起こす疾患である。進行性であり、発症後は生涯にわたり疼痛と機能障害が持続し、日常生活に多大な支障をきたす。様々な介助や支援が必要になり患者本人、家族の物理的、経済的、精神的負担は多大なものになる重篤な疾患である。近年世界的に脊椎関節炎(Spondyloarthlitis; SpA)という疾患概念で捉える方向性が示されている。SpAはASに代表される体軸性と乾癬性関節炎、反応性関節炎、炎症性腸疾患関連関節炎、分類不能脊椎関節炎などが含まれる末梢性に大別される。全国規模での疫学調査はなく、末梢性SpAを含め実態は未だ不明である。以上我が国での背景に基づき、下記の項目を目的とした。
1)難病の疫学研究班で確立された全国疫学調査法による、本邦でのASに代表されるSpAの正確かつ最新の疫学データ収集とその解析。
2)本邦の実情に適合した的確かつ精度の高い診断基準を確立し、ASが中心となる体軸性SpAの客観的診断の標準化。
3)SpA診療ガイドライン策定。
4)SpAと鑑別が必要なSAPHO症候群の実態解明。

研究方法
全国疫学調査に関して厚生労働省難病疫学研究班で確立された全国疫学調査マニュアル第3 版に従いH30年9月より一次調査をH30年10月より二次調査を施行した対象施設は、「整形外科・リウマチ科・小児科」の3科で、全国病院データをもとに、病床数により層化した。整形外科1108施設、リウマチ科289施設、小児科824施設を対象とし、全体として26.3%の抽出率(2221施設/8456)で調査を行った。。
昨年度検討した体軸性脊椎関節炎診療の手引きに引き続き今年度は、末梢性脊椎関節炎診療の手引きにつき検討した。鑑別、除外診断をリストアップすることで診断に使用できる方向性でまとめる方法を採用した班会議で討議し、手引きの概要について検討した。分担研究者が編集委員長となる編集委員会を編成した。
難病プラットフォームと連携し脊椎関節炎、SAPHO症候群の疾患レジストリ構築を行うことに決定した。難病プラットフォームとの面談を経てそれぞれの疾患登録項目を決定した。SAPHO症候群については本邦で圧倒的に頻度の高いPAOについて本邦での治療内容についてレビュー解析をおこなった。

結果と考察
1)回収率は整形外科620施設(56.0%)、リウマチ科143施設(49.5%)、小児科631施設(76.6%)で、全体では1394施設(62.8%)から回収を得た。報告患者数は、全体でAS1173人、nr-SpA333人であった。推計患者数(95%信頼区間)は、全体でAS3200人(2400-3900)、nr-SpA800人(530-1100)であった。
2)脊椎関節炎診療の手引き:対象をリウマチ医、整形外科医、一般内科医、研修医・専攻医など広く対象とすることが確認された。記載内容については、大きく分けて、体軸性脊椎関節炎、末梢性脊椎関節炎、小児の脊椎関節炎、その他とし、疾患概念や病態、疫学、診断や鑑別診断の注意点、治療の考え方、治療薬などについて記載することとした。
3)疾患レジストリ構築:難病プラットフォーム面談の上、それぞれの疾患について登録項目を決定した。さらに脊椎関節炎で診断に重要な画像データをDICOM 形式で登録することで、画像読影を共有できるシステム作りを行った。
4)SAPHO症候群:骨関節専門家が診療する、本邦でのSAPHO症候群は掌蹠膿疱症性骨関節炎(pustulotic arthro-osteitis: PAO)が多く、積極的に診療している施設間でもその治療法の選択は異なっていた。

考察
 ASは2015年に国の指定難病に追加された。今回初めて全国レベルでの疫学調査が実施された。今後2次調査を継続して行く予定である。
脊椎関節炎診療ガイドラインについては、脊椎関節炎全般を網羅した診療の手引き作成が提案、計画され2020年3月をめどに発刊する予定である。疾患レジストリは今後IRB等承認を得て2019年10月以降で登録開始の予定である。
SAPHO症候群については、世界的にみても治療エビデンスの確立ならびに治療ガイドラインの制定には程遠いのが現状である。PAOが主体と考えられる本邦での治療確立のためには不十分であることが想定され、日本人患者での検討が必要と考えられた。
結論
本邦におけるASに代表される脊椎関節炎の診断基準を作成し、これを基づいた疫学調査・継続的調査が必要である。

公開日・更新日

公開日
2019-11-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-11-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201811086Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,005,000円
(2)補助金確定額
4,945,000円
差引額 [(1)-(2)]
60,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 263,876円
人件費・謝金 0円
旅費 1,662,950円
その他 1,863,530円
間接経費 1,155,000円
合計 4,945,356円

備考

備考
分科会を含めH30年度は5回の班会議を行ったが、出席予定者の欠席があったため差異が生じた。

公開日・更新日

公開日
2020-03-16
更新日
-