染色体微細欠失重複症候群の包括的診療体制の構築

文献情報

文献番号
201811084A
報告書区分
総括
研究課題名
染色体微細欠失重複症候群の包括的診療体制の構築
課題番号
H30-難治等(難)-一般-012
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
倉橋 浩樹(藤田医科大学 総合医科学研究所・分子遺伝学研究部門)
研究分担者(所属機関)
  • 大橋 博文(埼玉県立小児医療センター・遺伝科)
  • 黒澤 健司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立こども医療センター・遺伝科)
  • 山本 俊至(東京女子医科大学・遺伝子医療センター)
  • 涌井 敬子(信州大学医学部・遺伝医学教室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
5,924,000円
研究者交替、所属機関変更
倉橋浩樹 平成30年10月1日所属機関名変更  藤田保健衛生大学→藤田医科大学

研究報告書(概要版)

研究目的
研究代表者を含む本研究班員はこれまで、厚労省難治性疾患克服研究事業の支援も受け、マイクロアレイ染色体検査で診断されるような多発奇形・発達遅滞の患者の診療をおこなう中で、個々の疾患の診断基準や重症度基準、診療ガイドライン作成を行ってきた。一部の代表的な疾患に関してはすでに先行研究班で臨床的実態調査がなされており、小児期の疾患の自然歴に関しては十分な情報が集まった。一方で、患者さんの多くは小児期の医療管理の充実化により疾患の予後が改善し長期生存が可能となっており、成人期治療へのトランジッションが重要となってきたが、これら稀少疾患の成人期の臨床情報は皆無に等しい。直面している患者さんやご家族は移行期や成人期の疾患の臨床情報を必要としており、また、小児期の患者さんのご家族も安心材料としての長期的な情報を欲している。そこで、本研究では先行研究を継続する形で、現在すでに作成している患者レジストリーを利用して、長期生存例の直近の情報を入手し、疫学的調査を行うことを第一の目的とする。成人期患者の情報収集を行い、収集した情報を分析して、当該疾患の症状の特徴を抽出し、その対処法や合併症の予防法をリスト化する。そして、代表的な5疾患に関して、成人期移行も踏まえた新たな診療ガイドラインの作成を行う。そして、頻度の低い26疾患に関しては、引き続き患者サンプルの収集とマイクロアレイ染色体検査を行い、ある程度の情報が集積した疾患から、順次、新規に診断基準の策定などを行うことを目標とする。
研究方法
代表的な5疾患に関しては、先行研究ですでに作成している患者レジストリーを利用して、患者情報を、とくに長期生存例の直近の情報を入手し、疫学的調査を行う。エマヌエル症候群(指定難病204)、5p欠失症候群(109)、スミスマゲニス症候群(202)、1p36欠失症候群(197)、4p欠失症候群(198)を担当する。また、残りの対象疾患の26疾患は、患者数の少ない稀少疾患であるので、さらに多くの診断未確定患者の発掘のために、日本全国の主な診療施設の小児科もしくは遺伝診療科に連絡を取り、染色体微細構造異常が疑われるような多発奇形・発達遅滞の患者のサーベイランス、患者登録を行う。この調査は、日本小児遺伝学会との連携のもとに行う。集まった患者情報に基づいて、詳細な臨床情報と末梢血サンプルの収集を行う。末梢血サンプルに対しては、研究代表者を含む各研究分担者が個々の施設でマイクロアレイ染色体検査にて診断を確定させる。最終的には、診断につながる臨床診断基準を策定し公開する。
結果と考察
エマヌエル症候群については、7年前に完了した先行研究で国内35名の患者登録を行った。20名にアンケート調査ができ、年長者は15歳以上が5名であった。その内訳は、15歳、20歳2名、27歳、31歳であった。様々な臨床症状を呈するが、成長とともに安定し、生命予後はよいと考えられた。また、重度の精神発達遅滞、運動発達遅滞を呈するが、個々にあったコミュニケーション法を獲得することで、患者、家族のQOLが向上すると考えられた。先行研究の終了後、徐々に把握している患者は加齢し成人期に達する患者が増えている。また、追加で把握している患者の数も増加している。本研究においては、把握している成人患者に対するアンケート調査において成人期の情報を集めるために、成人例に焦点を当てた質問表作成に取り組んでいる。まずは、若年患者の家族が成人例の何を知りたいのかを事前に調査することとした。藤田医科大学病院・臨床遺伝科には、全国から新規に診断されたエマヌエル症候群の患者が来談される。その面談の中で、成人期の患者の家族に何を聞きたいのか、質問リストを作成してもらった。また、本年度は福岡(2018年4月21日)と仙台(2018年5月12日)で数組みの患者家族が集まる小規模な患者会を開催し、そこで成人期患者の情報や、小児期患者の家族が何を知りたがっているのかの情報を収集した(資料2)。また、今後もこのような小規模の集まりができるよう、患者の居住地がわかるような「友だちマップ」というシステムを作成し、研究代表者が運営するエマヌエル症候群の患者と家族の支援サイトの上で運用している。患者の家族も、近隣で同じ疾患の家族がお互いの存在を認識できるようにするためのポスターを作成した。
結論
本研究では、多発奇形・発達遅滞を主症状とする染色体微細欠失重複症候群の成人期移行を見据えた診療ガイドラインの確立を目的として、国内の多施設共同研究により、代表的な5疾患に関して、とくにエマヌエル症候群について全国調査による国内成人患者の実態調査を開始した。地域ごとの小規模患者会が充実すれば、医療サイドの対応に先行して、患者の家族が自ら対応して行ける体制が整うことが期待され、平行して進めてゆく。

公開日・更新日

公開日
2019-09-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-09-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201811084Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
7,700,000円
(2)補助金確定額
7,700,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,476,115円
人件費・謝金 150,000円
旅費 204,602円
その他 2,093,283円
間接経費 1,776,000円
合計 7,700,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-03-15
更新日
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