先天性心疾患を主体とする小児期発症の心血管難治性疾患の生涯にわたるQOL改善のための診療体制の構築と医療水準の向上に向けた総合的研究

文献情報

文献番号
201811082A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性心疾患を主体とする小児期発症の心血管難治性疾患の生涯にわたるQOL改善のための診療体制の構築と医療水準の向上に向けた総合的研究
課題番号
H30-難治等(難)-一般-010
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
白石 公(国立研究開発法人 国立循環器病研究センター 研究開発基盤センター・教育推進部)
研究分担者(所属機関)
  • 安田 聡(国立循環器病研究センター・心臓血管内科)
  • 市川 肇(国立循環器病研究センター・小児心臓外科)
  • 黒嵜 健一(国立循環器病研究センター・小児循環器部)
  • 大内 秀雄(国立循環器病研究センター・小児循環器部)
  • 西村 邦宏(国立循環器病研究センター・予防医学・疫学情報部)
  • 武田 充人(北海道大学・医学部・小児科)
  • 小山 耕太郎(岩手医科大学・医学部・小児科)
  • 住友 直方(埼玉医科大学・国際医療センター・小児心臓科)
  • 水野 篤(聖路加国際病院・循環器内科)
  • 賀藤 均(国立成育医療研究センター・病院)
  • 三浦 大(東京都立小児総合医療センター・副院長)
  • 八尾 厚史(東京大学・保健・健康推進部)
  • 犬塚 亮(東京大学医学部附属病院・小児科)
  • 高橋 健(順天堂大学・医学部・小児科)
  • 土井 庄三郎(東京医科歯科大学・医学部・茨城県小児・周産期地域医療学講座)
  • 山岸 敬幸(慶應義塾大学・医学部・小児科)
  • 杉山 央(東京女子医科大学・循環器小児科)
  • 富田 英(昭和大学・医学部・小児循環器科)
  • 上田 秀明(神奈川県立こども医療センター・循環器内科)
  • 先崎 秀明(北里大学・医学部)
  • 落合 亮太(横浜市立大学・学術院医学群医学研究科)
  • 安河内 聰(長野県立こども病院・循環器センター)
  • 坂本 喜三郎(静岡県立こども病院・心臓血管外科)
  • 芳村 直樹(富山大学・大学院医学薬学研究部)
  • 三谷 義英(三重大学・医学部附属病院)
  • 山岸 正明(京都府立医科大学・医学部)
  • 小垣 滋豊(大阪急性期総合医療センター・小児科・新生児科)
  • 城戸 佐知子(兵庫県立こども病院・循環器内科)
  • 赤木 禎治(岡山大学・病院循環器疾患集中治療部)
  • 檜垣 高史(愛媛大学・大学院医学系研究科)
  • 佐川 浩一(福岡市立こども病院・循環器科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
19,231,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性心疾患は出生約100人に1人の割合で発症する。外科手術成績の向上により、患者の90%以上が成人期に到達するようになった。現在では成人患者は全国に約45万人存在し、先天性心疾患は小児科だけでなく、内科でも看過できない診療領域となってきた。しかしながら、病態のバリエーションが非常に広く診療科も広範囲わたるために、患者の予後改善のために必要なレジストリやデータベースは確立されていない。また患者は年齢や疾患の時右室から、小児施設でも内科施設でも受け入れが困難で、全国で専門施設を設立することが急務である。従って、円滑な移行医療と診療体制の構築が、医学的にも社会的にも大きな課題である。同時に、診療を担う若手医師、看護師、検査技師の教育体制を充実させることも必要である。さらには、患者の医療保障、社会保障、就労支援を充実させることも必須である。
 本研究では、先天性心疾患患者をはじめとする小児期発症の心血管難治性疾患患者が、小児期のみならず成人期まで生涯に渡り良好な生活が営めるよう、関連する各学会や患者団体とともに、疾患の診断基準の確立、ガイドラインの作成、患者レジストリ構築、データベース化、シームレスな移行医療の構築、成人患者の診療体制の確立、長期予後の検討、社会医療支援、若手スタッフの教育などを実施し、これら様々の医療政策を実践することを目的とする。
研究方法
小児期発症の心血管難治性疾患患者が、生涯に渡り良好な生活の質を保てることを目的として、関連する学会や研究班とともに、小児から成人までの患者レジストリ構築、小児から成人までの診療データベース構築、難治疾患の診断基準およびガイドラインの確立、移行医療の確立、長期予後の検討、若手スタッフの教育、専門医制度および専門医修練施設(基幹施設)の確立などを実施する。
結果と考察
1. 日本小児循環器学会および日本循環器学会とともに、「先天性心疾患および小児期発症心疾患の診断検査と薬物治療のガイドライン」を改訂した。
2. 日本小児循環器学会理事会の承認(2018年9月)を得て、指定難病の診断基準見直しに着手した。
3. 日本成人先天性心疾患学会、循環器内科拠点施設ネットワークとともに、成人先天性心疾患拠点施設の認定を進めた。拠点施設(総合修練施設40カ所と連携修練施設41ヶ所、計81ヶ所)、および専門医170名が認定され、2019年4月より施行された。
4. 日本小児循環器学会で行なっている「小児心血管疾患新規患者の全国調査」を実施および支援した。2018年は新規の先天性心疾患患者10,320名が報告され、全出生に対して1.3%の発生率であった。
5. 循環器内科拠点施設ネットワークとともに、患者登録システム」の構築を継続して進めた。2019年3月末までに、約10,000名が登録済みである。
6. 日本心臓血管外科手術データベースと日本小児循環器カテーテル治療学会データベースを出生届とリンクし、出生届と死亡小票の両データベースの予後を追跡する計画を立案した。
7. 先天性心疾患術後患者(特にフォンタン手術後)の長期にわたる心機能および循環動態を経時的に追跡し、長期予後の調査研究を継続して行なった。
8. 外科治療に携わる心臓血管外科医が激減しているのを踏まえ、その対策と若手医師の育成に努めている。日本小児循環器学会において勤務実態調査を行い、論文として発刊した(日児循会誌2019;35:61-9)。
9. 班会議ホームページ「先天心疾患情報ポータル-みんなで学ぶ・心を寄せる」を立ち上げ、医療従事者と患者との情報共有や意見交換の場とする。同時に冊子体3,000部も発行し患者会に配布した。
10. 移行期支援医療センターが全国でどの程度稼働しているかを、専門医修練施設81施設にアンケート調査を行なった。確立しているのは18%と、まだ少ないことが明らかとなった。
結論
先天性心疾患を中心とした小児期発症の心血管難治疾患では、小児期から成人期までの患者登録制度、診療体制の構築、教育や専門医制度の確立などが十分に確立されていないため、本研究による診断基準の確立、ガイドラインの作成、外科治療の評価、中長期予後の検討、新しい治療法の開発は、医学的のみならず社会的に大きく役立つ。また学会との連携により、小児科から内科へ患者を円滑に移行させるための診療システムを構築し、全国各地に基幹施設が確立されれば、地域の医療情勢に適した診療体制および診療連携を構築することができる。その結果、患者の病状が急変した際に安心して通院および入院治療を受けることが可能となる。さらには、現在社会的および医療支援体制が得られていない患者において、各種支援が充分に受け入れることが可能となり、患者の生活の質の向上と長期予後の改善を目指すことが可能となる。

公開日・更新日

公開日
2020-01-20
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201811082Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
25,000,000円
(2)補助金確定額
25,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 12,031,069円
人件費・謝金 395,197円
旅費 1,548,259円
その他 5,257,721円
間接経費 5,769,000円
合計 25,001,246円

備考

備考
自己資金1,246円

公開日・更新日

公開日
2020-04-13
更新日
-