成人発症白質脳症の実際と有効な医療施策に関する研究班

文献情報

文献番号
201811078A
報告書区分
総括
研究課題名
成人発症白質脳症の実際と有効な医療施策に関する研究班
課題番号
H30-難治等(難)-一般-006
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 理(国立大学法人新潟大学 脳研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 水野敏樹(京都府立医科大学 神経内科)
  • 池内 健(国立大学法人新潟大学 脳研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成人発症の白質脳症には、禿頭と変形性脊椎症を伴う常染色体劣性白質脳症(CARASIL)、皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)、神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症(HDLS)、那須・ハコラ病等が含まれる。本疾患群は、進行性の運動機能障害と認知症を来たし、その療養は長期に亘る。成人発症の白質脳症は、近年、遺伝子の単離が進み、疾患の同定が可能となってきた。臨床症状も多彩で有り、遺伝子診断無しでは生前診断が困難なことも多い。また、遺伝子診断陰性の症例も、まだ数多く存在する。それらの患者さんに対し、十分な医療体制が提供できていない。本研究では、これらの成人発症の白質脳症の早期診断を可能とし、適切な医療提供が行われるようにする事を目的とする。
研究方法
CARASILと那須・ハコラ病は主任研究者である小野寺が、CADASILを分担研究者である水野が、HDLSは分担研究者である池内が担当した。各研究者は、当該疾患の遺伝子診断について全国規模で行ってきた実績がある。本年度は、その実績に伴い、早期診断を目標とした、診断基準の作成を行った。すでに遺伝子診断での確定例を多数保有しているため、それらの症例の医療記録を後方視的に検討することにより診断基準を作成した。
結果と考察
CARASILについては、182例の白質脳症患者の臨床情報とDNAを収集し、HTRA1 遺伝子解析を行った。その結果、CARASILの確定例を2例、優性遺伝性CARASILの確定例を6例見いだした。更に優性遺伝性CARASILが疑われる2例見いだし、変異HTRA1の機能解析を行うこととした。これら合計10例について詳細な臨床情報を追加収集した。182例の白質脳症患者の臨床情報とDNAを収集し、HTRA1 遺伝子解析とNOTCH3 遺伝子解析を行った。その結果、非CARASILかつ非CADASILである症例は138例であった。このうち55歳以下で神経症状を認める、または第2親等以内の類症が明らかな72症例については遺伝性疾患が強く疑われたためにエクソーム解析を追加した。結果、仮性弾性黄色腫症2例見出した。更に、1例COL4A1の3’非翻訳領域に新規変異を同定した。また脳小血管病とは異なる白質ジストロフィーに分類される疾患として、伴性劣性副腎白質ジストロフィーを1例、白質消失病を 3例同定した。これらの結果から、非CARASILかつ非CADASILである症例の中で、特に遺伝性が示唆される症例の約10%は実際に何らかの病的な遺伝子変異を有することが示唆された。那須・ハコラ病に関しては新規患者を同定できなかった。CADASILに関しては、195症例を診断した。病的変異を認めなかった345例の内217例に家族歴を認めた。さらに50歳以下発症で、家族歴が常染色体優性または劣性発症した症例に絞りこみ画像解析を行った。その結果50例が虚血性変化による白質脳症と診断し、さらに脳小血管病と考えられた15例を抽出した。全国から遺伝子依頼があった多数の症例で未診断例が多数存在することが明らかになった。90家系122症例のCSF1R変異陽性のHDLSについて解析した。HDLSの臨床的特徴として若年発症(通常60歳以下),認知機能障害,性格変化・行動異常,錐体路徴候,パーキンソン症状,けいれん発作などが挙げられる。常染色体優性遺伝性を呈するが孤発症例も少なからず存在する。頭部画像ではMRIとCTが有用であり,両側性の大脳白質病変,脳梁の菲薄化,点状の微小石灰化が認められる。このような特徴を基盤にHDLSの診断基準が策定された。この基準を用いるとCSF1R陽性遺伝子変異陽性例を96%以上の感度で診断が可能である。また,88%の特異度でNOTCH3変異を有するCADASILを除外することが可能である。
結論
CARASILの確定例を2例、優性遺伝性CARASILの確定例を6例見いだした。これら8例について詳細な臨床情報を追加収集し、既報の16例を加えてデータベース作成を完了した。軽症例の診断を可能とする情報を得た。更に優性遺伝性CARASILが疑われる2症例を見出した。また、非CARASILかつ非CADASILである症例のうち若年発症または第2親等以内の類症が明らかな、遺伝性疾患が強く疑われる72症例について、エクソーム解析を追加した。結果、遺伝性疾患が強く疑われる症例の約10%が何らかの遺伝子変異を認めることが確認された。HDLSの中核となる臨床病型とその多様性を明らとし。また,HDLSの遺伝子診断の方法論を確立した。今後、本研究班で集積した解析結果を踏まえて遺伝子診断陰性例を絞り込み、データベース作成を完了し、遺伝子診断陰性群の臨床的な特徴を明らかにする。

公開日・更新日

公開日
2019-09-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201811078Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,000,000円
(2)補助金確定額
13,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,839,031円
人件費・謝金 691,950円
旅費 1,281,155円
その他 2,187,864円
間接経費 3,000,000円
合計 13,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-04-03
更新日
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