特発性好酸球増加症候群の診療ガイドライン作成に向けた疫学研究

文献情報

文献番号
201811074A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性好酸球増加症候群の診療ガイドライン作成に向けた疫学研究
課題番号
H30-難治等(難)-一般-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
黒川 峰夫(東京大学 医学部附属病院 血液・腫瘍内科)
研究分担者(所属機関)
  • 小松 則夫(順天堂大学 医学部)
  • 片山 義雄(神戸大学 医学部附属病院)
  • 齋藤 明子(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
1,310,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
特発性好酸球増多症候群(HES)は末梢血における慢性的な好酸球増加および好酸球浸潤による臓器障害を特徴とする症候群である。希少疾患であることもありその臨床像および分子生物学的な病態については未解明のままである。本研究は上記のHESに診断される症例を全国的に収集し、その臨床像の解析・分類を行うことで希少疾患であるHESの本邦における診療実態を明らかにすることを目的とする。
研究方法
本研究では多施設共同後方視的調査研究を行う。HESは希少疾患であることから、その頻度や臨床背景を調べるために症例登録システムを構築し、全国の診療施設からの登録を受ける。一次調査として全国の主要な施設の血液内科を対象に質問票を用いたHESの診療実態の調査を行い、HES症例数を予測する。一次調査においてHES症例がいると回答が得られた施設の代表者に対しては、より詳細な臨床情報を得るため二次調査として質問票を用いた調査を行う。また、本研究においては染色体転座の有無に関して研究代表者の施設において検体集積のもと中央診断を行う。
 上記で得られた情報をもとに、HES患者の臨床像を明らかにすると共に発症関連因子、予後関連因子の同定を行い、重症度分類を確立する。また、本邦で行われている治療の実態を把握した上でHESの診療ガイドラインを策定する。
結果と考察
一次調査として日本血液学会に登録されている研修施設498施設に対して調査を行い、そのうち160施設(32.1%)回答を得た。このうちHES症例の診療経験があると回答したのは51施設 (10.2%)だった。HESの診療経験がある施設毎の診療患者数の中央値は2例(最少1例、最多16例)であり、合計で152例のHES症例が同定された。
同定されたHES症例152例の性別は男性87例(57.2%)、女性65例(42.8%)でやや男性に多かった。HES症例の10歳毎に区切った年齢分布については、中央値が60歳台であり、一桁から90歳台まで広い年齢層に分布が見られ、70歳台をピークとして年齢が上昇するにしたがって症例数が多かった。
地方別のHES症例数の分布については関東47例(30.9%)、近畿39例(25.7%)、中部25例(16.4%)、九州13例(8.6%)、東北8例(5.3%)、中国7例(4.6%)、四国7例(4.6%)、北海道6例(3.9%)の順に多かった。平成27年度国勢調査における各地域別の人口1000人当たりのHES症例数は中央値1.10人(最少0.89人~最大1.82人)となり、四国地方(1.82人)や近畿地方(1.73人)でやや多い傾向にあった。
欧米の多施設における好酸球増多症候群の後方視的解析(J Allergy Clin Immunol. 2009;124:1319)では好酸球増多症候群188症例 のうち、104症例(55%)が男性であり、当研究での男性割合57.2%はこの既報と同程度でありやや男性に多い傾向にあった。好酸球増加症候群におけるチロシンキナーゼ遺伝子の転座と性差の関係については、病態的にその機序は明らかになっておらず、今研究の対象となる特発性好酸球増加症候群においてもその性差が存在するのかどうかを確認することは今後病態を明らかにするうえでも重要なデータと考えられる。
前述の既報においては、年齢中央値45歳であり6歳から85歳までの分布であったと記述されている(J Allergy Clin Immunol. 2009;124:1319)。当研究における年齢分布は、中央値が60歳台であり、欧米と比べてやや高齢での発症である可能性がある。
今後詳細な臨床情報の検討を行い、本邦における多施設症例のデータを積み重ねることで、欧米との発症原因の差異などにおいても明らかにできる可能性があると考えられる。
 今回の一次調査の結果からは、近畿地方や四国地方で人口あたりの症例数がやや高い傾向が見られた。この原因として、近年神戸大学の研究チームにおいて好酸球増加症患者の質問票調査研究が行われており(Rinsho Ketsueki. 2010;51:515)、地域的な疾患認知度の差がこの地域差に影響を与えている可能性もあると考えられる。特発性好酸球増加症候群は希少な疾患であることから、疾患認知度が診断機会の上昇に直接結びつきやすいと考えられ、今後我々の研究班による疾患認知度の上昇も、本邦における特発性好酸球増加症候群の診療の質の上昇において重要になると考えられる。
結論
一次調査の結果、本邦における特発性好酸球増加症候群の症例数、および性別、年齢分布、地域差などが明らかになった。今後詳細な臨床情報の解析から本邦におけるHES症例の臨床的特徴や最適な治療方針などまとめ、診療ガイドライン作成に向けてデータの集積が必要であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2019-09-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-10-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201811074Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,700,000円
(2)補助金確定額
1,700,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,197,008円
人件費・謝金 0円
旅費 30,220円
その他 84,572円
間接経費 390,000円
合計 1,701,800円

備考

備考
自己資金 1,800円

公開日・更新日

公開日
2020-02-18
更新日
-