難治性疾患等を対象とする持続可能で効率的な医療の提供を実現するための医療経済評価の手法に関する研究

文献情報

文献番号
201811072A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性疾患等を対象とする持続可能で効率的な医療の提供を実現するための医療経済評価の手法に関する研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-062
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
福田 敬(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 大介(国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター)
  • 白岩 健(国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター)
  • 高橋 秀人(国立保健医療科学院)
  • 牛田 享宏(愛知医科大学 医学部)
  • 鈴木 康夫(東邦大学医療センター佐倉病院 内科学講座)
  • 服部 信孝(順天堂大学 大学院医学系研究科)
  • 吉永 尚紀(宮崎大学 テニュアトラック推進機構)
  • 清水 栄司(千葉大学 子どものこころの発達教育研究センター)
  • 吉村 健佑(千葉大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
21,540,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、医療経済評価の手法を用いて(1)慢性疼痛、(2)潰瘍性大腸炎、(3)パーキンソン病の難治性疾患等の新たな診療技術に対する医療経済評価の分析方法を確定し、その妥当性を評価することである。平成30年度の研究目的は、各疾患の医療経済評価モデルを作成し、医療経済評価に必要な先行研究やQOL尺度と疾患特異的尺度の関連性を評価する臨床研究をそれぞれ開始した。加えて慢性疼痛については医療機関の機会費用を検討するために、慢性疼痛の集学的治療に関する「痛みセンター」の基礎的検討を実施する。
研究方法
慢性疼痛については「痛みセンター」と遠隔の在宅患者を簡易なWeb会議システムでつなぐオンライン認知行動療法の症状改善効果をランダム化比較試験により検証するとともに、実際にかかる医療費を調査し、EQ5Dを用いて、QALY(質調整生存年)を測定し、医療経済評価研究を実施する。また、慢性疼痛の治療において複数の診療科や職種が集まってアセスメントを行う「集学的診療体制(痛みセンター)」による集学的治療を受けた患者に対する有効性検証するために、2013-2017年の間に愛知医科大学痛みセンターを受診した初診患者に対して痛みに伴う生活障害、不安・うつ尺度、痛みに対する破局化尺度、EQ5Dの調査を行う。潰瘍性大腸炎については医療経済評価の分析モデルを作成する。分析対象はインフリキシマブを用いた薬物療法、比較対象はステロイドを用いた薬物療法とする。これらの分析モデルを検証するために必要な潰瘍性大腸炎の疾患重症度とQOL値の関連性の検証を実施するための研究計画を作成する。パーキンソン病については医療経済評価の分析モデルを作成し、分析対象は1次治療にドパミンアゴニストを用いる治療戦略とし、比較対象を1次治療からレボドパを用いる治療戦略とする。また、パーキンソン病の医療経済評価モデルで用いるQOL尺度については質調整生存年の算出に用いられるEQ-5D-5Lスコアとパーキンソン病の評価スケールであるMDS-UPDRSの関連性についての臨床研究を実施する。
結果と考察
 慢性疼痛に対する認知行動療法のパイロット・ランダム化比較試験は、目標症例数(両群40例、各群20例)の約半数のエントリーを完了した。また、痛みセンター受診患者のプロファイルに関する研究では、集学的慢性疼痛診療システム(痛みセンター)の患者の特徴について調査した結果、一般的な患者よりも重症度の高い値となったことから、適切な介入が必要であることが推察された。パーキンソン病治療の費用対効果算出のための日本語版EQ5D-5Lを用いたQOLと重症度の関連の研究については、順天堂脳神経内科に外来通院あるいは入院中のパーキンソン病の患者を対象に、EQ-5D-5LとMDS-UPDRSを採取した。プライマリーエンドポイントは、EQ5D-5Lによる総得点とMDS-UPDRSの総得点のスピアマン順位相関係数とし、セカンダリーエンドポイントとして、EQ5D-5LとMDS-UPDRSのそれぞれサブ項目における点数間のスピアマン順位相関係数とし200名のリクルートを実施した。また、パーキンソン病に対する1次治療にドパミンアゴニストを用いる治療戦略の費用対効果分析モデルについては、以下の検討がさらに必要であることが明らかとなった。(1)レボドパの1日投与回数が6回以上になった患者のQOLは順天堂大学によるQOL調査の結果も参考にする必要がある。(2)1次治療にドパミンアゴニストを用いることでtime to レボドパ耐性化の延長が可能かどうかについては明確なエビデンスはない。(3)ドパミンアゴニストによる1次治療が推奨される年齢カットオフの根拠について検討する必要がある。(4)「レボドパ耐性化後」の状態で転倒・骨折、誤嚥性肺炎のリスクが高まると考える。(5)各状態のQOLは「ドパミンアゴニストによる治療」の状態と「レボドパによる治療」の状態におけるQOLの差はそれぞれ固有の有害事象によるものとして設定する必要がある。瘍性大腸炎の費用対効果分析のための日本語版EQ5D-5Lを用いたQOLと重症度の関連の研究については、インフリキシマブとプレドニゾロン点滴静注療法の費用対効果分析モデルを作成済である。新規治療としてIFXを、従来治療をプレドニゾロン点滴静注療法と設定した。
結論
平成30年度研究計画では、難治性疾患に対する医療経済評価を標準的分析手法である費用効用分析によって評価可能な治療戦略を分析対象とした。平成31年度はこれらの費用効用分析から得られた知見に基づき難治性疾患に対する医療経済評価手法を開発し、疾患横断的に展開可能な標準的方法を明らかにする。

公開日・更新日

公開日
2020-01-14
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201811072Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
25,000,000円
(2)補助金確定額
24,264,000円
差引額 [(1)-(2)]
736,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,389,958円
人件費・謝金 9,359,788円
旅費 1,554,121円
その他 4,500,726円
間接経費 3,460,000円
合計 24,264,593円

備考

備考
 潰瘍性大腸炎については、東邦大学医療センター佐倉病院にて研究倫理審査の申請準備を開始した。当初の研究計画では平成30年度内に審査を完了させ被験者のリクルートを開始する計画であったが、研究倫理審査申請に係る研究実施計画の検討に時間を要したことから、平成31年度より臨床研究のリクルートおよび解析を実施する計画へ変更することとしたため、被験者に関連する消耗品費や謝金が不要となったことから、500千円から0千円へ変更することとした。また、パーキンソン病については当初予算計上としていた消耗品費が当初計画より効率的に執行することができたことから、4,500千円から3,200千円へ変更することとした。いっぽうで慢性疼痛については「痛みセンター」を含む医療機関が負担する機会費用に関する調査を平成31年度計画を前倒しで開始した。しかしながら調査開始時期が年度途中であったため、一部の解析に限定したことから支出合計額に差異が生じた。研究内容に変更はないため本計画実施に支障はない。

公開日・更新日

公開日
2020-04-16
更新日
-