種々の症状を呈する難治性疾患における中枢神経感作の役割の解明とそれによる患者ケアの向上

文献情報

文献番号
201811071A
報告書区分
総括
研究課題名
種々の症状を呈する難治性疾患における中枢神経感作の役割の解明とそれによる患者ケアの向上
課題番号
H29-難治等(難)-一般-061
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
平田 幸一(獨協医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 井上 雄一(公益財団法人神経研究所 研究部)
  • 小橋 元(獨協医科大学 医学部)
  • 古和 久典(松江医療センター 統括診療部)
  • 佐伯 吉規(がん研有明病院 緩和治療科)
  • 竹島 多賀夫(富永病院 神経内科)
  • 西上 智彦(甲南女子大学 看護リハビリテーション学部)
  • 西原 真理(愛知医科大学 医学部)
  • 端詰 勝敬(東邦大学 医学部)
  • 福土 審(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 細井 昌子(九州大学病院 心療内科)
  • 森岡 周(畿央大学 健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
4,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
多くの国民が種々の症状を呈する慢性の難治疾患を抱えており,それが生活の質の低下を来す一因となっている一方,その症状には客観的指標が確立されていないため,それを抱える国民の多くは,周囲から理解を得られにくく,この対策が社会的課題となっている.
特に難治性の疼痛,例えば病態生理学的にある程度解明されている慢性の難治性片頭痛を例にあげれば,中枢神経系の感作状態とりわけ持続中枢感作と言われる状況に基因していると考えられる.それは疲労感,倦怠感など身体症状,めまいやしびれなどの神経症状,うつなどの精神症状を誘発している可能性がある.これらは結果として生活の質を大きく妨げ,登校拒否,離職や家庭生活を続行することが困難とし,本人の生活のみでなく社会の生産性を大きく損なう.
慢性の難治性片頭痛に限らず,線維筋痛症,慢性疲労症候群,化学物質過敏症,過敏性大腸症候群や重症レストレスレッグス症候群の病態の一部には,中枢神経感作がその一つとして関与していると考えられている.一方で,このような病態における中枢感作の役割やその関わりについての研究は進んでいるとはいい難い.広くこの問題を解明するにはその領域内の疾病あるいは疾病群に関する,単なる疫学研究やレジストリ作成等によらない研究が必要である.つまりこのような症状を呈する患者の病態は単一の領域別基盤研究分野の研究班ではカバーできないような,種々の分野にまたがる疾病群に属すると考えられる.これらのことに鑑み本研究では,多くの関連学会や多職種が横断的に連携し中枢神経感作が関与しうる疾患患者を広く対象として共通する症状等について,オールジャパン体制かつ国際的展開も視野に入れた幅広い視点からのデータの収集・分析をし,中枢感作がこれら多くの疾患の病態に一定の役割を担っている可能性を追求する.すなわち中枢感作とは何か,その本態にせまり慢性の難治疾患の基盤にこれが関与していることを追求する.この仮説が事実であればこれらの疾患に苛まれている患者のケアの向上が叶うはずであり,これこそがこの研究の目的であるといえる.
研究方法
本研究は,関連学会や多職種が連携した上でいわばオールジャパンの体制下に下記の計画・方法により実行された.そのためすべての施設での倫理委員会を通過した上での研究開始とした.
1)各班員の関連研究の進展(結果は後述)
2)各班員の関連研究の発表と社会への周知
今年度は下記の活動を行った.
開催日 平成30年11月24日
場所 東京ファッションタウン(TFT)ホール300(東京都江東区有明)
第36回日本神経治療学会にて「種々の症状を呈する難治性疾患における中枢神経感作の役割の解明とそれによる患者ケアの向上」に関するシンポジウムを開催した(本会シンポジウム12).
発表者:
西上/西原/細井/森岡
結果と考察
研究はほぼ順調に進行していると思われるが,特筆すべきは端詰が中枢神経感作には,運動機能や社会的機能が関与していることを示唆したことであり,まさにこれが本研究の大きな命題である患者ケアの向上に繋がると思われる.
第一線で活躍する医師や看護師,コメディカルに知らしめることは今後の患者ケアを行う上でひとつの重要な点であろう.
今後,多くの関連学会や多職種が横断的に連携し,まず,中枢神経感作を広く医師をはじめ関連学会で認知していただき,その後中枢神経感作が関与しうる疾患患者を広く対象として共通する症状等について,幅広い視点からのデータの収集・分析をし,中枢感作がこれら多くの疾患の病態に一定の役割を担っている可能性を啓発することは十分有用であり,意義あることと考えられた.
結論
中枢神経感作が種々の難治性疾患に関与していることは本年度の調査からも明らかであり,最終的には中枢神経感作が難治性疾患患者にどのような役割を担っているかを明らかにし,その病態が基盤となっている患者とそうでないものとの線引きし,医療資源の適正配分に繋げ,最終的に患者QOL 向上,ケアの向上に繋がることをめざすことは有意義であり,実際,本研究で中枢感作の発生,進展を少なくともくい止めることができることが判明したと結論した.

公開日・更新日

公開日
2019-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-09-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201811071Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,370,000円
(2)補助金確定額
6,255,000円
差引額 [(1)-(2)]
115,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,506,482円
人件費・謝金 221,975円
旅費 1,045,676円
その他 1,011,547円
間接経費 1,470,000円
合計 6,255,680円

備考

備考
甲南女子大にて返金生じているため 自己資金678円, その他 利息2円

公開日・更新日

公開日
2020-03-15
更新日
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