小児期遺伝性不整脈疾患の睡眠中突然死予防に関する研究

文献情報

文献番号
201811066A
報告書区分
総括
研究課題名
小児期遺伝性不整脈疾患の睡眠中突然死予防に関する研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-055
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
吉永 正夫(国立病院機構鹿児島医療センター 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 堀米 仁志(国立大学法人筑波大学 医学医療系小児科)
  • 大野 聖子(国立循環器病研究センター 分子生物学部 )
  • 住友 直方(埼玉医科大学 医学部)
  • 岩本 眞理(済生会横浜市東部病院 こどもセンター)
  • 野村 裕一(鹿児島市立病院 小児科)
  • 高橋 秀人(国立保健医療科学院)
  • 緒方 裕光(女子栄養大学 疫学・生物統計学研究室)
  • 清水 渉 (日本医科大学 大学院医学研究科)
  • 堀江 稔(滋賀医科大学 アジア疫学研究センター)
  • 野上 昭彦(国立大学法人筑波大学 医学医療系循環器内科)
  • 蒔田 直昌(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 相庭 武司(国立循環器病研究センター 先端不整脈探索医学研究部)
  • 宮本 恵宏(国立循環器病研究センター ゲノム医療支援部)
  • 牧山 武(京都大学 医学研究科)
  • 森田 宏(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 中野 由紀子(広島大学 大学院医歯薬保健学研究科)
  • 林 研至(金沢大学 附属病院検査部)
  • 岩崎 雄樹(日本医科大学 医学部)
  • 村田 広茂(日本医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
健常小児と遺伝性不整脈患児のホルタ心電図、睡眠中脳波検査を行い、心電図指標と自律神経機能、脳波・睡眠深度の解析から、遺伝性不整脈疾患の睡眠中症状出現予測因子を決定する。遺伝学的検査を含めた患児情報から睡眠中突然死予防のための治療的介入指針を作成する。思春期・成人期のQT延長症候群 (LQTS)、ブルガダ症候群、QT短縮症候群、カテコラミン誘発多形性心室頻拍のデータ収集、レジストリ作成を行い、各疾患における心イベント発生予防の指針を作成する。
研究方法
1.睡眠中QT間隔に与える睡眠深度、自律神経機能に関する研究:ホルタ型心電図、ポータブル型簡易脳波記録を行い、睡眠中のQT/RR間隔の自動解析、自律神経機能解析、睡眠深度の解析を行った。2.健常小児のQT時間の日内変動に関する研究:健常児96名のホルタ心電図から睡眠中、起床時、活動期(午前・午後・夜)のQT/RR関係を解析した。3.胎児期に発症する遺伝性不整脈の経母体治療に関する研究:胎児診断されたLQTS16症例の臨床的特徴、経母体薬物療法とその効果、予後について後方視的に検討した。4.先天性QT延長症候群の原因遺伝子頻度に関する研究:160人のLQTS発端者について次世代シークエンサーを用いて、LQTS関連遺伝子を含む56遺伝子について解析を行った。5.小児期不整脈の予後に関する研究:小学1年生81,844名、中学1年生88,244名について学校心臓検診時に診断された心室期外収縮 (VPC) の予後を検討した。6.先天性QT延長症候群における遺伝子検査の有用性に関する研究:全国11施設1124例のLQTS患者を対象に遺伝子型、変異部位、年齢、性により致死性不整脈の発症の差異を解析した。7.若年発症のブルガダ症候群における臨床的・遺伝学的検討に関する研究:20才までにブルガダ型心電図type 1を示し、ブルガダ症候群と診断された23家系25症例について検討した。8.左室緻密化障害を伴うX染色体劣性の非症候性家族性心臓伝導障害「心筋エメリノパチー」に関する研究:家族性洞不全症候群 87人と家族性房室ブロック36人について457個または90個の心疾患関連遺伝子を次世代シークエンサーで解析した。9.遺伝性不整脈突然死リスク因子に関する研究:ブルガダ症候群患者471名において心電図指標、負荷試験などから特異的な因子を同定し、予後との関連を検討した。10. ブルガダ症候群のバイオマーカーをしてのmiRNAの有用性について:2,555miRNAを3-D geneで測定しブルガダ症候群とコントロール、ブルガダ症候群の中で心室細動の有無との関連を検討した。
結果と考察
1.健常児の夜間睡眠中のQT間隔は心拍数と強い正の相関があり、睡眠中の急激な心拍数増加がQT延長と関係していた。健常児と患児との比較により睡眠中QT延長の危険因子を解明する必要がある。2. QT時間の日内変動をみると、睡眠中の最高心拍数時が最も延長しており、睡眠中のQT時間に注目すべきと考えられた。3. 胎児期から重症不整脈を伴い発症するLQT2とLQT3が殆どであり、出生後、睡眠時に心室不整脈を発症して乳児突然死症候群の原因となる可能性が示唆された。4. 110名(69%)にLQTSの原因遺伝子を証明した。LQT1~3型変異陰性の場合、LQT8やLQT15の可能性を考慮する必要がある。5.小学1年生、中学1年生の0.16%、0.31%にVPCを認めた。3個以上のVPCがある場合は注意深い経過観察が重要である。6. LQT1型521例、LQT2型487例、LQT3型116例であった。致死性不整脈イベントを予測するためには遺伝子型だけでなく変異部位、年齢、性も考慮することの重要性が明らかとなった。7. SCN5A遺伝子variant発見率は64%と成人より有意に高く、10歳以下では成人でみられる診断症例の男女差はなかった。8.心筋エメリノパチーはX染色体劣性の遺伝形式を示し心筋緻密化障害を合併する非症候性の新規の進行性心房伝導障害であることを証明した。9.QRS棘波、T波頂点-終末部間隔延長、早期再分極、薬剤による心室不整脈により、心室細動発生リスクの高い患者の同定が可能であった。10.ブルガダ症候群のバイオマーカーとしてmiRNAは有用と考えられた。
結論
初年度、2年度の研究において、ホルタ心電図記録によるQT/RR時間解析・自律神経機能解析、睡眠中脳波による睡眠深度解析、遺伝学的検査により、遺伝性不整脈疾患の睡眠中突然死の危険因子、危険時刻の決定が可能と考えられる。思春期・成人期の遺伝性不整脈疾患においても、データ収集、レジストリ作成、遺伝学的検査により各疾患における心イベント発生予防の指針作成が可能と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2019-09-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-09-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201811066Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,300,000円
(2)補助金確定額
8,295,000円
差引額 [(1)-(2)]
5,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,797,022円
人件費・謝金 315,180円
旅費 2,124,520円
その他 758,968円
間接経費 1,300,000円
合計 8,295,690円

備考

備考
未使用額があったため

公開日・更新日

公開日
2020-03-15
更新日
-