先天代謝異常症の生涯にわたる診療支援を目指したガイドラインの作成・改訂および診療体制の整備に向けた調査研究

文献情報

文献番号
201811061A
報告書区分
総括
研究課題名
先天代謝異常症の生涯にわたる診療支援を目指したガイドラインの作成・改訂および診療体制の整備に向けた調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-051
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
中村 公俊(熊本大学大学院生命科学研究部 小児科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 窪田 満(国立成育医療研究センター 総合診療部)
  • 新宅 治夫(大阪市立大学大学院医学研究科 )
  • 呉 繁夫(東北大学大学院医学系研究科 小児病態学分野)
  • 伊藤 康(東京女子医科大学 小児科)
  • 長尾 雅悦(国立病院機構北海道医療センター 小児遺伝代謝センター)
  • 村山 圭(千葉県こども病院 代謝科)
  • 大竹 明(埼玉医科大大学 小児科)
  • 小林 弘典(島根大学医学部 小児科)
  • 杉江 秀夫(常葉大学 保健医療学部)
  • 深尾 敏幸(岐阜大学大学院医学系研究科 小児病態学)
  • 伊藤 哲哉(藤田医科大学医学部 小児科)
  • 児玉 浩子(帝京平成大学 健康メディカル学部)
  • 高橋 勉(秋田大学大学院医学系研究科 小児科学講座)
  • 奥山 虎之(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 臨床検査部)
  • 但馬 剛(国立研究開発法人国立成育医療研究センター 研究所マススクリーニング研究室)
  • 羽田 明(千葉大学大学院医学研究院環境健康科学講座 公衆衛生学)
  • 青天目 信(大阪大学大学院医学系研究科 小児科学)
  • 村上良子(大阪大学 微生物病研究所 籔本難病解明寄附研究部門)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
16,377,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
遺伝性難病である先天代謝異常症患者の生涯にわたる診療を支援するためのガイドラインの作成・改訂と、診療体制の整備をおこなうことを目的としている。そのために、診断および治療の実態を継続的に調査し、客観的診断基準や重症度分類を検証するとともに、診療ガイドラインとして標準化し出版・公開することとした。日本小児科学会、日本先天代謝異常学会、日本マススクリーニング学会などの関連委員会と連携し、(1)対象となる46疾病のガイドラインの改定または新規ガイドラインの作成、(2)移行期医療と成人期の診療体制の整備に向けた調査と診療モデルの作成、(3)患者登録制度の推進、患者会の支援および海外の登録制度との連携、(4)新生児代謝スクリーニングと特殊ミルク制度に関する課題整備と診断・治療体制への提言とガイドライン作成をおこなっている。他の研究組織との連携では、深尾班(診療ガイドラインと遺伝子診断)、奥山班(スクリーニング法の開発)、小林班(OTC欠損症とムコ多糖症)、村山班(ミトコンドリア病)、衞藤班(ライソゾーム病)、但馬班(新生児マススクリーニング)、小崎班(臨床ゲノム情報統合データベース)などと連携している。そして、先天代謝異常症に関わる専門医師、診断施設、学会などのオールジャパンとしての取り組みで、生涯にわたる診療支援が継続的に可能になる体制作りを目指している。
研究方法
平成30年度の研究では(1)対象疾病のガイドラインの改定と新規ガイドラインの作成、(2)移行期医療と成人期の診療体制の整備に向けた調査と診療モデルの作成、(3)患者登録制度の推進、患者会の支援および海外の登録制度との連携、(4)新生児代謝スクリーニングと特殊ミルク制度に関する課題整備と診断・治療体制への提言をおこなった。さらに患者会との合同で意見交換会を開催し、ガイドラインの役割、外来診療や成人期の診療について討議をおこなった。
結果と考察
対象となる26疾病(+2つの病態とミニコラム)のガイドラインは、予定どおり改訂作業が進み、日本先天代謝異常学会の審査を受けて令和元年7月に出版予定となった。移行期医療と成人期の診療体制の整備については、成人期の症例における課題の検討、尿素サイクル異常症、糖原病、ウイルソン病などでの移行期に関わる調査の準備、成人期の先天代謝異常症の診療についての書籍作成の準備などをおこなった。患者登録制度、患者会支援においては、先天代謝異常症の患者登録システムであるJaSMInの取り組みを継続し、121名の新たな患者登録がなされた。患者会の支援として、平成31年2月に第6回先天代謝異常症患者会フォーラムの開催を支援し、本研究の課題であるガイドライン作成や特殊ミルクに関わる問題などについて、患者会と直接の意見交換をおこなうことができた。新生児代謝スクリーニングに関しては、CPT2欠損症についてのデータをまとめ、平成30年度に全自治体に導入されたCPT2マススクリーニングに関わるエビデンスを示した。高ガラクトース血症を呈する新しい疾患としてガラクトース血症IV型を報告し、これがGALM(galactose mutarotase)遺伝子変異によることを示した。特殊ミルク制度における課題として、難病対策課からの依頼を受け、これまでに特殊ミルクが供給されていた99疾患を、特殊ミルクによる治療が必要と考えられる51疾患に整理し、ミルクが必要とされる年齢区分、必要量、治療の実際などについて疾患個票としてまとめて、難病対策課に提出した。本研究で取り上げる疾患の多くは全国の自治体で新規に推進されている新生児マススクリーニングの対象疾患になっている。移行期医療と成人期の診療体制の整備については、移行期に関わる調査の準備、書籍作成の準備などをおこなった。
結論
本研究班で作成したガイドラインは、指定難病の対象となる先天代謝異常症の診療の均てん化に資すると考えられる。移行期医療と成人期の診療体制の整備については、移行期に関わる調査を行いガイドラインに反映させる。また、書籍を作成し成人期先天代謝異常症の診療に利用する。患者登録制度、患者会支援においては新たな患者登録がなされ、患者会の支援として第6回先天代謝異常症患者会フォーラムを開催することができた。新生児代謝スクリーニングに関しては、CPT2欠損症についてのデータをまとめ、高ガラクトース血症を呈する新しい疾患としてガラクトース血症IV型を報告した。特殊ミルク制度における課題として、難病対策課からの依頼を受け、特殊ミルクによる治療が必要と考えられる58疾患について診療ガイドを作成した。これらを出版することで、さらに先天代謝異常症の診療の均てん化を図ることが可能になったと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2019-09-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2019-09-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201811061Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,539,000円
(2)補助金確定額
20,537,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,403,876円
人件費・謝金 1,718,557円
旅費 6,269,808円
その他 4,982,805円
間接経費 4,162,000円
合計 20,537,046円

備考

備考
2000円返還

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-