難治性聴覚障害に関する調査研究

文献情報

文献番号
201811041A
報告書区分
総括
研究課題名
難治性聴覚障害に関する調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-031
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松原 篤(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 佐藤 宏昭(岩手医科大学 医学部)
  • 野口 佳裕(信州大学 医学部)
  • 和田 哲郎(筑波大学 医学医療系)
  • 石川 浩太郎(国立障害者リハビリテーションセンター病院 第二診療部)
  • 池園 哲郎(埼玉医科大学 耳鼻咽喉科)
  • 武田 英彦(虎の門病院 耳鼻咽喉科)
  • 加我 君孝(東京医療センター 臨床研究センター)
  • 小川 郁(慶應義塾大学 医学部耳鼻咽喉科)
  • 山岨 達也(東京大学 医学部附属病院)
  • 佐野 肇(北里大学 医療衛生学部)
  • 岩崎 聡(信州大学 医学部)
  • 曽根 三千彦(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 村田 敏規(信州大学 学術研究院医学系)
  • 内藤 泰(神戸市立医療センター中央市民病院 耳鼻咽喉科)
  • 西崎 和則(岡山大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 山下 裕司(山口大学 大学院医学系研究科)
  • 羽藤 直人(愛媛大学 大学院医学系研究科)
  • 中川 尚志(九州大学 大学院医学研究院)
  • 東野 哲也(宮崎大学 医学部)
  • 鈴木 幹男(琉球大学 大学院医学研究科)
  • 小橋 元(獨協医科大学 医学部)
  • 中西 啓(浜松医科大学 医学部)
  • 茂木 英明(信州大学 学術研究院医学系)
  • 西尾 信哉(信州大学 医学部)
  • 将積 日出夫(富山大学 大学院医学薬学研究部)
  • 北原 糺(奈良県立医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
難聴は音声言語コミュニケーションの際に大きな障害となるため、日常生活や社会生活の質(QOL)の低下を引き起こし、長期に渡って生活面に支障を来たすため、診断法・治療法の開発が期待されている重要な疾患のひとつである。しかしながら、①聴覚障害という同一の臨床症状を示す疾患の中に原因の異なる多くの疾患が混在しており、②各疾患の患者数が少なく希少であるため、効果的な診断法および治療法は未だ確立されていない状況である。本研究では、指定難病である若年発症型両側性感音難聴、アッシャー症候群を中心に、All Japanの研究体制で調査研究を行う事により、希少な疾患の臨床実態および治療効果の把握を効率的に実施し、診断基準の改訂、重症度分類の改訂および科学的エビデンスに基づいた診療ガイドラインの策定を目的としている。
研究方法
平成30年度は、臨床情報データベース(症例登録レジストリ)を構築し、全国の拠点医療機関に属する分担・協力研究者による患者データの収集を行った。若年発症型両側性感音難聴、アッシャー症候群に関する患者データを収集し、臨床的所見(臨床像・随伴症状など)を基に、疾患毎の臨床的特徴を解析した。
結果と考察
若年発症型両側性感音難聴は、症例登録レジストリに547症例が登録された。症例の家系情報から、遺伝形式としては常染色体優性遺伝の症例が多く、認められた。原因遺伝子の解析結果では、現在の指定難病の要件7遺伝子が同定されている症例が98症例(22%)、しかし、それ以外の遺伝子が同定されている症例が52症例(12%)あった。また、現時点の遺伝子解析では原因遺伝子が判明していない症例が200症例と約半数(46%)存在した。難聴の重症度に関しては、中等度難聴までが73%を占めており、指定難病の重症度判定とされる70dB以上の高度、重度難聴は、140症例(27%)にとどまった。原因遺伝子の追加と難聴の重症度に関して、今後の検討が必要と思われた。
 アッシャー症候群は、114症例が症例登録レジストリに登録された。臨床症状から解析したサブタイプ分類では、タイプ1、2、3がそれぞれ同程度の頻度であった。原因遺伝子による解析では、タイプ1では従来の報告と同様の、MYO7A、CDH23遺伝子変異、タイプ2ではUSH2A遺伝子変異が多く同定された。しかし、臨床症状でも区別することが難しいタイプ3に関しては、明らかとなっている原因遺伝子も少ないため、少数にとどまった。
 また、これらに並行して、症例数の把握をより強力に推進するため、全国疫学調査を実施した。全国の調査対象診療科784施設に、一次調査表を送付し、592施設(75.5%)から回答を得た。一次調査結果に基づく患者推計では、若年発症型両側性感音難聴は全国に約720症例と推計され、人口10万人あたり0.57人と推定された。アッシャー症候群に関する患者推計では、約510症例と推計され、人口10万人あたり0.40人と推定された。現在、解析を進めている二次調査の結果から、より正確な罹患者数を把握できると思われた。
結論
全国疫学調査では、大規模な一次調査の結果、上記の2疾患の罹患者頻度が明らかになりつつある。現在、解析を進めている二次調査の結果から、より正確な罹患者数を把握できると思われた。レジストリに集積されたデータを基に詳細な検討が行われることで得られた成果は、発症メカニズムの解明や、今後の新たな治療法開発のための重要な基盤情報となることが示唆される。

公開日・更新日

公開日
2019-09-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201811041Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
25,100,000円
(2)補助金確定額
25,100,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,055,532円
人件費・謝金 4,616,509円
旅費 5,198,524円
その他 3,130,272円
間接経費 5,100,000円
合計 25,100,837円

備考

備考
自己資金837円

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-