特発性造血障害に関する調査研究

文献情報

文献番号
201811036A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性造血障害に関する調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-026
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
三谷 絹子(獨協医科大学 医学部 内科学(血液・腫瘍)講座)
研究分担者(所属機関)
  • 金倉 譲(大阪大学・大学院医学系研究科)
  • 中尾眞二(金沢大学・医薬保健研究域医学系)
  • 廣川 誠(秋田大学・大学院医学系研究科)
  • 赤司浩一(九州大学・大学院医学研究院)
  • 宮崎泰司(長崎大学・原爆後障害医療研究所)
  • 高折晃史(京都大学・医学研究科)
  • 黒川峰夫(東京大学・医学部附属病院)
  • 鈴木隆浩(北里大学・医学部)
  • 岡本真一郎(慶應義塾大学・医学部)
  • 神田善伸(自治医科大学・医学部)
  • 真部 淳(聖路加国際大学・聖路加国際病院)
  • 太田晶子(埼玉医科大学・医学部)
  • 東條有伸(東京大学医科学研究所 分子療法分野)
  • 巽浩一郎(千葉大学・大学院医学研究院)
  • 井上義一(独立行政法人 国立病院機構近畿中央呼吸器センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
10,503,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班では再生不良性貧血、赤芽球癆、溶血性貧血、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄線維症及びランゲルハンス細胞組織球症を対象として、疫学・病因・病態・診断・治療・予後などの幅広い領域にわたって全国規模の調査研究を推進する。そのために各疾患において症例登録システムを充実させ患者の実態把握を行い、本邦の実態に即した治療法の開発・最適化に努める。さらに、難治性疾患実用化研究事業(「オミクス解析技術と人工知能技術による難治性造血器疾患の病因解明と診断向上に貢献する解析基盤の開発」とも協力する。得られた知見は、診断基準の策定や「診療の参照ガイド」の改訂作業を通じて、広く臨床の場で利用できるようにする。
研究方法
再生不良性貧血:再生不良性貧血を始めとする骨髄不全を対象として、免疫病態の存在を最も強く示唆するHLAクラスIアレル欠失血球(HLA-LLs)を検出する全国的な観察研究を実施した。 赤芽球癆:後天性慢性赤芽球癆の予後改善を目的として、前向き観察研究を実施した。 溶血性貧血:発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)におけるエクリズマブ不応例の C5遺伝子解析結果をまとめ、最適な管理を検討した。MDS:再生不良性貧血とMDSの臨床像と治療成績の把握を目的とした前方視的症例登録・追跡調査研究とセントラルレビューを継続した。 骨髄線維症:前向き観察研究を継続した。ランゲルハンス細胞組織球症:小児領域及び成人領域の研究者の合同会議を開催し、LCHの診療ガイドラインの策定、レジストリ構築、患者家族への公開講座開催の可能性について検討した。
結果と考察
再生不良性貧血:HLA-Aアレル欠失血球、6pLOH、HLAクラスIアレルの機能喪失型変異のいずれかを認める例は、35例(26.2%)であった。この陽性例のうち、8例はPNH型血球が陰性であった。赤芽球癆:免疫抑制薬の初回寛解導入療法奏効率(完全寛解及び部分寛解)は、プレドニゾロン8/9(89%)、シクロスポリン43/51(84%)、シクロホスファミド2/2(100%)であった。全生存期間中央値は特発性211ヵ月、続発性は中央値に達せず、両群で有意差はみられなかった。22例の死亡が確認された。 溶血性貧血:英国、韓国、アルゼンチン、オランダ、イスラエルの エクリズマブ不応例の C5遺伝子解析結果をまとめた。不応例でC5遺伝子多型が観察された場合には、エクリズマブの中止が可能であると考えられた。MDS:平成30年末までの登録症例数は410例で、このうち骨髄芽球が5 %未満の症例については末梢血標本および骨髄標本のセントラルレビューを行った。また、登録された症例について毎年追跡調査を実施している。今回は、骨髄芽球が5%未満で、中央診断がMDSあるいはMDS/MPNの患者について、診断時の血清フェリチン値210 ng/mL、網赤血球数4万/μL未満、MCV 102 fL未満は予後不良因子であることが明らかになった。 骨髄線維症:17年間で782例の臨床情報を集積した。生存期間の中央値は4.0年で、3年生存率は59%である。主な死因は、感染症、白血病への移行であった。国際的な予後スコアリングシステムであるDIPSS-Plus (Dynamic International Prognostic Scoring System for PMF-Plus)は、わが国の症例においても予後不良群の抽出が可能で、予後指標として有用であった。ランゲルハンス細胞組織球症:全国調査の準備を行った。
結論
再生不良性貧血:免疫病態の存在が確認された。 赤芽球癆:症例調査票の回収を継続し、生存例については予後調査を行う予定である。溶血性貧血:PNHのエクリズマブ不応例に対する管理基準が提案された。 MDS:本年度は、低リスクMDSの予後因子が同定された。本研究で構築されているデータベースには、セントラルレビューにより診断が担保されている多くの症例の登録時データと、追跡調査データが蓄積されている。今後、さらなる症例登録と追跡調査によって本邦における再生不良性貧血およびMDSの特徴を分析し、これに基づいた診療指針を作成し公開していくことが重要であると考えられる。 骨髄線維症:わが国の原発性骨髄線維症780例の臨床情報を集積した。国際予後スコアリングシステムのDIPSS-Plusは、わが国の原発性骨髄線維症の予後予測に有用である。ランゲルハンス細胞組織球症:全国調査を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2019-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-09-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201811036Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
12,303,000円
(2)補助金確定額
10,673,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,630,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,824,644円
人件費・謝金 232,583円
旅費 2,178,739円
その他 2,637,599円
間接経費 1,800,000円
合計 10,673,565円

備考

備考
2回の班会議総会にかかる費用が、当初見積もりより低めに抑えられた為。

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-