神経皮膚症候群に関する診療科横断的な診療体制の確立

文献情報

文献番号
201811031A
報告書区分
総括
研究課題名
神経皮膚症候群に関する診療科横断的な診療体制の確立
課題番号
H29-難治等(難)-一般-021
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
錦織 千佳子(国立大学法人神戸大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 太田 有史(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 古村 南夫(福岡歯科大学 口腔歯学部)
  • 吉田 雄一(鳥取大学 医学部)
  • 松尾 宗明(佐賀大学 医学部)
  • 舟崎 裕記(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 今福 信一(福岡大学 医学部)
  • 小野 竜輔(神戸大学 大学院医学研究科)
  • 齋藤 清(福島県立医科大学 医学部)
  • 水口 雅(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 金田 眞理(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 須賀 万智(東京慈恵会医科大学 医学部)
  • 森脇 真一(大阪医科大学 医学部)
  • 林 雅晴(淑徳大学 看護栄養学部)
  • 上田 健博(神戸大学 医学部附属病院 )
  • 中野 英司(国立がん研究センター 皮膚腫瘍科)
  • 中野 創(弘前大学 大学院医学研究科)
  • 竹谷 茂(京都大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
19,200,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替 倉持朗(平成30年4月1日~平成30年8月31日)→小野竜輔(平成30年9月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
神経線維腫症1型(NF1),神経線維腫症2型(NF2),結節性硬化症(TSC),色素性乾皮症(XP) およびポルフィリン症はいずれも多臓器に病変がおよび、診療科横断的なアプローチが必要となる.現時点で根治療法はなく,全国的な診療体制を確立させる必要がある.
NF1:診療科横断的な患者全体像の把握を目的として、患者の診療実態を調査し,レジストリを進め、個々の症状について最適な治療法を検討して発信していく.
NF2:これまで「時期を逸しないように治療する」治療指針を啓発してきたが,NF2の治療を積極的に行っている施設は少ないため,全国の治療体制について調査し, NF2患者が全国どこでも専門病院を受診できるようにする.ベバシズマブ治療の医師主導治験を進める.
TSC:臨床症状の多様性,治療革新に対応しTSC全般に関するガイドラインとともに,臓器特異性が高い疾患の診療ガイドラインの策定も進める必要があると考え,両者の策定を進めた.
XP:疫学班と共同して,皮膚科,脳神経内科,小児神経科の3科合同での全国疫学調査を行うとともに、患者の遺伝子症状相関についての研究を進めた.
ポルフィリン症:症状に多様性があるので,患者の病因分子の特定と酵素活性の変動および遺伝子変異と症状との関係を総合的に診断し,疾患の実態の解析を進めた.
研究方法
NF1:(1)臨床調査個人票の2008年度の新規申請患者と2009~2012の更新患者データを悪化事例に着目して分析した.(2)2001~2014年の臨床個人調査票のstage 3以上の3,506名を解析した.(3)2007年~2017年に切除した皮膚の神経線維腫(cNF),結節型NF(pNF),瀰漫性NF(dNF)患者を対象に患者背景,医療費について解析した.(4)20歳未満のNF1患者12名のpNFを経時的に画像解析した. (5)dNFの周術期の出血対策について診療録から検討した.
NF2:全国867の脳神経外科基幹施設にNF2治療実績等について調査を行なった. bevacizumabの医師主導治験についてPMDAの対面助言を受け,AMEDの研究費を獲得して研究協力施設とも連携して実施に向け準備を進めた.本治験では60例のNF2患者を対象として二重盲検無作為化プラセボ対照試験を行う.
TSC:総合的ガイドライン「結節性硬化症の診断基準および治療ガイドライン」改訂版の内容を普及させつつ,個別病変・症状に関する臓器別ガイドラインとして、腎血管筋脂肪腫,上衣下巨細胞性星細胞腫,てんかんの3つの診療ガイドラインの策定を進めた.
XPについては、疫学班と共同して,皮膚科,脳神経内科,小児神経科の3科合同での全国疫学調査を行った.
ポルフィリン症:ガイドライン改定や患者の手引き作製の準備に備えて、患者の診断と診療を通して実態を調査した.
結果と考察
NF1:臨床個人調査票の調査から新規申請時に0~19歳,特にステージ3または4の患者で悪化事例の発生率が高かった.cNF, dNF手術費用の有意差はなかったが,入院総費用では有意差があり(p < 0.05),それは入院日数と有意な相関を示した.ガイドライン2018に則ってNF1のレジストリを行った.
NF2:アンケート調査の結果は、337施設(39%)から回答を得,手術治療の方針について積極的(17)あるいは,比較的積極的(34)に行っているのは51施設(15%)であった.それら施設を含む52施設をNF2治療の専門病院として選定し公表した.患者会での説明を通じて最適な治療指針の普及に努め、全国のNF2の治療が可能な病院にとして公表した. bevacizumabの医師主導治験を進めている.
TSC:各学会における治療指針やガイドラインの骨子を組み込んだTSC全般に関するものと,個別の病変・症状に関するものとして,腎血管筋脂肪腫,上衣下巨細胞性星細胞腫,てんかんの3つの診療ガイドラインの策定を進めた.
XP:XP-A群69例、XP-V型32例,XP-D群19例を臨床的に検討した. XP-A 18例とコントロール35例で神経伝導検査を行い,下肢優位・感覚神経優位の軸索障害に矛盾しない末梢神経障害を認め,さらに5歳前後から経時的に進行する異を明らかにした.疫学班と共同して皮膚科,脳神経内科,小児神経科の3科合同での全国疫学調査を行ない,これ迄に掴めていなかった患者の存在が明らかとなった.
ポルフィリン症:ポルフィリン症23家系について遺伝子診断を行い,13家系で原因遺伝子を同定した.患者の診断と診療を通して実態を調査し, 診療ガイドラインの策定の準備を行った.
結論
本研究班では診療科横断的に研究を推進し,適切な診断と最適な治療を地域差なく,全国の患者に提供できる診療体制を構築するための基礎を築けた.

公開日・更新日

公開日
2019-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-09-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201811031Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
24,960,000円
(2)補助金確定額
24,960,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,790,810円
人件費・謝金 3,694,331円
旅費 2,622,004円
その他 4,092,858円
間接経費 5,760,000円
合計 24,960,003円

備考

備考
利息3円

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-