文献情報
文献番号
201811020A
報告書区分
総括
研究課題名
稀少てんかんに関する調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-010
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
井上 有史(独立行政法人国立病院機構静岡・てんかん神経医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
- 浜野晋一郎(埼玉県立小児医療センター神経科)
- 林 雅晴(淑徳大学看護栄養学部)
- 廣瀬伸一(福岡大学医学部)
- 本田涼子(独立行政法人国立病院機構 長崎医療センター小児科)
- 池田昭夫(京都大学医学研究科てんかん・運動異常生理学)
- 今井克美(独立行政法人国立病院機構 静岡・てんかん神経医療センター臨床研究部)
- 神 一敬(東北大学大学院医学系研究科てんかん学分野)
- 嘉田晃子(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター臨床研究企画管理部生物統計研究室)
- 柿田明美(新潟大学脳研究所)
- 加藤光広(昭和大学医学部)
- 川合謙介(自治医科大学医学部)
- 川上民裕(東北医科薬科大学医学部)
- 小林勝弘(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科)
- 松石豊次郎(久留米大学高次脳疾患研究所)
- 松尾 健(東京都立神経病院脳神経外科)
- 青天目 信(大阪大学医学系研究科)
- 岡本伸彦(大阪母子医療センター遺伝診療科、研究所)
- 伊藤 進(東京女子医科大学小児科)
- 奥村彰久(愛知医科大学医学部)
- 齋藤明子(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター臨床研究センター臨床研究企画管理部臨床疫学研究室)
- 白石秀明(北海道大学病院小児科)
- 白水洋史(独立行政法人国立病院機構西新潟中央病院脳神経外科)
- 齋藤貴志(国立精神・神経医療研究センター病院小児神経診療部)
- 菅野秀宣(順天堂大学脳神経外科)
- 高橋幸利(独立行政法人国立病院機構 静岡・てんかん神経医療センター臨床研究部)
- 山本 仁(聖マリアンナ医科大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
16,500,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動
研究分担者 川上民裕
聖マリアンナ医科大学医学部(平成30年4月1日~30年9月30日)→ 東北医科薬科大学医学部(平成30年10月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
てんかんの20-30%は難治に経過し、早期発症の稀少な症候群あるいは原因疾患によるものが多い。このため発病機構の究明とともに、発達や自立、環境への配慮、医療の移行を含む地域での適切なケアシステムが必要である。本研究は、稀少てんかんのレジストリを全国区で構築し、他のレジストリと連携しつつ、22の指定難病および類縁疾患について診断基準、重症度分類、診療ガイドラインの改訂・策定を学会等と協力して行い、他研究事業および他研究班と連携しながら研究基盤の整備に協力し、さらに、移行医療が円滑にすすみ、地域で安心して生活し、就学・就労できる環境を医療面から長期的にサポートできるシステム作りに貢献する。教育・啓発活動を学会等の関連機関や患者団体と連携して行い、また難病情報センター等と協力して情報提供につとめ、地域における難病ケアに協力する。
研究方法
初年度は、てんかんが主症状である22の担当指定難病(132, 135, 136, 137, 138, 140, 141, 142, 143, 144, 145, 146, 147, 148, 149, 150, 151, 152, 154, 155, 157, 309)の診断基準、診療ガイドラインの検証とともに、レジストリ疾患登録を行い、また類縁難病や難病医療ケア体制の実態を把握するための調査(難病制度の利用状況と重症度の評価)を行った。さらに死因のレジストリ、病理および遺伝子変異のデータベースを構築した。本年度は疾患登録の継続及び初年度に構築したレジストリの入力を行うとともに、初年度の調査結果をもとに指定難病の診断基準、重症度分類、診療ガイドラインの見直しを行い、さらに類縁難病の疾患概念の確立、指定難病普及のための検討および実践を行った。
結果と考察
担当指定難病の疾患概要、診断基準、重症度分類、臨床調査個人票、運用状況・利用状況を検証した。現時点での修正を行い、また初年度の調査結果をもとに併存症の影響を考慮した重症度分類改訂を提案した。ドラベ症候群患者では、成人例が過少診断されていること、発作は思春期に減少するも知的障害は重度になること、発作悪化につながる薬剤の処方がいまなお多いことがわかった。難病候補として8疾患をとりあげ、今後、学会等と協力して疾患概要・診断基準等を確立していく。なお難病制度の啓発活動は積極的に行った。
疾患レジストリでは横断的研究を継続し、現在までに2288症例を蓄積した。13ヶ月間に登録された新規発症例/診断移行例(40症例)について2年間の経過を前方視的に観察した縦断研究の結果を解析したところ、発作の改善および全般改善度はそれぞれ52%、55%、悪化は12%、5%であり、知的発達正常は20%にとどまり、半数で悪化が認められた。自閉症の合併は35%、異常神経所見は63%でみられ、1/3が寝たきりとなっていた。ウエスト症候群のみについてみると知的発達の遅滞がより顕著であり、医療・福祉的対策が望まれる結果であった。
成人期へシームレスに移行できるよう,情報の周知および地域難病ケアシステムの構築を推進した。ツールとして、受診時診療フォーマットおよび転医プログラムのフローチャートを作成した。主体的・積極的に日常生活や社会生活を送ることをサポートするために、患児および家族のてんかん学習プログラムfamosesの実践を開始した。また、難病患児を有することの家族生活への影響も調査した。てんかんが重度であるほど就園率が低くなり、また、入園に際して一定の条件や制限が多かった。さらに母親が父親よりも就業への影響を受けやすい状況が明らかとなった。
初年度に構想した死因研究のレジストリの登録を開始した。また手術標本の病理中央診断のシステムを開始した。さらに、遺伝子変異データベースにデータを蓄積し、ドラベ症候群等の遺伝的背景を明らかにできるようにした。AMED他班との共同研究で治験対照例の登録を開始した。
疾患レジストリでは横断的研究を継続し、現在までに2288症例を蓄積した。13ヶ月間に登録された新規発症例/診断移行例(40症例)について2年間の経過を前方視的に観察した縦断研究の結果を解析したところ、発作の改善および全般改善度はそれぞれ52%、55%、悪化は12%、5%であり、知的発達正常は20%にとどまり、半数で悪化が認められた。自閉症の合併は35%、異常神経所見は63%でみられ、1/3が寝たきりとなっていた。ウエスト症候群のみについてみると知的発達の遅滞がより顕著であり、医療・福祉的対策が望まれる結果であった。
成人期へシームレスに移行できるよう,情報の周知および地域難病ケアシステムの構築を推進した。ツールとして、受診時診療フォーマットおよび転医プログラムのフローチャートを作成した。主体的・積極的に日常生活や社会生活を送ることをサポートするために、患児および家族のてんかん学習プログラムfamosesの実践を開始した。また、難病患児を有することの家族生活への影響も調査した。てんかんが重度であるほど就園率が低くなり、また、入園に際して一定の条件や制限が多かった。さらに母親が父親よりも就業への影響を受けやすい状況が明らかとなった。
初年度に構想した死因研究のレジストリの登録を開始した。また手術標本の病理中央診断のシステムを開始した。さらに、遺伝子変異データベースにデータを蓄積し、ドラベ症候群等の遺伝的背景を明らかにできるようにした。AMED他班との共同研究で治験対照例の登録を開始した。
結論
担当指定難病の診断基準、疾患概要に若干の修正を行い、生活に支障する併存症があるにもかかわらず重症度基準からはずれる症例があることから重症度分類を修正した。成人期への診療移行の際にシームレスに指定難病に移行できるよう,情報の周知および地域難病ケアシステムの構築を推進した。また、難病患児を有することの家族生活への影響も調査した。指定難病の教育・啓発活動の必要性を考察し、実際に新たなプログラムを導入して積極的に教育を行った。疾患レジストリを継続し、死因研究、病理中央診断、遺伝子変異データベースにデータを蓄積した。さらに他研究班との連携研究を行った。
公開日・更新日
公開日
2019-09-02
更新日
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