文献情報
文献番号
201811017A
報告書区分
総括
研究課題名
ワーデンブルグ症候群の診断基準および重症度分類策定に関する調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-007
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
宇佐美 真一(国立大学法人信州大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 茂木 英明(国立大学法人信州大学 医学部 )
- 西尾 信哉(国立大学法人信州大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
1,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ワーデンブルグ症候群は1951年にWaardenburgが初めて報告した疾患であり、常染色体優性遺伝形式をとる症候群性難聴の一つである。聴覚障害および色素異常症を呈することが知られており、毛髪、肌、虹彩などの全身の色素異常、部分白子症や、先天性感音難聴、眼角離解、精神運動発達遅滞、Hirshspring病などを呈することが特徴である。常染色体優性遺伝形式をとる症候群性難聴の内では最も頻度の高い疾患の一つであり、難聴児童の2~4%に見られると言われ、本邦では約5万人に1人の発症頻度であると考えられているが、我が国における実態は未だ不明確であり、正確な実態把握が必要な状況である。ワーデンブルグ症候群は、その臨床像から4つのタイプに分かれる。WS1型では内眼角離解と、突出した鼻根(鼻根部過形成)が見られ、WS2型はWS1型で内眼角離解・鼻根部過形成が無いものを指す。WS3型は眼角離解と上肢の奇形を伴う。WS4型はWaardenburg-Shah syndromeとしても知られており、Hirschsprung病を合併する。現在までに6種類の原因遺伝子(PAX3、MITF、SNAI2、EDNRB、EDN3、SOX10)が報告されており遺伝子型と表現型の相関があることが知られている。このように大まかな症状の分類に関しては明らかになってきているものの、ワーデンブルグ症候群に伴う難聴を含め表現型にバリエーションが大きい疾患であるため、その実態は必ずしも明確となっていない。今年度は、前年度まで行ってきたワーデンブルグ症候群データベースより得られたタイプ毎の臨床的特徴(臨床像・随伴症状など)と本疾患の原因とされている6種類の原因遺伝子の各変異との関連を詳細に検討することをとおして、①遺伝子診断を用いた新しい診断法の確立、②遺伝子診断に基づいた診断基準の確立することを目的とした。
研究方法
平成30年度は、データベースより得られた臨床的所見(臨床像・随伴症状など)を基に、タイプ毎の臨床的特徴を取りまとめるとともに、ワーデンブルグ症候群の原因とされている6種類の原因遺伝子の各変異と臨床的所見との関連を詳細に検討した結果、発端者を含む18家系中12例において原因となる遺伝子変異を特定するとともに、新規遺伝子変異を明らかにした。また、平成29年度に引き続き、新たなワーデンブルグ症候群の診断基準の項目を検討した。
結果と考察
ワーデンブルグ症候群の原因とされる6種類の遺伝子を標的とした次世代シーケンサーによるスクリーニングの結果、ワーデンブルグ症候群の原因となる遺伝子変異を特定した。見出された遺伝子変異には既知変異のものとともに、13の新規遺伝子変異(2例のCNV 1 copy loss を含む)を明らかにした。今回、ワーデンブルグ症候群症例の中から発見された新規遺伝子変異の中には、Copy Number Variation(1 copy loss)によるものもあり、既知である挿入や欠失だけでなく様々な遺伝子変異がワーデンブルグ症候群の原因となっていることが明らかになった。そのため、今後の遺伝子診断の際にはCNV解析も合わせて行うことの重要性が示唆された。ワーデンブルグ症候群は、同一の家系内で同じ原因遺伝子変異を共有していても各症状はいずれも不完全浸透であり、多様な臨床像を呈することが明らかとなっただけでなく、これまで知られていた原因となる遺伝子変異とのタイプ分類が一致しない例があった。したがって、遺伝子診断を行うことが非常に重要であることが示された。
結論
平成30年度は、ワーデンブルグ症候群の原因とされる6種類の遺伝子において、ワーデンブルグ症候群の原因となる遺伝子変異を特定した。特定された遺伝子変異は既知のものとともに、13の新規遺伝子変異を明らかにするとともに、データベース(症例登録レジストリ)への登録を行った。データベースより得られた臨床的所見(臨床像・随伴症状など)、遺伝子変異を基に、タイプ毎の臨床的特徴を取りまとめ、適切な治療方針を示すことが可能であると期待される。また、診断基準(案)に新たに加えられた新規遺伝子変異は、本症例のより確実な診断に寄与すると考えられる。
公開日・更新日
公開日
2019-09-25
更新日
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