文献情報
文献番号
201811016A
報告書区分
総括
研究課題名
驚愕病の疫学、臨床的特徴、診断および治療指針に関する研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-006
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
竹谷 健(国立大学法人 島根大学 医学部 小児科学)
研究分担者(所属機関)
- 美根 潤(国立大学法人 島根大学医学部 医学部 小児科学)
- 山口 修平(国立大学法人 島根大学医学部 医学部 神経内科学)
- 宮岡 剛(国立大学法人 島根大学医学部 医学部 精神医学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
1,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、①医療従事者に本疾患の認知度を高めること、②迅速かつ正確な診断システムを確立すること、③治療および生活指導の質的向上、および ④患者のQOLおよび予後の改善である。さらに本研究の成果は、患者にとって不必要な検査や治療を受けることがなくなり、診断の遅れにともなうアクシデントを減らし、発症予防による医療費や社会福祉費の低減にも貢献することになる。
研究方法
1.診断基準の策定
我々が行った疫学調査および国内外の文献から驚愕病の診断基準(案)を作成して、関連学会へのパブリックコメントを行ったのち、関連学会からの承認を得た。
2.患者アンケート調査
驚愕病と診断した患者さんが通院する医療機関にアンケート調査を依頼して、その医療機関に患者さんが受診した時に、アンケート調査の説明をして頂き、同意を得た患者さんあるいはご家族から回答を得る方法をとった。
3.遺伝子検査
グリシン作動性神経伝達に関与する遺伝子である、GLRA1遺伝子、GLRB遺伝子、SLC6A5遺伝子、SLC6A9遺伝子、SLC32A1遺伝子の5つに対して、遺伝子変異を調べた。また、医療法改定に伴い、検査の精度を担保するための基盤整備を行った。
4.疾患レジストリの構築
これまで、我々が研究班で行なっていた疾患レジストリの方法、内容をもとに、個人情報保護法の問題をクリアして、かつwebシステムによる疾患レジストリを行うことが可能な難病プラットフォームへの移行を検討するために、難病プラットフォームと個別相談を行った。
我々が行った疫学調査および国内外の文献から驚愕病の診断基準(案)を作成して、関連学会へのパブリックコメントを行ったのち、関連学会からの承認を得た。
2.患者アンケート調査
驚愕病と診断した患者さんが通院する医療機関にアンケート調査を依頼して、その医療機関に患者さんが受診した時に、アンケート調査の説明をして頂き、同意を得た患者さんあるいはご家族から回答を得る方法をとった。
3.遺伝子検査
グリシン作動性神経伝達に関与する遺伝子である、GLRA1遺伝子、GLRB遺伝子、SLC6A5遺伝子、SLC6A9遺伝子、SLC32A1遺伝子の5つに対して、遺伝子変異を調べた。また、医療法改定に伴い、検査の精度を担保するための基盤整備を行った。
4.疾患レジストリの構築
これまで、我々が研究班で行なっていた疾患レジストリの方法、内容をもとに、個人情報保護法の問題をクリアして、かつwebシステムによる疾患レジストリを行うことが可能な難病プラットフォームへの移行を検討するために、難病プラットフォームと個別相談を行った。
結果と考察
1. 診断基準の策定
新生児期から、刺激による過度な驚愕反応と全身の筋硬直、およびNose tapping test陽性は全例に認める。しかし、乳幼児期以降は筋硬直は消失するため、驚愕反応が唯一の症状となる。驚愕反応をきたす鑑別診断が非常に多いこと、この疾患では血液検査、画像検査、生理学的検査の特異的な異常を認めないことから、他の疾患との鑑別が困難になるため、遺伝子検査が確定診断として重要であると思われた。しかし、この疾患の認知度が低いため驚愕反応を認める場合、この疾患を疑い遺伝子検査を行うことを念頭におく医療従事者が少ない可能性が示唆された。また、成人期になると不安神経症やアルコール依存症などの精神科的疾患に間違われることもあるため、成人期まで診断が確定していないことも想定される。したがって、さらなる啓発活動を行う必要があると思われた。
2. 患者アンケート調査
今回のアンケート調査で、新たな知見が明らかとなった。特に、常染色体優勢遺伝形式をとる場合、浸透率が100%でないこと、 医療従事者が疾患としていではなく「体質」や「性格」として判断することが少なくないこと、幼児期の臨床的特徴として、口を閉じてしまう反応がみられること、医師と患者さんで症状の改善度の判断の閾値が異なること、職場や教育現場での疾患を理解してもらえないことへの不安があることが明らかとなった。これらのことから、再度、診断基準を見直すこと、この疾患の症状が患者さんのADLやQOLに直結することが多いため患者さんの意見を十分に反映した治療や管理を行うこと、教育や就労に対してこの疾患の概要を理解してもらうツールを作成することが重要であると思われた。
3. 遺伝子検査
遺伝子変異を認めた4例中3例は、症状と経過および既存の病的変異を認めたことから、確定診断することができた。しかし、1例は新規の変異でかつ症状の把握が十分にできなかった。今後、新規の変異に対する機能解析を行う体制の整備が必要であると思われた。驚愕病は遺伝子検査が必須項目であるため、医療法改定に伴い、検査の精度を確保する基盤整備を行うことで、正確かつ安全に診療を行うことができる体制を整備できた。今後、外部精度管理の方法について、さらに検討を進める必要がある。
4. 疾患レジストリの構築
難病プラットフォームの疾患レジストリシステム(難病e-Catch)は個人情報保護法の問題点をクリアしてかつ登録する医師あるいは患者が記入しやすいwebシステムを採用しているため、驚愕病を含めた希少難病の臨床像の把握だけでなく、原因の究明や治療法の確立にとっても非常に有用であると思われた。しかし、難病班が永続的に続かないため、経年的な費用がかかるため、どのように予算を捻出するかを明らかにする必要がある。
新生児期から、刺激による過度な驚愕反応と全身の筋硬直、およびNose tapping test陽性は全例に認める。しかし、乳幼児期以降は筋硬直は消失するため、驚愕反応が唯一の症状となる。驚愕反応をきたす鑑別診断が非常に多いこと、この疾患では血液検査、画像検査、生理学的検査の特異的な異常を認めないことから、他の疾患との鑑別が困難になるため、遺伝子検査が確定診断として重要であると思われた。しかし、この疾患の認知度が低いため驚愕反応を認める場合、この疾患を疑い遺伝子検査を行うことを念頭におく医療従事者が少ない可能性が示唆された。また、成人期になると不安神経症やアルコール依存症などの精神科的疾患に間違われることもあるため、成人期まで診断が確定していないことも想定される。したがって、さらなる啓発活動を行う必要があると思われた。
2. 患者アンケート調査
今回のアンケート調査で、新たな知見が明らかとなった。特に、常染色体優勢遺伝形式をとる場合、浸透率が100%でないこと、 医療従事者が疾患としていではなく「体質」や「性格」として判断することが少なくないこと、幼児期の臨床的特徴として、口を閉じてしまう反応がみられること、医師と患者さんで症状の改善度の判断の閾値が異なること、職場や教育現場での疾患を理解してもらえないことへの不安があることが明らかとなった。これらのことから、再度、診断基準を見直すこと、この疾患の症状が患者さんのADLやQOLに直結することが多いため患者さんの意見を十分に反映した治療や管理を行うこと、教育や就労に対してこの疾患の概要を理解してもらうツールを作成することが重要であると思われた。
3. 遺伝子検査
遺伝子変異を認めた4例中3例は、症状と経過および既存の病的変異を認めたことから、確定診断することができた。しかし、1例は新規の変異でかつ症状の把握が十分にできなかった。今後、新規の変異に対する機能解析を行う体制の整備が必要であると思われた。驚愕病は遺伝子検査が必須項目であるため、医療法改定に伴い、検査の精度を確保する基盤整備を行うことで、正確かつ安全に診療を行うことができる体制を整備できた。今後、外部精度管理の方法について、さらに検討を進める必要がある。
4. 疾患レジストリの構築
難病プラットフォームの疾患レジストリシステム(難病e-Catch)は個人情報保護法の問題点をクリアしてかつ登録する医師あるいは患者が記入しやすいwebシステムを採用しているため、驚愕病を含めた希少難病の臨床像の把握だけでなく、原因の究明や治療法の確立にとっても非常に有用であると思われた。しかし、難病班が永続的に続かないため、経年的な費用がかかるため、どのように予算を捻出するかを明らかにする必要がある。
結論
今後、さらなる疾患の啓発、新規レジストリの構築、より正確な診断基準の改定、患者さんとその家族だけでなく、保育・教育・就労への支援の実装を行うことで、医療従事者が本疾患を認知し、迅速かつ正確に診断し、適切な治療および指導を行うことによって、患者さんが利益を享受できるように貢献したい。
公開日・更新日
公開日
2019-09-02
更新日
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