沖縄型神経原性筋萎縮症の介入研究基盤としての重症度分類作成

文献情報

文献番号
201811015A
報告書区分
総括
研究課題名
沖縄型神経原性筋萎縮症の介入研究基盤としての重症度分類作成
課題番号
H29-難治等(難)-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
諏訪園 秀吾(独立行政法人国立病院機構沖縄病院 脳・神経・筋疾患研究センター )
研究分担者(所属機関)
  • 高嶋 博(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科神経病学講座)
  • 中川 正法(京都府立医科大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
800,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
沖縄型神経原性筋萎縮症(HMSNOまたはHMSN-P)は筋萎縮性側索硬化症や脊髄性筋萎縮症やシャルコー・マリー・トゥース病に似た側面を持ち原因遺伝子と目されるものは報告されているが発病メカニズムや治療法については定まったものがない。診断基盤を整備し治療介入試験計画を立てるためには、何よりもまず、疾患の自然史を明らかにすることが重要であり、この過程で類似疾患との異同が明確になり、かつ、どのような点が臨床経過を改善するために最も問題となる点であるかが明確になることが期待される。昨年度の研究成果において臨床症状の自然史から前期(比較的早期)と進行期に分かれることが判明したので、今年度は客観的指標としての脊髄MRIの定量的評価方法の確立と治療的介入の試みを行うとともに、理論的治療開発を行うための基礎的研究を導入するために、iPS細胞作製の共同研究の開始や、治療薬効果の検討のためのモデル動物作成のための共同研究の開始を行うことに主たる目的をおいた。
研究方法
脊椎MRIが施行されたHMSN-P患者22例の頸胸髄の萎縮を視察にて検討した。ALS患者4例(発症7-25年)でも頸椎単純MRIを施行し比較評価した。萎縮の程度を評価するために、良質なMRIが得られたHMSN-P患者14例とALS患者4例についてC6で脊髄を囲む region of interest(ROI)をOsirix Lite version10.0.1を用いて作成し、左右の前方後方の4部位についてROIを円として近似した場合の曲率半径をそれぞれ推定。この推定値について、診断名を被験者間要因、左/右および前角/後角を被験者内要因とした3要因分散分析を行った。
結果と考察
HMSN-P患者22例の全例で 頸髄の前方・後方ともに扁平化し、著明な場合には直線化する萎縮を認めた。胸髄まで扁平化を認める症例もあった。扁平化の統計学的評価では、前後の要因のみ主効果が有意で(F13.181, p<0.01)、その他は交互作用を含めて有意とならなかった。これは扁平化についてALS とHMSN-Pとの間に今回の検討では差が見出せずほぼ同等で、両者とも前方(前角and/or 前索)の萎縮のほうが強い可能性を示唆する。
結論
沖縄型神経原性筋萎縮症(HMSN-P)の脊髄は前方・後方ともに萎縮している。

公開日・更新日

公開日
2019-09-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-09-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201811015B
報告書区分
総合
研究課題名
沖縄型神経原性筋萎縮症の介入研究基盤としての重症度分類作成
課題番号
H29-難治等(難)-一般-005
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
諏訪園 秀吾(独立行政法人国立病院機構沖縄病院 脳・神経・筋疾患研究センター )
研究分担者(所属機関)
  • 高嶋 博(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科神経病学講座)
  • 中川 正法(京都府立医科大学大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
①多数例の自然史を検討し既存疾患との類似点・相違点を探る。
②最も比較対象とされるべき筋萎縮性側索硬化症との比較においてMRI検査で検討できる脊髄萎縮の程度を検討する。
③HAL医療用下肢タイプの歩行への効果を検討する。
研究方法
①97例での診療録における後方視的検討による症状発症順序・進展経過の詳細な検討を行う。
②脊椎MRIが施行されたHMSN-P患者22例の頸胸髄の萎縮を視察にて検討しALS患者4例との比較検討も行った。萎縮の程度を評価するため、良質なMRIが得られたHMSN-P患者14例とALS患者4例について、C6で脊髄を囲む関心領域(ROI)を設定し、左右の前方後方の4部位についてROIを円として近似した場合の曲率半径をそれぞれ推定した。この推定値について、診断名を被験者間要因とし、左/右および前方/後方を被験者内要因とした3要因分散分析を行った。
③自力歩行可能でHAL医療用下肢タイプを装着可能な5例において2-4回/週の頻度で合計9回を目標としてHAL医療用下肢タイプを用いたリハビリを施行し歩行速度などを施行前後で比較評価した。
結果と考察
結果:
①50歳までは比較的均一な経過をたどるが、これ以降は症例により変動が大きい。
②前後の要因のみ主効果が有意で、その他は交互作用を含めて有意とならなかった。
③5例中4例で歩行速度はHAL医療用下肢タイプを用いたリハビリ前後で改善した。
考察:
①本研究により初めて多数例による本症の自然史が明らかとなった。神経変性を基盤とする他疾患にはあまりみられない早期経過の均一性は、単一遺伝子異常を原因とする作業仮説に矛盾しない。神経変性疾患において治療介入研究を計画する際に、本症がモデルとなりうる可能性が示唆された。
②脊髄の萎縮がALSとほぼ変わらないことが初めて示された。どの時期に萎縮が開始するかが今後問題となるが、治療介入でこれを食い止めることができるかに関する指標が得られたと言える。
③先進的治療により短期的にはある程度の改善が認められることが明らかにされた。
結論
①本症は50歳までは比較的均一な経過をたどり、単一遺伝子異常を原因とするこれまでの作業仮説に矛盾しないが、50歳以降は症例により変動が大きく、介入の余地がある。
②本症の脊髄はC6において、比較的進行した時期のALSとほぼ同等に萎縮している。
③HAL医療用下肢タイプは本症において一定の効果を示すが、具体的実施方法について今後の詳細な検討が必要である。

公開日・更新日

公開日
2019-09-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201811015C

収支報告書

文献番号
201811015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,000,000円
(2)補助金確定額
1,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 472,184円
人件費・謝金 105,000円
旅費 195,850円
その他 26,976円
間接経費 200,000円
合計 1,000,010円

備考

備考
銀行通帳管理上、利息10円が発生し、支出時に直接研究費その他に10円を含め支出したため。

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-