乾癬性関節炎の不可逆的関節破壊進行阻止のための早期発見と治療を目指した診療ガイドライン策定に関する研究

文献情報

文献番号
201811014A
報告書区分
総括
研究課題名
乾癬性関節炎の不可逆的関節破壊進行阻止のための早期発見と治療を目指した診療ガイドライン策定に関する研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
朝比奈 昭彦(東京慈恵会医科大学  医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中川 秀己(東京慈恵会医科大学・医学部)
  • 梅澤 慶紀(東京慈恵会医科大学・医学部)
  • 照井 正(日本大学・医学部)
  • 大槻 マミ太郎(自治医科大学・医学部)
  • 佐野 栄紀(高知大学・医学部)
  • 山本 俊幸(福島県立医科大学・医学部)
  • 加藤 則人(京都府立医科大学・大学院医学研究科皮膚科学)
  • 森田 明理(名古屋市立大学・大学院医学研究科)
  • 奥山 隆平(信州大学・医学部)
  • 亀田 秀人(東邦大学/医療センター大橋病院・医学部医学科 内科学講座膠原病学分野)
  • 岸本 暢将(聖路加国際大学・聖路加国際病院・アレルギー膠原病科)
  • 金子 敦史(国立病院機構 名古屋医療センター・統括診療部 整形外科)
  • 福田 国彦(東京慈恵会医科大学)
  • 長谷川 友紀(東邦大学・医学部医学科 社会医学講座医療政策・経営科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
1,545,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乾癬性関節炎(PsA)は,以前考えられていたよりも頻度が高く,診断や治療が遅れると,不可逆性の関節の変形や破壊によって患者QOLを損なうため,早期の対応が必要である。PsAの臨床症状は多彩で診断が難しく,診療のための基本的知識の普及や専門領域間の連携が必要である。本研究班の目的は,診療現場における課題を明確にすることと,PsAの早期発見および適切な治療のための診療ガイドラインを本邦の実情に合わせて策定することで,患者QOLを向上させることである。
研究方法
1. 各標榜医のPsA治療スタンスの意識調査:PsA診療の実態を把握し,医師間連携や診療現場の課題を知るため,日本皮膚科学会の代議員(皮膚科専門医)と日本リウマチ学会の評議員(リウマチ専門医)にアンケート調査を行った。学会を通じて電子メールで通知し,リンク先に構築したアンケートサイトからインターネット上で短時間に無記名で回答する方法をとった。
2. PsAガイドラインの作成:Mindsのガイドライン作成の手引き2017に準拠しつつ,臨床設問(Clinical Question; CQ)を作成したうえで,CQと総説の執筆を班員ならびに研究協力者で割り振り,文献を収集して執筆を進めた。国内の関節リウマチ診療ガイドラインの記載内容も参考にした。執筆の過程で,数回の班会議と頻回のメール審議を重ねた。完成したCQはエビデンスレベルと推奨度を決定し,海外の各種ガイドラインも確認しながら,国内の実情に合ったPsA診療ガイドラインを目指した。
結果と考察
1. 皮膚科専門医141名(455名中の31%),リウマチ専門医123名(1005名中の12%)から回答を得た。PsAと直ちに診断できなかった経験など,PsAの診断が容易でないことを確認した。皮膚科医,リウマチ医とも必要に応じて他科へ紹介ないし連携を行い,おおむね満足が得られていたが,意思疎通不足で連携に苦慮する場合もあり,医師や患者への啓発活動や診療体制の整備が必要と考える医師が多かった。専門領域によって主な処方薬の種類も異なり,各科間の連携を深め専門知識を生かすことが患者マネージメントに有意義と考えられた。
2. 関節症状に対する薬物療法につき,最近の製剤を除けばRCTに基づく客観的なエビデンスに乏しかった。また,以前のRCTは付着部炎や指炎,体軸関節炎に対する評価が不十分であった。製剤同士の直接比較もほとんどなく,治療に用いる製剤や治療戦略については,専門家の意見によるところが大きかった。今回のPsA診療ガイドラインは,こうした背景のもとで作成し,単なる治療のためのガイドラインではなく,総説を充実させることで診療の手引書としての性格を加味した。診療する際の手順の図示や,注意すべき鑑別診断を述べるなど,日常診療に役立つ最新の情報を盛り込んだ点に特色がある。I章では,ガイドライン作成の背景と目標,位置づけと特徴,免責事項を記した。II章では,疾患概念,疫学,発症メカニズム,臨床症状,CASPAR分類基準,皮膚・爪所見との関係,鑑別診断,重症度の評価,血液検査とバイオマーカー,併存症,リスク因子,患者QOL評価,スクリーニングのための質問票,予後,III章では,画像検査の方法および所見,IV章では,診断までの診療の流れ,治療目的と治療指針,本邦における治療の問題点,を記した。V章は32項目のCQで構成し,治療薬やその他の治療法に関するエビデンスの収集を行った。PsAの治療に関して,海外からも複数のPsAの治療ガイドラインが発表されているため,それらを参照しつつも,国内の事情に合わせた推奨を行った。生物学的製剤の実際の使用法に関するエビデンスを提示するなど,臨床現場の疑問に答えられるよう記載した。
結論
PsA診療の実態を把握し,医師間連携や診療現場の課題を知るため,皮膚科医とリウマチ医に共通のアンケートを施行し,その結果を公表した。各科間の連携を深め専門知識を生かすことが患者マネージメントに有意義である。また,本邦でPsA診療を円滑に行って標準化された治療ができるように,国内の実情に根差し,各専門領域の医師が活用できるガイドラインを策定した。今後,本邦のPsA診療がいっそう整備され,患者の早期発見と治療によるQOL向上につながることを期待する。

公開日・更新日

公開日
2019-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-09-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201811014B
報告書区分
総合
研究課題名
乾癬性関節炎の不可逆的関節破壊進行阻止のための早期発見と治療を目指した診療ガイドライン策定に関する研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-004
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
朝比奈 昭彦(東京慈恵会医科大学  医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 中川 秀己(東京慈恵会医科大学・医学部)
  • 梅澤 慶紀(東京慈恵会医科大学・医学部)
  • 照井 正(日本大学・医学部)
  • 大槻 マミ太郎(自治医科大学・医学部)
  • 佐野 栄紀(高知大学・医学部)
  • 山本 俊幸(福島県立医科大学・医学部)
  • 加藤 則人(京都府立医科大学・大学院医学研究科皮膚科学)
  • 森田 明理(名古屋市立大学・大学院医学研究科)
  • 奥山 隆平(信州大学・医学部)
  • 亀田 秀人(東邦大学/医療センター大橋病院・医学部医学科 内科学講座膠原病学分野)
  • 岸本 暢将(聖路加国際大学・聖路加国際病院・アレルギー膠原病科)
  • 金子 敦史(国立病院機構 名古屋医療センター・統括診療部 整形外科)
  • 福田 国彦(東京慈恵会医科大学)
  • 長谷川 友紀(東邦大学・医学部医学科 社会医学講座医療政策・経営科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乾癬性関節炎(PsA)は,以前考えられていたよりも頻度が高く,診断や治療が遅れると,不可逆性の関節の変形や破壊によって患者QOLを損なうため,早期の対応が必要である。PsAの臨床症状は多彩で診断が難しく,診療のための基本的知識の普及や専門領域間の連携が必要である。本研究班の目的は,診療現場における課題を明確にすることと,PsAの早期発見および適切な治療のための診療ガイドラインを本邦の実情に合わせて策定することで,患者QOLを向上させることである。
研究方法
1. 各標榜医のPsA治療スタンスの意識調査:PsA診療の実態を把握し,医師間連携や診療現場の課題を知るため,日本皮膚科学会の代議員(皮膚科専門医)と日本リウマチ学会の評議員(リウマチ専門医)にアンケート調査を行った。学会を通じて電子メールで通知し,リンク先に構築したアンケートサイトからインターネット上で短時間に無記名で回答する方法をとった。
2. PsAガイドラインの作成:臨床設問(Clinical Question; CQ)を作成したうえで,CQと総説の執筆を班員ならびに研究協力者で割り振り,文献を収集して執筆を進めた。執筆の過程で,数回の班会議と頻回のメール審議を重ねた。完成したCQはエビデンスレベルと推奨度を決定し,海外の各種ガイドラインも確認しながら,国内の実情に合ったPsA診療ガイドラインを目指した。
3. 分担研究:乾癬患者の疫学調査,患者登録カード作成,血清中の疾患活動性マーカー解析,PsA画像診断に関する研究を行った。
結果と考察
1.皮膚科医141名(31%),リウマチ医123名(12%)から回答を得た。皮膚科医,リウマチ医とも必要に応じて他科へ紹介ないし連携を行い,おおむね満足が得られていたが,意思疎通不足で連携に苦慮する場合もあり,医師や患者への啓発活動や診療体制の整備が必要と考える医師が多かった。専門領域によって主な処方薬の種類も異なり,各科間の連携を深め専門知識を生かすことが患者マネージメントに有意義と考えられた。
2.今回のPsA診療ガイドラインは,関節症状に対する薬物療法のエビデンスが少ない中,単なる治療のためのガイドラインではなく,総説を充実させることで診療の手引書としての性格を加味した。診療する際の手順の図示や,注意すべき鑑別診断を述べるなど,日常診療に役立つ最新の情報を盛り込んだ点に特色がある。I章では,ガイドライン作成の背景と目標,位置づけと特徴,免責事項を記した。II章では,疾患概念,疫学,発症メカニズム,臨床症状,CASPAR分類基準,皮膚・爪所見との関係,鑑別診断,重症度の評価,血液検査とバイオマーカー,併存症,リスク因子,患者QOL評価,スクリーニングのための質問票,予後,III章では,画像検査の方法および所見,IV章では,診断までの診療の流れ,治療目的と治療指針,本邦における治療の問題点,を記した。V章は32項目のCQで構成し,治療薬やその他の治療法に関するエビデンスの収集を行った。PsAの治療に関して,海外からも複数のPsAの治療ガイドラインが発表されているため,それらを参照しつつも,国内の事情に合わせた推奨を行った。生物学的製剤の実際の使用法に関するエビデンスを提示するなど,臨床現場の疑問に答えられるよう記載した。
3.初年度の分担研究で,軽症の乾癬患者が通院するクリニックまで調査すればPsAの割合が6%未満となることを示した。血清中の疾患活動性マーカーにつき,ロイシンリッチα-2 グリコプロテイン (LRG) が健常人より乾癬患者では有意に高値で疾患活動性と相関し,治療効果の予測に有用であることを示した。画像診断では,DE-CT iodine mapが単純X線写真で捉えられない付着部炎や滑膜炎などの炎症性変化を捉え,定量的評価の可能性も含めて治療効果判定に有用であることを報告した。また,PsA患者の関節症状のタイプや併存疾患,リスク因子,現行の治療法を記録する患者登録ケースカードを作成した。
結論
PsA診療の実態を把握し,医師間連携や診療現場の課題を知るため,皮膚科医とリウマチ医に共通のアンケートを施行し,その結果を公表した。各科間の連携を深め専門知識を生かすことが患者マネージメントに有意義である。また,国内の実情に根差し,各専門領域の医師が活用できるガイドラインを策定した。今後,本邦のPsA診療がいっそう整備され,患者の早期発見と治療によるQOL向上につながることを期待する。

公開日・更新日

公開日
2019-09-02
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-09-02
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201811014C

収支報告書

文献番号
201811014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,700,000円
(2)補助金確定額
1,689,000円
差引額 [(1)-(2)]
11,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,163,288円
人件費・謝金 0円
旅費 266,020円
その他 105,000円
間接経費 155,000円
合計 1,689,308円

備考

備考
2019年12月1日に登録。再確定のため2020年5月22日に再登録。

公開日・更新日

公開日
2020-03-15
更新日
2020-05-22