文献情報
文献番号
199800673A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機器を介した感染症の予防に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 幸弘(関東逓信病院)
研究分担者(所属機関)
- 小越和栄(新潟がんセンター新潟病院)
- 賀来満夫(聖マリアンナ医科大学)
- 大久保憲(NTT東海総合病院)
- 笹宏行(オリンパス)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高度の医療機器ほど人体に使用した後、次の症例に使用する際の洗浄や消毒はその機器の精度や構造を維持するため、徹底して行いにくい。これらの医療機器を介する感染症の実態を消化器内視鏡に例をとり、過去の報告例を検討し、有効な感染症予防対策を行うため必要にして十分な洗浄消毒方法を研究する。
研究方法
内視鏡検査を介して感染した報告例を可能な限り採集し、その実態をつかみ、現在のわが国での洗浄消毒の基準に照らして感染の予防が可能であるかを検討した。次に実際施行可能な症例間の洗浄消毒について内視鏡汚染実験を行い、その有効性を比較検討した。内視鏡汚染実験では、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa ATCC 27853)と非定型抗酸菌(Mycobacterium avium ATCC 25291)およびウイルスとしてHBV陽性e抗原陽性献血者血液を使用した。細菌は1ml当たり106個に調整し、その10mlを内視鏡先端の吸引口より吸引汚染させた。またHBV血液は生理食塩水で5倍に希釈しその50mlを同様内視鏡吸引口より吸引汚染させた。汚染後の洗浄は日本消化器内視鏡学会のガイドラインにそってブラッシングを用いた用手洗浄を行った。消毒剤としては3%グルタールアルデハイド液(以下GAと略)(丸石製薬社製)と強酸性水(pH 2.7、残留塩素濃度 50ppm 酸化還元電位 1100mV、シオノギα1000及びオリンパス社製強酸化水)で内視鏡消毒直前に機器より採取した。
結果と考察
1)殺菌曲線 菌株をおのおの1mlあたり、108CFUになるよう調整された滅菌水混入の菌液100μlを3%GAおよび強酸性水10mlに添加混和し、各時間毎に定量培養を行った結果、緑膿菌では30秒以内に3%GAと強酸性水でいずれも<2.0x101となり、以後10分まですべて同様の結果でGAと強酸性水はいずれも強い殺菌を持つことが確認された。ところが、非定型抗酸菌においては、GAと強酸性水とも抵抗性をしめし<2.0x101までに達する時間はGAでは5分、強酸性水では10分であった。。以上の結果から一般細菌では、GA、強酸性水とも殺菌効果に差はなく、非 定型抗酸菌ではGAが優れた効果を持つことが示されたが、10分では両者に差はないことが判明した。2)上部消化管内視鏡に対する緑膿菌汚染後の殺菌効果に関する検討 まず汚染させない段階での内視鏡より回収された検体はすべて菌は陰性であった。また洗浄液は毎回浸漬前に検体を取り菌の有無を調べたがGAと強酸性水いずれも陰性であった。用手洗浄後では、5本の内視鏡のうち1本に定量培養で1mlあたり40コロニーの菌を検出した。また増菌培養を行うと全ての内視鏡から菌が検出された。PCRでは、当然全例陽性であった。つぎにGAに5分浸漬した群では、5本中1本の内視鏡で菌が定量培養で60コロニー検出され、、増菌培養を行うとこの1本にのみ菌を検出した。またPCR法でも、この1本以外はすべて陰性であった。すなわち5分浸漬では一部に菌の残存する可能性がある事になる。この結果より、以後予定された大腸内視鏡の3%GA5分浸漬実験はとりやめた。一方10分のGA浸漬では、定量培養、増菌培養PCR法ともすべて菌は検出されなかった。強酸性水では、10秒間の浸漬と50mlの吸引であるが、すべての内視鏡で定量培養、増菌培養、PCR法とも菌は陰性であった。すなわち強酸性水の浸漬と吸引はGA10分浸漬と同等の消毒効果を得た。3)上部消化管内視鏡に対する非定型抗酸菌での検討結果 汚染前の内視鏡および浸漬する度にGAと強酸性水のプールから非定型抗酸菌を培養したが、全て陰性であった。非定型抗酸菌で汚染後、用手洗浄法のみでは定量培養では5本全てに陰性であったが増菌培養を行うと5本中3本に菌が陽性となった。またPCR法では、陽性の3本以外に陽性となるものはなかった。ついで非定型抗酸菌汚染後用手洗浄を行いGA10分間浸漬で消毒を行うとはすべての内視鏡とも非定型抗酸菌は陰性であった。さらにGAの替わりに強酸性水で消毒すると、定量培養はすべて陰性であったが、増菌培養で1本に陽性がみられ、PCR法でもこの1本が陽性であった。4)下部消化管内視鏡に対する緑膿菌汚染の結果 上部消化管と同様の手順で汚染実験を行った。
内視鏡が長い分、汚染液を等濃度で量を2倍とした。汚染前の内視鏡、及び各浸漬後の消毒容器内に残った消毒液からの菌はすべて陰性であった。用手洗浄後は定量培養で5本すべてが陰性であったが、増菌培養では 5本全部が培養陽性で、PCR法でも同様であった。3%GAでは、5本の内視鏡すべてが、定量、増菌いずれの培養で陰性PCR法でも陰性で菌の検出は全くなかった。強酸性水では定量培養では陰性であったが、増菌、PCR法で1例陽性であった。5)下部消化管内視鏡に対する非定型抗酸菌汚染実験の結果 緑膿菌と同様の手順で実験した。汚染前の内視鏡、および各浸漬後の消毒液プールからの菌は全て陰性であった。用手洗浄法のみの場合では、定量法ではいずれも陰性であったが、増菌培養では、5本中3本に菌陽性、PCR法では、この3本がいずれも陽性であった。一方3%GAでの浸漬10分では、定量、増菌、PCR法すべて陰性であった。また強酸性水でも同様全ての内視鏡で定量、増菌、PCR法とも陰性であった。6)HBVに関する検討
e抗原陽性血液200mlを得て生理食塩水にて1000mlに希釈しその50mlを内視鏡吸入口より吸引し、内視鏡を汚染させた。ついで、用手洗浄後、3%GA5分後、10分後および強酸性水10秒浸漬後50ml吸引後のHCV検出率を検討した。結果はいずれの洗浄後の検体も、HBVはPCR法では認められなかった。 考察 消毒法のゴールドスタンダードは2%GA30分浸漬であったが、これは臨床の場ではその日の終わりに行う消毒方法であり、症例間での消毒としては実現不可能なものであった。今回臨床現場で可能な限り短時間かつ必要十分な消毒方法を模索するためこのような検討をおこなった。緑膿菌の汚染実験では、水道での洗浄とブラッシングのみでは限界があることを明白にしめした。また3%GA5分の浸漬では、定量培養で陽性となるものが1本あり、増菌培養PCR法でも陽性であった。すなわち3%GAでは完全な殺菌効果はできない例があると考えられた。一方3%GA10分浸漬法では、完全な殺菌が得られ、臨床での患者間使用では10分浸漬が確実であると思われた。強酸性水の短時間殺菌効果を試すために実験を行ったが、緑膿菌については、10秒間の浸漬と50mlの吸引でGAと同等の効果を示した。しかし、大腸内視鏡の汚染実験では1本に増菌培養およびPCR法で菌の残存が認められた。上部消化管汚染実験では認められなかったため、内視鏡の長さの問題があるのかもしれない。吸引する強酸性水を2倍の100mlとしたが、200mlにすることで改善される考えられる。いずれにしても強酸性水の殺菌効果については明らかにしえたと思われる。非定型抗酸菌については、上部、下部ともにやはり、用手洗浄のみでは限界があることが証明された。3%GAでは、10分浸漬では十分に消毒効果があることが証明できた。また強酸性水では、上部消化管の1本で定量培養陰性、増菌培養、PCR法陽性であったが、残りの9本では、すべて陰性であり非定型抗酸菌でも十分の効果があるものと考えられた。HBVの汚染実験では、意外にも用手洗浄のみでもブラッシングを行うことでPCR法陰性の結果を得た。当然ながら3%GAおよび強酸性水でも陰性であった。日本の水道水は次亜塩素酸が少量含まれており、水道水のみの用手洗浄でも強酸性水と同様の洗浄効果があることは以外であった。DNAの安定性は比較的弱いためむしろRNAの方が環境の変化にはより強いことも想定できる。また今回の血液汚染濃度は生検での血液汚染に比較すれば十分高濃度であり、日本国内の水道水を使用していれば、HBVは通常の洗浄と消毒でも安全と考えられる。米国では、環境汚染とくに内視鏡スタッフのアレルギーが問題視されており、環境に影響の少ない強酸性水は内視鏡洗浄消毒に有力な方法となりうると考える。現在のところ、強酸性水は残留塩素濃度がその効果にもっとも影響を与えるものとされており、強酸性水の機能を規定した使用方法を守ることが重要である。また強酸性水は有機物が多量にあるとすぐにその効果が失われるため浸漬まえに十分な洗浄を行うことが必須の条件であることを再度強調したい。今後強酸性水をさまざまの角度から比較検討しより良い消毒効果をあげていく研究を進めねばならない。
内視鏡が長い分、汚染液を等濃度で量を2倍とした。汚染前の内視鏡、及び各浸漬後の消毒容器内に残った消毒液からの菌はすべて陰性であった。用手洗浄後は定量培養で5本すべてが陰性であったが、増菌培養では 5本全部が培養陽性で、PCR法でも同様であった。3%GAでは、5本の内視鏡すべてが、定量、増菌いずれの培養で陰性PCR法でも陰性で菌の検出は全くなかった。強酸性水では定量培養では陰性であったが、増菌、PCR法で1例陽性であった。5)下部消化管内視鏡に対する非定型抗酸菌汚染実験の結果 緑膿菌と同様の手順で実験した。汚染前の内視鏡、および各浸漬後の消毒液プールからの菌は全て陰性であった。用手洗浄法のみの場合では、定量法ではいずれも陰性であったが、増菌培養では、5本中3本に菌陽性、PCR法では、この3本がいずれも陽性であった。一方3%GAでの浸漬10分では、定量、増菌、PCR法すべて陰性であった。また強酸性水でも同様全ての内視鏡で定量、増菌、PCR法とも陰性であった。6)HBVに関する検討
e抗原陽性血液200mlを得て生理食塩水にて1000mlに希釈しその50mlを内視鏡吸入口より吸引し、内視鏡を汚染させた。ついで、用手洗浄後、3%GA5分後、10分後および強酸性水10秒浸漬後50ml吸引後のHCV検出率を検討した。結果はいずれの洗浄後の検体も、HBVはPCR法では認められなかった。 考察 消毒法のゴールドスタンダードは2%GA30分浸漬であったが、これは臨床の場ではその日の終わりに行う消毒方法であり、症例間での消毒としては実現不可能なものであった。今回臨床現場で可能な限り短時間かつ必要十分な消毒方法を模索するためこのような検討をおこなった。緑膿菌の汚染実験では、水道での洗浄とブラッシングのみでは限界があることを明白にしめした。また3%GA5分の浸漬では、定量培養で陽性となるものが1本あり、増菌培養PCR法でも陽性であった。すなわち3%GAでは完全な殺菌効果はできない例があると考えられた。一方3%GA10分浸漬法では、完全な殺菌が得られ、臨床での患者間使用では10分浸漬が確実であると思われた。強酸性水の短時間殺菌効果を試すために実験を行ったが、緑膿菌については、10秒間の浸漬と50mlの吸引でGAと同等の効果を示した。しかし、大腸内視鏡の汚染実験では1本に増菌培養およびPCR法で菌の残存が認められた。上部消化管汚染実験では認められなかったため、内視鏡の長さの問題があるのかもしれない。吸引する強酸性水を2倍の100mlとしたが、200mlにすることで改善される考えられる。いずれにしても強酸性水の殺菌効果については明らかにしえたと思われる。非定型抗酸菌については、上部、下部ともにやはり、用手洗浄のみでは限界があることが証明された。3%GAでは、10分浸漬では十分に消毒効果があることが証明できた。また強酸性水では、上部消化管の1本で定量培養陰性、増菌培養、PCR法陽性であったが、残りの9本では、すべて陰性であり非定型抗酸菌でも十分の効果があるものと考えられた。HBVの汚染実験では、意外にも用手洗浄のみでもブラッシングを行うことでPCR法陰性の結果を得た。当然ながら3%GAおよび強酸性水でも陰性であった。日本の水道水は次亜塩素酸が少量含まれており、水道水のみの用手洗浄でも強酸性水と同様の洗浄効果があることは以外であった。DNAの安定性は比較的弱いためむしろRNAの方が環境の変化にはより強いことも想定できる。また今回の血液汚染濃度は生検での血液汚染に比較すれば十分高濃度であり、日本国内の水道水を使用していれば、HBVは通常の洗浄と消毒でも安全と考えられる。米国では、環境汚染とくに内視鏡スタッフのアレルギーが問題視されており、環境に影響の少ない強酸性水は内視鏡洗浄消毒に有力な方法となりうると考える。現在のところ、強酸性水は残留塩素濃度がその効果にもっとも影響を与えるものとされており、強酸性水の機能を規定した使用方法を守ることが重要である。また強酸性水は有機物が多量にあるとすぐにその効果が失われるため浸漬まえに十分な洗浄を行うことが必須の条件であることを再度強調したい。今後強酸性水をさまざまの角度から比較検討しより良い消毒効果をあげていく研究を進めねばならない。
結論
患者間での洗浄を行う場合には、消化管内視鏡洗浄消毒には、十分な用手洗浄と3%GA10分または、強酸性水(残留塩素濃度50ppm,OER-1100mv、pH2.7)10秒浸漬50mlの吸引で、内視鏡の消毒を行うことにより十分な洗浄消毒効果を売ることが確認された。この作用は緑膿菌、非定型抗酸菌、B型肝炎ウイルスの汚染実験から確認された。
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