文献情報
文献番号
201811013A
報告書区分
総括
研究課題名
本邦における反復発作性運動失調症の実態把握調査研究
課題番号
H29-難治等(難)-一般-003
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 正紀(大阪大学大学院 医学系研究科 機能診断科学)
研究分担者(所属機関)
- 水澤 英洋(国立精神神経医療研究センター)
- 石川 欽也(東京医科歯科大学医学部附属病院 長寿・健康人生推進センター)
- 杉浦 嘉泰(国立病院機構福島病院)
- 久保田 智哉(大阪大学大学院 医学系研究科 機能診断科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
924,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
反復発作性運動失調症(episodic ataxia:EA)は、間欠的な運動失調を呈する希少疾患であり、根本的な治療法が存在しない難病である。主に国外の研究により、現在8つの病型が知られており、EA2型(EA2)が最多、EA1型が次に多いとされている。ともに常染色体優性遺伝の遺伝病であり、EA2はカルシウムチャネル、EA1はカリウムチャネル遺伝子に変異を持つ。本邦におけるEAについては、EA2の症例報告が散見されるものの、遺伝子診断確定例は数例にとどまり、各病型の有病率・自然歴など実態は不明である。失調に対してアセタゾラミドがEA2の50-75%で有効という報告もあり、正確な診断は重要である。本研究は、本邦におけるEAの実態を把握するとともに、神経内科医・小児神経科医の協力を得て、EA患者の診断・治療体制の基盤を作ることを目的とした。
研究方法
初年度の一次調査の結果、EA診療経験のある医療施設に対して、二次調査の協力を依頼し、文書で同意が取れた施設に対して記述式質問表(資料2)を郵送した。また、本邦における過去のEA症例について文献検索を行った。
二次調査の結果、得られた情報を元に、EAの診断に寄与すると考えられる特徴を抽出し、診断の手引き(資料3)、診断基準・重症度(資料4)を策定した。
(倫理面への配慮)
質問票を含めた研究計画について研究代表機関、研究共同機関での倫理委員会での審査・承認を得て、研究を遂行した。
二次調査の結果、得られた情報を元に、EAの診断に寄与すると考えられる特徴を抽出し、診断の手引き(資料3)、診断基準・重症度(資料4)を策定した。
(倫理面への配慮)
質問票を含めた研究計画について研究代表機関、研究共同機関での倫理委員会での審査・承認を得て、研究を遂行した。
結果と考察
EA経験施設22施設の中で、11施設より二次調査協力の同意を得て、より詳細な臨床情報の解析を行った。本調査で確認できた遺伝子確定例は、CACNA1A遺伝子に変異を持つEA2が14症例8家系、KCNA1遺伝子に変異をもつEA1が1家系3症例であった。
発作時の症状として、ふらつきが71.4%、構音障害が64.2%、回転性めまいが64.2%と高率であった。また、非発作時の症状・随伴症状としては、てんかん・熱性けいれん(既往を含む)が42.8%、精神発達遅滞や知能障害の家族歴を有するのが62.5%で高かった。一方、本調査の結果では、眼振・頭痛はそれぞれ28.6%とそれほど高い確率では認めなかった。検査所見などでは、徐波混入を主とする脳波異常が57.1%、画像検査による小脳萎縮が57.1%と高かった。治療に関しては、アセタゾラミドの有効例が71.4%と高かった。これらの情報を元に、診断の手引き、診断基準・重症度を策定した。EAとの診断が問題となる片頭痛とくに家族性片麻痺性片頭痛との鑑別点について、頭痛の専門家と会議を行い、鑑別点や問題点を整理した。結果、「反復発作性運動失調症 診断の手引き(第1版)」(資料3)および「反復発作性運動失調症の診断基準・重症度分類」(資料4)を作成した。
本邦において、EAは非常に希少な疾患であることが再認識された。遺伝子診断確定までされている症例は10家系に満たない。臨床症状も多彩であり、今後も臨床情報と遺伝子診断による確定診断をもとに、症例の集積が重要である。また、EA2とそのAllelic disorderにあたる家族性片麻痺性片頭痛1型(FHM1)との鑑別は、頭痛の前兆症状に注目し、鑑別を進めることが一助となるが、同一変異をもつ家系内でもEA2の表現型に近い患者とFHM1に近い表現型に近い患者が混在することも論文や今回の調査でも認めており、いかに効率よく遺伝子診断を行うかも、重要な課題であると考えられた。CACNA1A遺伝子自体が巨大な遺伝子であり、その遺伝子解析は技術的・時間的・経済的負担が大きい。現状での研究方針としては、個々の症例の臨床情報と遺伝子解析を丁寧に進めながら、患者の集積をすることが重要であるが、その過程で、今回策定した診断基準の妥当性・感度・特異度などを検証していく必要がある。将来的には、遺伝子診断ができない状況でも診断できる精度の高い診断基準策定を目指すことが重要である。保険外適応ではあるが、確定診断のついたEA症例に対して、アセタゾラミドを使用している例も多く、またその多くが奏功していた。中には、内服による予防効果は少ないが、発作時の点滴が奏功した症例も認められた。治療法が存在する疾患であることを重視し、EAの診療環境の改善・拡充を進めることは重要である。
発作時の症状として、ふらつきが71.4%、構音障害が64.2%、回転性めまいが64.2%と高率であった。また、非発作時の症状・随伴症状としては、てんかん・熱性けいれん(既往を含む)が42.8%、精神発達遅滞や知能障害の家族歴を有するのが62.5%で高かった。一方、本調査の結果では、眼振・頭痛はそれぞれ28.6%とそれほど高い確率では認めなかった。検査所見などでは、徐波混入を主とする脳波異常が57.1%、画像検査による小脳萎縮が57.1%と高かった。治療に関しては、アセタゾラミドの有効例が71.4%と高かった。これらの情報を元に、診断の手引き、診断基準・重症度を策定した。EAとの診断が問題となる片頭痛とくに家族性片麻痺性片頭痛との鑑別点について、頭痛の専門家と会議を行い、鑑別点や問題点を整理した。結果、「反復発作性運動失調症 診断の手引き(第1版)」(資料3)および「反復発作性運動失調症の診断基準・重症度分類」(資料4)を作成した。
本邦において、EAは非常に希少な疾患であることが再認識された。遺伝子診断確定までされている症例は10家系に満たない。臨床症状も多彩であり、今後も臨床情報と遺伝子診断による確定診断をもとに、症例の集積が重要である。また、EA2とそのAllelic disorderにあたる家族性片麻痺性片頭痛1型(FHM1)との鑑別は、頭痛の前兆症状に注目し、鑑別を進めることが一助となるが、同一変異をもつ家系内でもEA2の表現型に近い患者とFHM1に近い表現型に近い患者が混在することも論文や今回の調査でも認めており、いかに効率よく遺伝子診断を行うかも、重要な課題であると考えられた。CACNA1A遺伝子自体が巨大な遺伝子であり、その遺伝子解析は技術的・時間的・経済的負担が大きい。現状での研究方針としては、個々の症例の臨床情報と遺伝子解析を丁寧に進めながら、患者の集積をすることが重要であるが、その過程で、今回策定した診断基準の妥当性・感度・特異度などを検証していく必要がある。将来的には、遺伝子診断ができない状況でも診断できる精度の高い診断基準策定を目指すことが重要である。保険外適応ではあるが、確定診断のついたEA症例に対して、アセタゾラミドを使用している例も多く、またその多くが奏功していた。中には、内服による予防効果は少ないが、発作時の点滴が奏功した症例も認められた。治療法が存在する疾患であることを重視し、EAの診療環境の改善・拡充を進めることは重要である。
結論
本邦において、EAは非常に希少な疾患である。今後、診断基準の妥当性・感度・特異度を検証しながら、EAの診療体制の改善をすすめ、治療が適切に行われる体制づくりが重要である。
公開日・更新日
公開日
2019-09-02
更新日
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