文献情報
文献番号
201811008A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性後天性全身性無汗症の横断的発症因子、治療法、予後の追跡研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-024
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
横関 博雄(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
- 並木 剛(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 皮膚科学分野 )
- 佐藤 貴浩(防衛医科大学校 医学科 皮膚科学講座)
- 室田 浩之(国立大学法人長崎大学 大学院医歯薬総合研究科)
- 渡邉 大輔(愛知医科大学 医学部)
- 中里 良彦(埼玉医科大学 神経内科)
- 朝比奈 正人(医療法人同和会 神経研究所 )
- 岩瀬 敏(愛知医科大学 医学部 )
- 下村 裕(山口大学 大学院医学系研究科)
- 新関 寛徳(国立成育医療研究センター 感覚器形態外科部皮膚科)
- 吉田 和恵(国立成育医療研究センター 感覚器形態外科部皮膚科)
- 久松 理一(杏林大学 医学部 第三内科学)
- 芳賀 信彦(東京大学 医学部附属病院)
- 久保田 雅也(国立成育医療研究センター 神経内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
6,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究ではまず無汗外胚葉形成不全症の診断基準を作成し本邦における全国的な疫学調査を継続して施行し無汗外胚葉形成不全症の発症頻度を明らかにするとともに重症度基準、分類、生活指導を作成して適切な治療法の確立を目指す。また遺伝子解析により各病型を分類して頻度を把握する。さらに、アンケート用紙を用いたアレルギー疾患合併頻度の疫学調査を行い実態の解析。先天性無痛無汗症は遺伝性感覚・自律神経ニューロパチー(HSAN)に属する疾患で、このうち4型を先天性無痛無汗症と呼ばれておりすでに診断基準、遺伝子異常も解明されているが新たな疫学調査も必要である。一方、後天性の無汗症である特発性後天性全身性無汗症(AIGA)の診断基準、重症度基準、治療アルゴリズムを用いて本邦における全国的なアンケート用紙を用いた予後追跡調査を施行しAIGAの発症頻度、発症因子、悪化因子を明らかにするとともに重症度基準とQOLの相関関係、ステロイドパルス療法の有用性を検討して重症度基準、治療法を確立する。さらに、肥厚性皮膚骨膜症の診療ガイドラインの策定を行う。非特異性多発性小腸潰瘍症担当班と共同で同症における肥厚性皮膚骨膜症発症例の頻度を調査する。原発性局所多汗症のガイドラインの改正も行う。
研究方法
(1)AIGAの疫学調査、診療ガイドライン改訂
(2)無汗性外胚葉形成不全症の疫学調査、診療ガイドライン作成、アレルギー疾患合併の疫学解析
(3)先天性無痛無汗症の疫学調査、診療ガイドライン改正
(4)肥厚性皮膚骨膜症の診療ガイドライン策定、疫学調査
(2)無汗性外胚葉形成不全症の疫学調査、診療ガイドライン作成、アレルギー疾患合併の疫学解析
(3)先天性無痛無汗症の疫学調査、診療ガイドライン改正
(4)肥厚性皮膚骨膜症の診療ガイドライン策定、疫学調査
結果と考察
(1)特発性後天性全身性無汗症(AIGA)
・ステロイドパルス療法の有用性を検討して重症度基準、治療法の確立を目指した。発汗領域が20%以上改善した症例を有効症例としたとき、発症期間とステロイドパルス療法の有効率との関係は、発症から1年以内に受診し治療開始できた症例のうち、約9割の患者でパルスが有効であった。
・患者因子の検討として、汗腺形態変化を検討し、電顕による微細構造観察を追加した。
(2)無汗(低汗)性外胚葉形成不全症
・診療手引きを日本皮膚科学会に投稿印刷された(日皮会誌:128(2),163-167, 2018). 診断基準が訂正された。
(3)先天性無痛無汗症
・先天性無痛症および無痛無汗症に対する総合的な診療・ケアのための指針(第2版)を発行した。なお、レジストリに関しては作業が進んでいない。また、患者の検診会を開催した。
(4)肥厚性皮膚骨膜症
・クリニカルクエスチョンを作成し、システマティックレビューを追加し、論文掲載された。
・全国調査(二次)については、非特性異性多発性小腸潰瘍症患者の肥厚性皮膚骨膜症の合併頻度と実態を明らかにすることを目的としてアンケート調査を行った。
・ステロイドパルス療法の有用性を検討して重症度基準、治療法の確立を目指した。発汗領域が20%以上改善した症例を有効症例としたとき、発症期間とステロイドパルス療法の有効率との関係は、発症から1年以内に受診し治療開始できた症例のうち、約9割の患者でパルスが有効であった。
・患者因子の検討として、汗腺形態変化を検討し、電顕による微細構造観察を追加した。
(2)無汗(低汗)性外胚葉形成不全症
・診療手引きを日本皮膚科学会に投稿印刷された(日皮会誌:128(2),163-167, 2018). 診断基準が訂正された。
(3)先天性無痛無汗症
・先天性無痛症および無痛無汗症に対する総合的な診療・ケアのための指針(第2版)を発行した。なお、レジストリに関しては作業が進んでいない。また、患者の検診会を開催した。
(4)肥厚性皮膚骨膜症
・クリニカルクエスチョンを作成し、システマティックレビューを追加し、論文掲載された。
・全国調査(二次)については、非特性異性多発性小腸潰瘍症患者の肥厚性皮膚骨膜症の合併頻度と実態を明らかにすることを目的としてアンケート調査を行った。
結論
AIGAの重症度とDLQIは相関しており、重症者ほどQOLの障害が強かった。他の皮膚疾患との比較では、AIGA患者のQOLはアトピー性皮膚炎患者以上に障害されている可能性が考えられた。またAIGA患者は、うつ熱/コリン性蕁麻疹に伴う身体的な苦痛の他に、スポーツ活動や通勤通学や外出が制限されたりする点で、従来考えられていたよりも広範に日常生活に支障をきたしていることが明らかとなった。無汗性外胚葉形成不全症の診断、生活指導のガイドラインが策定されることによりうつ熱のため労働、勉学などが十分にできない状態を改善し適切に治療することにより勤勉、勤労意欲を高めことが可能となり日本の経済生産性も向上する。先天性無痛症の総合的な診療・ケアのための指針(第2版)が完成したことにより日常生活の指導などが十分になり患者のQOLが向上する。非特異性多発性小腸潰瘍症患者通院施設27施設に調査票を送付し、調査票63件中55件(87.3%)の回答を得た。患者の男女比は、おおよそ1:1.7、肥厚性皮膚骨膜症の3主徴全てを有する患者は9名(14.3%)であった。
公開日・更新日
公開日
2019-12-19
更新日
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