疾患予後と医療の質の改善を目的とした多領域横断的な難治性肺高血圧症症例登録研究

文献情報

文献番号
201811007A
報告書区分
総括
研究課題名
疾患予後と医療の質の改善を目的とした多領域横断的な難治性肺高血圧症症例登録研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-022
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
田村 雄一(国際医療福祉大学 医学部循環器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 徹(杏林大学 医学部 第2内科)
  • 巽 浩一郎(千葉大学 大学院医学研究院呼吸器内科学)
  • 田邉 信宏(千葉大学 大学院医学研究院呼吸器内科学)
  • 辻野 一三(北海道大学大学院 医学研究科内科学講座呼吸器内科学)
  • 渡邉 裕司(浜松医科大学)
  • 桑名 正隆(日本医科大学 大学院医学研究科アレルギー膠原病内科学分野)
  • 松原 広己(独立行政法人国立病院機構岡山医療センター 臨床研究部)
  • 八尾 厚史(東京大学 保健・健康推進本部)
  • 阿部 弘太郎(九州大学病院 循環器内科)
  • 宮田 裕章(慶應義塾大学 医学部医療政策・管理学教室)
  • 隈丸 拓(東京大学 大学院医学系研究科医療品質評価学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,815,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は田村班のシステムを引き継ぎ、平成28年度に領域横断的特性を持つ疾患である肺高血圧症(肺動脈性肺高血圧症・慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症・肺静脈閉塞症・SLE・強皮症・MCTD・特発性間質性肺炎・大動脈炎症候群などの多くの指定難病を基礎疾患とする)の症例登録研究を、全国の専門医だけでなく、呼吸不全調査研究班・強皮症班などの領域別基盤研究分野研究班や関連学会および患者会と連携して行う。研究プロトコールは田村班によって開始されている多施設共同症例登録研究のフォーマットを用い、研究期間内には本邦における初の前向き・多施設共同による予後調査および各治療法の対費用効果・医療の質に関する検討を行い、ガイドライン策定に寄与することを目的とする。
研究方法
(1)症例登録システム運用と各種治療効果と予後の検討
症例登録システム(JAPHR)を用いた肺高血圧症の前向きの症例登録研究を行った。
今年度は登録データを用いて国際比較のために国際的に標準的に用いられているリスクスコア指標(French Risk Stratification Score)と血行動態の関連の評価を行った。

(2)青黛摂取に伴う肺動脈性肺高血圧症の調査
平成23年頃より青黛という染料をもとにした漢方薬を摂取した潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患患者において、青黛の摂取と因果関係の否定できない肺動脈性肺高血圧症が発現した症例が複数存在することが判明した。昨年度研究班で行った全国実態調査をもとに国際ガイドライン会議での公表を行う。

(3)肺高血圧症の疾患特異的PRO指標日本語版の開発
患者立脚型アウトカム(PRO)の評価や費用対効果の評価を行うため、肺高血圧症疾患特異的PRO指標emPHasis-10の日本語版の開発を行う。
結果と考察
(1) 症例登録システム運用と各種治療効果と予後の検討
症例データーベースには合計1063例登録されており、研究開始時の目標である1000例の登録に到達した。
また国際比較に関しては現在国際的に用いられているリスク評価指標であるFrench Risk Stratificationを用い、日本のコホートの評価を行ったところ、本邦における肺動脈性肺高血圧症の良好な予後は国際的な指標によっても示唆されるとともに、血行動態上の改善もそれに並行して認められることが明らかとなった。

(2)青黛摂取に伴う肺動脈性肺高血圧症の調査
本研究班によって明らかになった知見は第6回肺高血圧症ワールドシンポジウムでも発表され、新たな国際ガイドラインにも、本邦から報告された新たな薬剤性肺動脈性肺高血圧症として収載された。

(3)肺高血圧症の疾患特異的PRO指標日本語版の開発
今年度は日本語版emPHasis-10の計量心理学的妥当性の検証を行ったところ、計量心理学的妥当性も担保された指標であることが確認された。
結論
レジストリ研究によって本邦の肺動脈性肺高血圧症は多剤併用療法が積極的に行われており、その結果他国と比較して治療反応性が良好であるとともに、予後も改善していることが示唆された。また青黛接種に伴う肺動脈性肺高血圧症は新たな薬剤誘発性の肺動脈性肺高血圧症であることが国際的にも認知された。肺高血圧症疾患特異的PRO指標に関しては、emPHasis-10が各種妥当性が検証された唯一のPRO指標として今後レジストリなどを交えた医療の質の評価への応用が期待される。

公開日・更新日

公開日
2019-12-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-12-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201811007B
報告書区分
総合
研究課題名
疾患予後と医療の質の改善を目的とした多領域横断的な難治性肺高血圧症症例登録研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-022
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
田村 雄一(国際医療福祉大学 医学部循環器内科)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 徹(杏林大学 医学部第2内科)
  • 巽 浩一郎(千葉大学 大学院医学研究院呼吸器内科学)
  • 田邉 信宏(千葉大学 大学院医学研究院呼吸器内科学)
  • 辻野 一三(北海道大学大学院 医学研究科内科学講座呼吸器内科学)
  • 渡邉 裕司(浜松医科大学)
  • 桑名 正隆(日本医科大学 大学院医学研究科アレルギー膠原病内科学分野)
  • 松原 広己(独立行政法人国立病院機構岡山医療センター 臨床研究部)
  • 八尾 厚史(東京大学 保健・健康推進本部)
  • 阿部 弘太郎(九州大学病院 循環器内科)
  • 宮田 裕章(慶應義塾大学 医学部医療政策・管理学教室)
  • 隈丸 拓(東京大学 大学院医学系研究科医療品質評価学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班は田村班のシステムを引き継ぎ、平成28年度に領域横断的特性を持つ疾患である肺高血圧症(肺動脈性肺高血圧症・慢性肺血栓塞栓性肺高血圧症・肺静脈閉塞症・SLE・強皮症・MCTD・特発性間質性肺炎・大動脈炎症候群などの多くの指定難病を基礎疾患とする)の症例登録研究を、全国の専門医だけでなく、呼吸不全調査研究班・強皮症班などの領域別基盤研究分野研究班や関連学会および患者会と連携して行う。研究プロトコールは田村班によって開始されている多施設共同症例登録研究のフォーマットを用い、研究期間内には本邦における初の前向き・多施設共同による予後調査および各治療法の対費用効果・医療の質に関する検討を行う。
研究方法
(1)症例登録システム運用と各種治療効果と予後の検討
症例登録システム(JAPHR)を用いた肺高血圧症の前向きの症例登録研究を行い予後調査を行った。また国際比較のために国際的に標準的に用いられているリスクスコア指標(French Risk Stratification Score)と血行動態の関連の評価を行った。
(2)青黛摂取に伴う肺動脈性肺高血圧症の調査
平成23年頃より青黛という染料をもとにした漢方薬を摂取した潰瘍性大腸炎など炎症性腸疾患患者において、青黛の摂取と因果関係の否定できない肺動脈性肺高血圧症が発現した症例が複数存在することが判明した。そのため全国実態調査を行い、その疫学的や機序などを明らかにするとともに、国際ガイドライン会議での公表を行った。
(3)肺高血圧症の疾患特異的PRO指標日本語版の開発
患者立脚型アウトカム(PRO)の評価や費用対効果の評価を行うため、肺高血圧症疾患特異的PRO指標emPHasis-10の日本語版の開発を行った。
結果と考察
(1) 症例登録システム運用と各種治療効果と予後の検討
症例データーベースには合計1063例登録されており、研究開始時の目標である1000例の登録に到達した。
同データベースを用いて本邦における初の前向き・多施設共同による予後調査を行い、英文原著論文化も行った。また国際比較に関しては現在国際的に用いられているリスク評価指標であるFrench Risk Stratificationを用い、日本のコホートの評価を行ったところ、本邦における肺動脈性肺高血圧症の良好な予後は国際的な指標によっても示唆されるとともに、血行動態上の改善もそれに並行して認められることが明らかとなった。その理由として、肺高血圧症治療においては、現在では特に重症例に対してはthe more, the betterの積極的な多剤併用による治療戦略が推進されるようになってきている。本邦における良好な治療成績はそれを先取りしたものであることが示唆された。
(2)青黛摂取に伴う肺動脈性肺高血圧症の調査
全国の主立った肺高血圧症診療施設に対しての診療実態調査を行った。その結果12例の青黛内服に伴う肺高血圧症の発症例が認められた。全例が肺動脈性肺高血圧症の診断基準を満たしており、肺高血圧症に対する特異的な治療薬の投与を受けていた。さらに機序解明のために、青黛の成分分析をクロマトグラフィーを用いて行ったところ、Indigoおよびその活性物質であるIndirubinが主成分として検出され、血管内皮細胞においては用量依存的にアポトーシスが誘導され、また細胞増殖能の低下も認められた。
本研究班によって明らかになった知見は第6回肺高血圧症ワールドシンポジウムでも発表され、新たな国際ガイドラインにも、本邦から報告された新たな薬剤性肺動脈性肺高血圧症として収載された。
(3)肺高血圧症の疾患特異的PRO指標日本語版の開発
国際標準疾患特異的PRO指標emPHasis-10の言語学的妥当性を担保する日本語化を行い、レジストリにも盛り込んだ。さらに計量心理学的妥当性の検証を行お、担保された指標であることが確認された。
結論
 レジストリ研究によって本邦の肺動脈性肺高血圧症は多剤併用療法が積極的に行われており、その結果他国と比較して治療反応性が良好であるとともに、予後も改善していることが示唆された。また青黛接種に伴う肺動脈性肺高血圧症は新たな薬剤誘発性の肺動脈性肺高血圧症であることが国際的にも認知された。肺高血圧症疾患特異的PRO指標に関しては、emPHasis-10が各種妥当性が検証された唯一のPRO指標として今後レジストリなどを交えた医療の質の評価への応用が期待される。

公開日・更新日

公開日
2019-12-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2019-12-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201811007C

収支報告書

文献番号
201811007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,959,000円
(2)補助金確定額
4,958,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,676,310円
人件費・謝金 0円
旅費 402,050円
その他 1,736,388円
間接経費 1,144,000円
合計 4,958,748円

備考

備考
当初の見積もりと研究物品購入の際の実際の請求額による多少の誤差が生じたものによる差異であり、研究結果への影響は全く無い。

公開日・更新日

公開日
2020-03-11
更新日
-