加熱式たばこなど新たなたばこ製品の成分分析と受動喫煙による健康影響の評価手法の開発

文献情報

文献番号
201809031A
報告書区分
総括
研究課題名
加熱式たばこなど新たなたばこ製品の成分分析と受動喫煙による健康影響の評価手法の開発
課題番号
H30-循環器等-指定-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
稲葉 洋平(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤 加奈江(戸次 加奈江)(国立保健医療科学院 生活環境研究部)
  • 高橋秀人(国立保健医療科学院)
  • 中村 純(大阪府立大学 生命環境科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
45,000,000円
研究者交替、所属機関変更
研究代表の変更があった。 欅田尚樹(2018年4月から12月)→稲葉洋平(2019年1月から3月)

研究報告書(概要版)

研究目的
 加熱式たばこは,たばこ産業のパンフレットによると主流煙の有害化学物質の90-99%が削減と記載されている。加熱式たばこを使用者は、「有害化学物質の削減」が「健康影響の削減」と考えてしまうかもしれない。最近では、加熱式たばこが紙巻たばこよりも高い成分も報告されるようになった。本研究班は、世界で最も加熱式たばこが普及している我が国において、加熱式たばこの有害化学物質量の調査及び受動喫煙の評価法開発を目的としている。世界に先駆け,これらの新しいタイプの製造たばこに関する科学的な知見を創出していくことが,最も普及している日本に課せられた急務であり世界保健機関(WHO)からも期待されている。現在,政府内では改正健康増進法の施行に向けて、加熱式たばこの健康影響評価を進めている。本研究班は、その健康影響評価の一助になるための科学的根拠の積み上げも目的としている。
研究方法
 対象銘柄は、IQOS、glo、Ploom TECH、電子たばこ、紙巻たばことした。測定対象たばこ装置は、IQOS、glo、Ploom TECHと電子たばことIQOS互換機を使用した。IQOS互換機とは、IQOSスティックを加熱する装置で、販売元のフィリップ・モリス社製以外の製品である。この数年で、多くのIQOS互換機が販売されている。主流煙の捕集は、自動喫煙装置で行い、各種分析を行った。たばこ煙を捕集する喫煙法は、ISO法(一服につき2秒間で35 mL吸引、60秒間隔、通気孔は開放)及びヘルスカナダ法(HCI法)(一服につき2秒間で55 mL吸引、30秒間隔、通気孔は全閉鎖)の2種類の方法を採用し捕集した。今年度は、フェノール類、カルボニル類、オキシド類の分析を行った。
 さらに本研究では、アセトアルデヒドおよびホルムアルデヒド由来の付加体の中で、生活習慣病の病態に重要な影響を及ぼす付加体を明らかにする目的で、種々のハイブリッド型付加体の精製を行った。
結果と考察
 主流煙フェノール分析法を確立し、加熱式たばこと紙巻たばこへ適用した。紙巻たばこより加熱式たばこは低減されていた。しかし、いくつかの化学物質で、紙巻たばこと同レベルで発生していた。また、製品間の比較では全ての加熱式たばこ製品で同レベルでの発生量とはならなかった。次に、加熱式たばこにプロピレンオキサイドやグリシドールが検出された.この他,フルフラール,ジアセチル,アセトールが検出されたが,加熱式タバコ独特のにおいの原因の一つと思われる。この数年で、加熱式たばこIQOSの互換機が市場に投入され、購入が可能となっている。しかし、この互換機を使用してIQOSを喫煙すると正規品と同等の分析結果となるか確認されていない。そこで互換機8製品について調査を行ったところ、1製品で一酸化炭素、フェノール類が、IQOS正規品の30倍近く高くなる事が分かった。これは、有害化学物質を多く発生した互換機の温度、加熱方法が影響しているのではないかと考えられる。合わせて、加熱式たばこから発生する化学物質について文献調査も行ったところ、加熱式たばこの特徴として香料等に由来する成分も多種類検出されていた。また、たばこ葉中の糖やアミノ酸の加熱が誘導するメイラード反応からは、フラン、フラノン類等の香料成分が生成され、これらは、特に加熱式たばこIQOSからも比較的高濃度検出されていることから、加熱式たばこに特徴的な成分となるものと考えられた。
本研究結果から,加熱式および電子たばこのエアロゾルに含まれるアセトアルデヒド(AA)およびホルムアルデヒド(FA)の健康におよぼす影響についての懸念が広がっている。この種のアルデヒドは炎症性のあるハイブリッド型の蛋白付加体を産生する可能性があるが、不明な点が多い。本研究では、AAおよびFA由来の付加体の中で、生活習慣病の病態に重要な影響を及ぼす付加体を明らかにする目的で、種々のハイブリッド型付加体の精製を行った。さらに、異なるハイブリッド型付加体に対する抗体が粥状動脈硬化症の早期に上昇することを疾患モデルマウスを用いて明らかにした。
結論
 加熱式たばこは紙巻たばこと比較して低い温度でたばこ葉を加熱する製品で、たばこ製品の喫煙時の満足度を上げるために紙巻たばこより添加物を多くしている可能性がある。新型たばこから発生する主流煙中の有害成分については、従来の紙巻たばこよりも多くのものが低減される傾向にある中で、紙巻たばこよりも高い濃度を示す、香料等に由来する多種類の成分が検出されている。こうしたものの中には、強い有害性を示す成分があることも報告されており、新型たばこが示す健康リスクの要因としても懸念されている。次年度は、これらの分析法をさらに進める一方で、受動喫煙の評価手法として、副流煙の分析、受動喫煙環境下での分析・評価を進める計画である。

公開日・更新日

公開日
2019-08-27
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-08-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201809031Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
45,000,000円
(2)補助金確定額
44,906,000円
差引額 [(1)-(2)]
94,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 37,668,316円
人件費・謝金 3,671,860円
旅費 1,520,083円
その他 2,046,030円
間接経費 0円
合計 44,906,289円

備考

備考
端数289円は自己資金となります。

公開日・更新日

公開日
2020-04-09
更新日
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