医療機関における放射線利用の合理化と国際動向に関する研究

文献情報

文献番号
199800671A
報告書区分
総括
研究課題名
医療機関における放射線利用の合理化と国際動向に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
遠藤 啓吾(群馬大学)
研究分担者(所属機関)
  • 濱田達二(日本アイソトープ協会)
  • 小西淳二(京都大学)
  • 棚田修二(放射線医学総合研究所)
  • 佐々木武仁(東京医科歯科大学)
  • 青木幸昌(東京大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
放射線の利用はX線診断、核医学、放射線治療の3つに大きく分けることができる。そのいずれも進歩は目覚ましく、新しい放射性医薬品や新しい医療用放射線機器が次々と開発されている。しかし我が国では医療法などによる法規制のために使用できない機器も多い。また放射性医薬品も他の医療機関と共同利用することができないなどの問題点も指摘されている。また患者への医療被曝が世界で最も多いという問題点も抱えている。そこで本研究では法令上の取扱いを整理し、医療放射線の安全な利用推進を目的に研究を行った。
研究方法
1.専門家によるワーキンググループ(WG)を編成し、資料分析、資料の解析を行った。2.米国や欧米での放射線量の実測値、および実状をアンケート調査により、我が国での遮蔽計算を行うとともに、法令改正に必要な情報収集を行った。3.日本歯科放射線学会の放射線防護委員会、日本核医学会被曝管理WGが中心となって、放射線量測定を行い、法令改正に必要な資料を作成した。
結果と考察
ヒトのエネルギー源としてブドウ糖代謝は最も重要だが、その画像化にはフッ素-18で標識したFDGを用いるPET(ペット)検査以外にはない。FDGは癌や脳、心臓疾患などの診療などに極めて役立つ。しかしFDGは半減期が110分と短く、多施設での共同利用が望まれており、世界各国での実情を調査した。各国とも、許可を得るためにそれぞれ制限はあるものの、FDGの他施設への譲受譲渡への方策が整備されており、資源の有効利用という観点からしても、我が国においても早急な関係法整備が必要と考えられた。医療用放射線機器の進歩が目覚ましく、欧米では新しい機器が次々と臨床応用されている。しかし核医学吸収補正用線源、血管内照射器具、密封小線源治療用具、移動型術中放射線照射装置は、我が国では医療法などによる法規制のために使用できない。核医学吸収補正線源による患者、診療従事者への放射線被ばく線量を実測し、移動型術中照射専用放射線照射装置に関する安全対策、漏洩線量評価を行った。また法令改正に必要な情報収集し、医療法改正に向けて提案した。一般歯科医療機関におけるX線装置の取扱いについても、簡便な標準的線量測定法としてガラス線量計を用いる方法の精度、信頼性を精度の高い電離箱測定法を基準測定法として比較したところ、両者は極めて良い一致を示し、この方法が実用的に十分信頼性の高い測定法であることが確かめられた。癌治療の分野で注目されつつある陽子線治療、重粒子線(重イオン線)治療等の粒子線治療が、保険診療の第一歩とも言うべき高度先進医療として認められるための必要な諸条件、あるいは克服すべき問題点等を明らかにするための調査と情報収集を行った。このような技術の進歩に伴って、我が国では患者への医療被曝が世界で最も多いという問題を抱えている。核医学治療患者による環境への放射能汚染をできる限り無くするため、患者用パンフレットを作成した。近年話題となっている医療被曝の最適化と放射線治療機器の使用における防護関係者の資格・教育訓練、ならびに国際放射線防護委員会(ICRP)1990年勧告の法令取り入れに伴う管理区域設定基準の変更に関し、12名の研究協力者からなるワーキンググループを設けて研究を実施した。ICRP1990年勧告の法令取り入れに伴う法改正への提案を行った。新しい放射線機器を医療機関で使用できるようになると、患者の診断能が向上するとともに、難治性癌の治療に貢献できる。さらに国民への放射線被曝、環境への放射能汚染を軽減させるなど、本研究によって期待される社会的成果は
極めて大である。
結論
核医学吸収補正用線源、血管内照射器具、密封小線源治療用具、移動型術中照射装置などは、我が国では医療法などによる法規制のために使用できない。しかし医療法施行規則を改正することにより、我が国でも一般病院で使用できるものと考えられ、医療法改正に向けて提案した。国際放射線防護委員会(ICRP)の1990年勧告の法令取り入れに伴う放射線審議会の意見具申に記された管理区域設定基準の具体的な運用について提案を行った。

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