脳卒中の医療体制の整備のための研究

文献情報

文献番号
201809008A
報告書区分
総括
研究課題名
脳卒中の医療体制の整備のための研究
課題番号
H28-循環器等-一般-011
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
飯原 弘二(国立大学法人九州大学 医学研究院 脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 邦宏(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 予防医学・疫学情報部)
  • 吉村 紳一(兵庫医科大学 脳神経外科)
  • 塩川 芳昭(杏林大学 医学部脳神経外科)
  • 嘉田 晃子(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床試験研究部生物統計研究室)
  • 小笠原 邦昭(岩手医科大学 医学部脳神経外科)
  • 豊田 一則(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 脳血管部門)
  • 東 尚弘(国立がん研究センター がん対策情報センターがん登録センター)
  • 坂井 信幸(神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科)
  • 星野 晴彦(東京都済生会中央病院 神経内科)
  • 長谷川 泰弘(聖マリアンナ医科大学 神経内科)
  • 橋本 洋一郎(熊本市民病院 神経内科)
  • 小川 彰(岩手医科大学)
  • 鈴木 倫保(山口大学 大学院医学系研究科脳神経外科学)
  • 辻野 彰(国立大学法人長崎大学 病院脳神経内科)
  • 北園 孝成(九州大学 医学研究院病態機能内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
4,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2015年に機械的血栓回収療法の治療効果が相次いで発表されるに伴い、急性期脳梗塞に対する標準治療は一変し、急性期医療体制の整備は喫緊の課題となった。本研究の目的は、急性期脳梗塞のt-PA静注療法の均てん化、血管内治療の集約化を図るため、脳梗塞超急性期医療の実態を把握した上で、臨床指標を策定し、大規模データベース(J-ASPECT Studyなど)から、策定した臨床指標を算出し、地域の実状を考慮した脳梗塞超急性期医療の提供体制の整備に資する資料を提供することにある。
研究方法
(1)脳梗塞超急性期治療の地域別実態把握と評価:
①日本脳卒中学会、脳神経外科学会、神経学会、脳神経血管内治療学会の協力のもと、脳梗塞超急性期治療の退院調査を行い、予後に与える影響を解析する。
②脳梗塞超急性期におけるrt-PA静注療法、血管内治療の治療数、受療率を、既に構築された統合データベースを活用して、地理的要因を考慮して比較、検討することによって、エビデンス・プラクティス ギャップの可視化を図る。
③研究分担者により、人口密度の異なる地域における遠隔医療の活用を含めた実態調査を行う。

(2)地域特性を考慮した、rt-PA療法の均てん化、血管内治療の集約化を目指した医療体制構築のための指標: 
 脳梗塞を発症してからの搬送、診断、治療の3つの段階で、rt-PA静注療法、血管内治療の施行に関わる臨床指標を策定し、継続的なモニターの可能性につき検討する。
 
(3)rt-PA療法の均てん化を目指した、rt-PA静注療法適正治療指針の改訂に資するデータの蓄積:
 rt-PA療法の均てん化に向けて、上記の脳卒中データベースを活用して、脳梗塞超急性期治療に関する臨床指標の継続的な収集を行い、rt-PA静注療法適正治療指針の改訂に資するデータの蓄積を図る。
結果と考察
(1) 平成29年度の脳梗塞超急性期治療を対象としたDPC情報をもとにした退院調査を施行、データ収集を行った。また脳卒中診療施設を対象に、脳卒中患者の救急医療体制の現状を把握することを目的として、平成22年度、平成26年度に続いて、平成30年度の第3回診療施設調査を行った。
(2) 地域や自治体などでも収集可能な指標として、以下のものを提唱した。
1)脳卒中全体死亡率
2)脳卒中3病型別死亡率/患者数
3)脳卒中主要関連学会専門医数
4)脳卒中診療に従事する常勤医師数
5)rt-PA静注療法実施数/率
6)機械的血栓回収療法実施数/率
7)ストローク・ユニット設置数
8)rt-PA静注療法 常時治療可能施設数
9)脳血管内治療 常時治療可能施設数
10)脳内出血治療数
11)再入院患者数
(3)  (2)において検討した指標について、本研究班で得られたJ-ASPECTのデータをもとに評価を行った。
 平成30年度に行った第3診療施設調査の結果では、過去の施設調査からの経時推移については人的要因に関しては増加している項目も認めたが、その他の要項については大きな変化を認めなかった。また都道府県ごとの脳卒中診療の実態が明らかになった。
  厚生労働省の人口動態統計における脳梗塞の年齢調整死亡率と、J-ASPECT のデータにおける都道府県別のリスク調整死亡率(入院30日以内死亡)を比較すると、死亡率の高い地域に相違を認めた。これは急性期医療と慢性期医療のギャップを示しており、治療のアウトカムを改善するための地域ごとの特色が可視化された。

結論
H30年度は超急性期虚血性脳卒中の医療の実態を把握することで、歴然とした地域格差や不均衡が存在することが明らかとなった。また脳梗塞急性期治療に関する地域や自治体などでも収集可能な臨床指標を提唱した。

公開日・更新日

公開日
2019-10-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-10-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201809008B
報告書区分
総合
研究課題名
脳卒中の医療体制の整備のための研究
課題番号
H28-循環器等-一般-011
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
飯原 弘二(国立大学法人九州大学 医学研究院 脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 西村 邦宏(国立研究開発法人国立循環器病研究センター予防医学・疫学情報部)
  • 吉村 紳一(兵庫医科大学 脳神経外科)
  • 塩川 芳昭(杏林大学 医学部脳神経外科)
  • 嘉田 晃子(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 臨床試験研究部生物統計研究室)
  • 小笠原 邦昭(岩手医科大学 医学部脳神経外科)
  • 豊田 一則(国立研究開発法人国立循環器病研究センター 脳血管部門)
  • 東 尚弘(国立がん研究センター がん対策情報センターがん登録センター)
  • 坂井 信幸(神戸市立医療センター中央市民病院 脳神経外科)
  • 星野 晴彦(東京都済生会中央病院 神経内科)
  • 長谷川 泰弘(聖マリアンナ医科大学 神経内科)
  • 橋本 洋一郎(熊本市民病院 神経内科)
  • 小川 彰(岩手医科大学)
  • 鈴木 倫保(山口大学 大学院医学系研究科脳神経外科学)
  • 辻野 彰(国立大学法人長崎大学 病院脳神経内科)
  • 北園 孝成(九州大学 医学研究院病態機能内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2015年に機械的血栓回収療法の治療効果が相次いで発表されるに伴い、急性期脳梗塞に対する標準治療は一変し、急性期医療体制の整備は喫緊の課題となった。本研究の目的は、急性期脳梗塞のt-PA静注療法の均てん化、血管内治療の集約化を図るため、脳梗塞超急性期医療の実態を把握した上で、臨床指標を策定し、大規模データベース(J-ASPECT Studyなど)から、策定した臨床指標を算出し、地域の実状を考慮した脳梗塞超急性期医療の提供体制の整備に資する資料を提供することにある。
研究方法
(1)脳梗塞超急性期治療の地域別実態把握と評価:
①日本脳卒中学会、脳神経外科学会、神経学会、脳神経血管内治療学会の協力のもと、脳梗塞超急性期治療の退院調査を行い、予後に与える影響を解析する。
②脳梗塞超急性期におけるrt-PA静注療法、血管内治療の治療数、受療率を、既に構築された統合データベースを活用して、地理的要因を考慮して比較、検討することによって、エビデンス・プラクティス ギャップの可視化を図る。
③研究分担者により、人口密度の異なる地域における遠隔医療の活用を含めた実態調査を行う。

(2)地域特性を考慮した、rt-PA療法の均てん化、血管内治療の集約化を目指した医療体制構築のための指標: 
 脳梗塞を発症してからの搬送、診断、治療の3つの段階で、rt-PA静注療法、血管内治療の施行に関わる臨床指標を策定し、継続的なモニターの可能性につき検討する。
 
(3)rt-PA療法の均てん化を目指した、rt-PA静注療法適正治療指針の改訂に資するデータの蓄積:
 rt-PA療法の均てん化に向けて、上記の脳卒中データベースを活用して、脳梗塞超急性期治療に関する臨床指標の継続的な収集を行い、rt-PA静注療法適正治療指針の改訂に資するデータの蓄積を図る。
結果と考察
(1) 平成27年度から29年度の脳梗塞超急性期治療を対象としたDPC情報をもとにした退院調査を施行、データ収集を行った。また脳卒中診療施設を対象に、脳卒中患者の救急医療体制の現状を把握することを目的として、平成22年度、平成26年度に続いて、平成30年度の第3回診療施設調査を行った。
  RESCUE-Japan Projectにおける2016年から2017年にかけての急性期血栓回収療法に関するデータの集計より、人口10万人あたりの急性期血栓回収療法の治療件数と血管内治療専門医の人数は、いずれも概ね増加傾向にあるが(治療件数:34.5%増加、専門医数:12.8%増加)、地域の格差は大きいことが示された。
 急性期脳卒中における遠隔医療の実体について山口県における取組み(Telestroke)の報告では、脳卒中診療医のいない施設においてTelestrokeを用いることで約25%の転送が行われ、治療適応など適切な判断がなされていた。Telestrokeを用いることで、脳卒中診療医がいない地域においても超急性期治療が可能となることが示された。

(2) 地域や自治体などでも収集可能な指標として、以下のものを提唱した。
1)脳卒中全体死亡率
2)脳卒中3病型別死亡率/患者数
3)脳卒中主要関連学会専門医数
4)脳卒中診療に従事する常勤医師数
5)rt-PA静注療法実施数/率
6)機械的血栓回収療法実施数/率
7)ストローク・ユニット設置数
8)rt-PA静注療法 常時治療可能施設数
9)脳血管内治療 常時治療可能施設数
10)脳内出血治療数
11)再入院患者数
(3)  (2)において検討した指標について、本研究班で得られたJ-ASPECTのデータをもとに評価を行った。
 平成30年度に行った第3診療施設調査の結果では、過去の施設調査からの経時推移については人的要因に関しては増加している項目も認めたが、その他の要項については大きな変化を認めなかった。また都道府県ごとの脳卒中診療の実態が明らかになった。
 厚生労働省の人口動態統計における脳梗塞の年齢調整死亡率と、J-ASPECT のデータにおける都道府県別のリスク調整死亡率(入院30日以内死亡)を比較すると、死亡率の高い地域に相違を認めた。これは急性期医療と慢性期医療のギャップを示しており、治療のアウトカムを改善するための地域ごとの特色が可視化された。

結論
 本研究において超急性期虚血性脳卒中の医療の実態を把握することで、歴然とした地域格差や不均衡が存在することが明らかとなった。また一次脳卒中センターおよび包括的脳卒中センターの整備に向けて、脳梗塞急性期治療に関する地域や自治体などでも収集可能な臨床指標を提唱した。

公開日・更新日

公開日
2019-10-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201809008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 本研究により、rt-PA静注療法の均てん化と血管内治療の集約化を目指した脳梗塞急性期医療のネットワークを、地理的条件やインフラの充足度などに応じて類型化して提言することが可能となる。rt-PA静注療法を適確に行うことを目的とした一次脳卒中センターの整備、血管内治療が常時可能な包括的脳卒中センターの整備に向けて基礎資料を提供し、医療圏の見直しなどに向けたPDCAサイクルの実現をもたらすことが期待される。
臨床的観点からの成果
 日本脳卒中学会が中心となって策定しつつある、脳卒中センターの整備に向けての基礎資料となる成果である。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
「非感染性疾患対策に資する循環器病の診療情報の活用の在り方に関する検討会」第1回に、脳卒中登録として、参考人として承知された。

その他のインパクト
日本循環器学会で、「日本脳卒中学会の登録事業の取り組み」として、シンポジウムで発表した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
4件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nishimura A, Nishimura K, Kada A, et al
Status and Future Perspectives of Utilizing Big Data in Neurosurgical and Stroke Research.
Neurol Med Chir (Tokyo). , 56 (11) , 655-663  (2016)
原著論文2
Kada A, Nishimura K, Nakagawara J,et al
Development and validation of a score for evaluating comprehensive stroke care capabilities: J-ASPECT Study.
BMC Neurol. , 17 (1) , 46-46  (2017)
原著論文3
Kurogi R, Kada A, Nishimura K,et al
Effect of treatment modality on in-hospital outcome in patients with subarachnoid hemorrhage: a nationwide study in Japan (J-ASPECT Study).
J Neurosurg. , 128 (5) , 1318-1326  (2018)
原著論文4
Kurogi R, Nishimura K, Nakai M, et al
Comparing intracerebral hemorrhages associated with direct oral anticoagulants or warfarin.
Neurology , 90 (13) , e1143-e1149  (2018)

公開日・更新日

公開日
2020-03-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201809008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,300,000円
(2)補助金確定額
6,300,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,003,940円
人件費・謝金 0円
旅費 1,294,590円
その他 2,549,717円
間接経費 1,453,000円
合計 6,301,247円

備考

備考
自己資金 1247円

公開日・更新日

公開日
2020-02-04
更新日
-