ATL/HTLV-1キャリア診療中核施設群の構築によるATLコホート研究

文献情報

文献番号
201808037A
報告書区分
総括
研究課題名
ATL/HTLV-1キャリア診療中核施設群の構築によるATLコホート研究
課題番号
H29-がん政策-指定-001
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
内丸 薫(東京大学大学院 新領域創成科学研究科メディカル情報生命専攻病態医療科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 渡邉 俊樹(東京大学 医科学研究所)
  • 宇都宮 與(公益財団法人慈愛会今村総合病院 血液内科/臨床研究センター)
  • 高 起良(大阪鉄道病院 血液内科)
  • 岩永 正子(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 小林 誠一郎(東京大学 医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
8,183,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
indolent ATLは無治療経過観察が標準的な方針である。しかし予後は決して良好ではなく、新たな治療薬剤の開発と治療方針の確立が強く求められる。 希少疾患であるindolent ATLに対する適切な治療方針を確立していくためには、専門家のネットワークにより登録されたコホートを構築し、病態解析、治療方針とその予後についての質の高い情報を収集していくことが不可欠である。JSPFADに登録される indolent ATL症例をデータベース(DB)化し、indolent ATL症例の集積による臨床経過に関する質の高いエビデンスの構築を目指し、合わせて発症ハイリスクキャリアの疾患概念の確立を目指す。さらに関連領域研究班との連携体制を構築することでindolent ATLの病態解明に資するとともに、本研究班をベースにHTLV-1 キャリア対応施設拠点化の推進のための検討を進める。
研究方法
前年度までに構築がほぼ完了したindolent ATL DBを完成し、実運用を開始した。JSPFAD参加施設にメーリングリストで周知、該当症例のデータ入力の依頼とともに、事務局におけるデータ入力代行も開始した。毎週1回の進捗管理会議をおこない、個別施設対応を実施することでデータ入力の促進を図った。本システムをより信頼性が高く、他データベースとのデータ連携を可能とするために、難病プラットホームの標準システムへ移行するのに必要な要件の検討を行った。登録症例のHAS-flow法による解析を開始するため、昨年度問題になった単核球分離外注検体と研究室データとの一部乖離について原因を検討し、登録臨床データとの統合解析を開始した。あわせてハイリスクキャリアについての検討を開始した。これらの登録症例の検体を関連研究班との共同研究により発現解析、ゲノム解析などを実施した。本研究のベースとなるJSPFADに一定数の患者登録を行っている施設をHTLV-1キャリア対策の中核診療施設として位置づけネットワークを構築するため、昨年度、日本HTLV-1学会と連携して開始した学会登録医療機関制度の整備と認定施設の拡大を行うこととした。
結果と考察
Indolent ATLデータベースへの症例データ入力を開始した。入力は順調に進捗しており、検体ベースで37.2%、検体ベースで36.7%の入力率である。また、HAS-flowによる解析については、受託企業技術者との検討、試行にも関わらず明確な原因は同定できなかったが、受託企業の変更により解決したため、登録検体の解析を開始した。これらの臨床データ、経過と表面マーカーの統合解析によりハイリスクindolent ATLの同定と診療ガイドラインの策定が可能となり、世界に類を見ないindolent ATLの前向きコホートが構築された。本システムはER/ES、CDISC準拠の難病プラットホーム標準システムへの移行を念頭に、今年度からその可能性についての検討を開始した。年度末から、本格的に標準システムとしてのindolent ATLDBの構築が始まっており、本システムの移行により、他研究領域とのデータシェアリング、データベースの恒久性、臨床試験への応用など様々な利点が期待される。
昨年度の予備解析によりindolent ATLとのボーダーラインにあるキャリアが同定され、ハイリスクキャリアとして概念化された。これらの結果をもとに、本年度キャリアフォローアップ試案を提唱したが、今回の研究で明らかになったCADM1陽性集団25%~50%のボーダーライン症例はindolent ATLの治療介入適応を考えるうえでも重要な知見である。本データベースは臨床データ、HAS解析などのデータの紐づいた検体が収集されることも大きな特徴で、これらのサンプルを用いてHTLV-1領域関連研究班との連携、共同研究により、ハイリスクキャリアにおいて表面マーカー的にindolent ATLにおける感染/腫瘍細胞と同等の集団があり、遺伝子発現レベルでは同様のパターンとなっていること、腫瘍化の後期過程でゲノム異常が加わっていくことなど、様々なindolent ATLに関する病態解析が進められ、今後ともこの領域における研究のプラットホームとしての役割が期待される。本研究班は日本のHTLV-1キャリア対応の中心的メンバーで構成されており、昨年度本研究班を中心に日本HTLV-1学会登録医療機関制度を立ち上げ、本年度は制度整備として登録医療機関制度規則、同施行細則の制定を行った。今後学会によって運営が継続される。
結論
Indolent ATLの病態解明、新規治療の研究に資するIndolent ATL データベースを開発し運用を開始した。さらに日本HTLV-1学会登録医療機関制度の設立に携わった。

公開日・更新日

公開日
2020-01-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-01-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201808037Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,637,000円
(2)補助金確定額
10,637,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,131,456円
人件費・謝金 4,407,178円
旅費 560,310円
その他 1,084,056円
間接経費 2,454,000円
合計 10,637,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-02-13
更新日
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