文献情報
文献番号
201808035A
報告書区分
総括
研究課題名
がん診療連携拠点病院等における医療提供体制の均てん化のための評価に既存資料を活用する
課題番号
H30-がん対策-一般-009
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
宮代 勲(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター がん対策センター)
研究分担者(所属機関)
- 森島敏隆(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター がん対策センター 政策情報部)
- 中田佳世(山田佳世)(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター がん対策センター 政策情報部)
- 佐藤 亮(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター がん対策センター 政策情報部)
- 田淵貴大(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪国際がんセンター がん対策センター 疫学統計部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
4,750,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
既存資料を活用した効率的なモデルを示すことを目標とする。大阪府の65のがん診療連携拠点病院等(以下、拠点病院)を対象に、(1)医療機関の比較、(2)実地調査を行う。質的量的に優位性をもつ大阪府がん登録にDPCをレコード・リンケージすることで、単独のデータベースでは実施困難な評価、例えば医療機関の背景の違いを考慮した比較等、適切な評価のあり方を示す。現況報告書の信頼性をあげるという視点で、実地調査の負担軽減に繋げる。
研究方法
(1)医療機関の比較:大阪府がん登録にDPCをレコード・リンケージした連結データベースを作成する。都道府県がん診療連携協議会がん登録部会が実施する院内がん登録にDPCをリンケージするQI(quality indicator)研究と比較して、複数年のDPCデータを扱う点、地域がん登録情報による生存率を扱う点、大阪府だけで多くの拠点病院等の比較が可能で都道府県間の違いを考慮しなくてもよい点が優位点である。
(2)拠点病院等の実地調査:大阪府がん診療連携協議会(以下、協議会)会長(都道府県がん診療連携拠点病院総長)のもと、大阪府担当課、協議会の各部会長(研究代表者も含まれる)、同じ二次医療圏の医療機関の職員、患者会から構成される拠点病院等を対象とした訪問を既に実施している。好事例等の情報収集と課題の把握等を行うとともに、拠点病院等間の情報共有や課題への改善策の検討を通して、府内全体のがん診療の質の向上を図ることを目的としている。現地見学と医療機関による概要説明に2時間を用い、診療体制、緩和ケア、たばこ対策、情報提供体制、地域連携、がん登録を確認事項としているが(マニュアルはない)、現況報告書と実態の不整合が散見される。現況報告書は拠点病院等の指定要件の確認に重要な資料で、信頼できる報告であることが前提である。しかしながら、信頼性の検証は十分なされておらず、矛盾や実態と異なる場合も珍しくはない。実地調査に伴う実態との一致性の確認が信頼性を上げることに、信頼性を損なう要因の把握が報告形式の改善に繋がる。
(2)拠点病院等の実地調査:大阪府がん診療連携協議会(以下、協議会)会長(都道府県がん診療連携拠点病院総長)のもと、大阪府担当課、協議会の各部会長(研究代表者も含まれる)、同じ二次医療圏の医療機関の職員、患者会から構成される拠点病院等を対象とした訪問を既に実施している。好事例等の情報収集と課題の把握等を行うとともに、拠点病院等間の情報共有や課題への改善策の検討を通して、府内全体のがん診療の質の向上を図ることを目的としている。現地見学と医療機関による概要説明に2時間を用い、診療体制、緩和ケア、たばこ対策、情報提供体制、地域連携、がん登録を確認事項としているが(マニュアルはない)、現況報告書と実態の不整合が散見される。現況報告書は拠点病院等の指定要件の確認に重要な資料で、信頼できる報告であることが前提である。しかしながら、信頼性の検証は十分なされておらず、矛盾や実態と異なる場合も珍しくはない。実地調査に伴う実態との一致性の確認が信頼性を上げることに、信頼性を損なう要因の把握が報告形式の改善に繋がる。
結果と考察
(1)医療機関の比較
1)定量的評価のため既存資料を有機的に連携活用する基盤の整備
36の拠点病院からDPCデータ提出がなされ、178,524例から成る解析に用いる連結データベースの整備を完了した。参加拠点病院等の意見を参考に分析指標を設定した。これらの拠点病院においては、生存率を偶然ではなく必然的に高く(または低く)させている原因の存在が積極的には示唆されないことがわかった。
2)大阪府における小児・AYA世代のがんの診療実態調査
小児がんの患者家族のニーズに関するアンケート調査を実施した。調査対象者400人のうち、249人にアンケート調査票を配布し、200人の調査票が郵送により回収された(回収率:80.3%)。調査結果より、①きょうだい支援②病院食の改善③付き添い家族の生活環境改善④情報提供の改善⑤医療費制度の改善へのニーズが高いことが明らかとなった。
3)不確実性を考慮した医療の構造、過程、結果を解析する手法の検討
35の拠点病院の現況報告書から放射線治療に関連する病院の設備、人員を抽出し、がん登録と連結することにより、切除不能局所進行肺癌1,370例の治療選択に、放射線治療設備、放射線治療スタッフの多寡が関連することが示唆された。
4)病院及び地域の特性に応じたがんアウトカムの分析
2009-11年に口腔咽頭がんを罹患し、観血的処置を行った2,855名において、手術件数の少ない群low hospital volume(手術件数1~88件/3年間)に比較して、多い群high hospital volume(同251件以上)では、死亡のハザード比が0.75と有意に低かった。
(2)拠点病院等の実地調査
協議会として、近隣県(和歌山県、奈良県、兵庫県)の都道府県がん診療連携拠点病院を訪問して意見を交換した。また、協議会の有志による現況報告書に関する課題出しのワーキングを3回開催した。薬物療法のべ患者数など、他県や同じ大阪府内でも大きく数値が異なることが明らかになるとともに、薬物療法のべ患者数の算出がいかに現場で難しいかの情報共有がなされた。実患者数を加えて報告することが、のべ患者数についての検討に役立つことがわかり、提案内容の一部は大阪府への現況報告書提出時の資料に反映された。
1)定量的評価のため既存資料を有機的に連携活用する基盤の整備
36の拠点病院からDPCデータ提出がなされ、178,524例から成る解析に用いる連結データベースの整備を完了した。参加拠点病院等の意見を参考に分析指標を設定した。これらの拠点病院においては、生存率を偶然ではなく必然的に高く(または低く)させている原因の存在が積極的には示唆されないことがわかった。
2)大阪府における小児・AYA世代のがんの診療実態調査
小児がんの患者家族のニーズに関するアンケート調査を実施した。調査対象者400人のうち、249人にアンケート調査票を配布し、200人の調査票が郵送により回収された(回収率:80.3%)。調査結果より、①きょうだい支援②病院食の改善③付き添い家族の生活環境改善④情報提供の改善⑤医療費制度の改善へのニーズが高いことが明らかとなった。
3)不確実性を考慮した医療の構造、過程、結果を解析する手法の検討
35の拠点病院の現況報告書から放射線治療に関連する病院の設備、人員を抽出し、がん登録と連結することにより、切除不能局所進行肺癌1,370例の治療選択に、放射線治療設備、放射線治療スタッフの多寡が関連することが示唆された。
4)病院及び地域の特性に応じたがんアウトカムの分析
2009-11年に口腔咽頭がんを罹患し、観血的処置を行った2,855名において、手術件数の少ない群low hospital volume(手術件数1~88件/3年間)に比較して、多い群high hospital volume(同251件以上)では、死亡のハザード比が0.75と有意に低かった。
(2)拠点病院等の実地調査
協議会として、近隣県(和歌山県、奈良県、兵庫県)の都道府県がん診療連携拠点病院を訪問して意見を交換した。また、協議会の有志による現況報告書に関する課題出しのワーキングを3回開催した。薬物療法のべ患者数など、他県や同じ大阪府内でも大きく数値が異なることが明らかになるとともに、薬物療法のべ患者数の算出がいかに現場で難しいかの情報共有がなされた。実患者数を加えて報告することが、のべ患者数についての検討に役立つことがわかり、提案内容の一部は大阪府への現況報告書提出時の資料に反映された。
結論
初年度に計画通り、連結データベースの整備を完了した。現況報告書については、他県や同じ大阪府内でも大きく数値が異なることが明らかになるとともに、薬物療法のべ患者数の算出がいかに現場で難しいかの情報共有がなされた。
公開日・更新日
公開日
2019-10-16
更新日
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