文献情報
文献番号
201808033A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者がん診療指針策定に必要な基盤整備に関する研究
課題番号
H30-がん対策-一般-007
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
田村 和夫(福岡大学 医学部総合医学研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 長島 文夫(杏林大学 医学部)
- 相羽 惠介(東京慈恵会医科大学 医学部)
- 齊藤 光江(順天堂大学 医学部)
- 佐伯 俊昭(埼玉医科大学 国際医療センター 乳腺腫瘍科)
- 唐澤 久美子(東京女子医科大学 医学部 放射線腫瘍学)
- 内富 庸介(国立がん研究センター 中央病院 支持療法開発部門)
- 高橋 孝郎(埼玉医科大学 国際医療センター 緩和医療科)
- 海堀 昌樹(関西医科大学 医学部外科学講座)
- 作田 裕美(大阪市立大学大学院 看護学研究科)
- 今村 知世(慶應義塾大学 医学部)
- 辻 哲也(慶應義塾大学 リハビリテーション医学教室)
- 小寺 泰弘(名古屋大学大学院 医学系研究科)
- 安藤 雄一(名古屋大学医学部附属病院 化学療法部)
- 中山 健夫(京都大学大学院 医学研究科)
- 小川 朝生(国立がん研究センター 先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野)
- 濱口 哲弥(埼玉医科大学国際医療センター 医学部)
- 水谷 友紀(国立がん研究センター 臨床研究支援部門データ管理部)
- 津端 由佳里(島根大学 医学部)
- 高橋 昌宏(東北大学 加齢医学研究所 臨床腫瘍学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
10,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
高齢がん患者の診療にあたっては、患者の包括的な評価とそれに基づく医療の実践に資する指針を必要とする。本研究では、これに応える臓器横断的かつ職種横断的な体制を構築し、指針策定にあたって作成・周知・評価・改訂が継続して実施できる基盤整備をすることである。そのために、次の5つのプロジェクトを計画し実施している。
1.高齢者がん医療に関する教育・研究・診療の実態を知る。
2.高齢者がん診療に関するエビデンスや情報を集積し、Q&Aの形で整理する。
3.診療の指針策定にあたって作成・周知・評価・改訂が継続して実施できる体制を構築する。
4.高齢者がん医療に精通する医療人を育成する。
5.高齢者がん診療指針を作成するためのマニュアルを作成する。
1.高齢者がん医療に関する教育・研究・診療の実態を知る。
2.高齢者がん診療に関するエビデンスや情報を集積し、Q&Aの形で整理する。
3.診療の指針策定にあたって作成・周知・評価・改訂が継続して実施できる体制を構築する。
4.高齢者がん医療に精通する医療人を育成する。
5.高齢者がん診療指針を作成するためのマニュアルを作成する。
研究方法
1.老年医学・腫瘍学の教育・研究・診療の日本の実態をを調査する。卒前(医学部)、医学研究科(大学院)教育において系統だった教育・研究が行われているかをアンケート方式で調査した。さらに地域がん診療連携拠点病院(以下、拠点病院)において高齢がん患者の診療の実態を調査した。
2.高齢者のがん患者の診断・治療、検診ならびに社会・経済的な課題をできるだけ客観的に情報を収集・整理し、各領域の専門家に依頼してQ&A方式で執筆する。
3.本研究班をサポートし、高齢者がん診療の指針策定にあたって作成・周知・評価・改訂が継続して実施できるがん関連学会・団体が参加する高齢者がん医療協議会(コンソーシアム)を設置する。
4.Q&Aの作成、協議会による研修会や公開討論会を通して高齢者がん医療に精通する医療人を育成する
5.「高齢者がん診療指針」策定に必要なマニュアルを用意し、がん関連学会が作成する各がん種における診療指針の中で、高齢者の項を作成する指針として利用いただく。
2.高齢者のがん患者の診断・治療、検診ならびに社会・経済的な課題をできるだけ客観的に情報を収集・整理し、各領域の専門家に依頼してQ&A方式で執筆する。
3.本研究班をサポートし、高齢者がん診療の指針策定にあたって作成・周知・評価・改訂が継続して実施できるがん関連学会・団体が参加する高齢者がん医療協議会(コンソーシアム)を設置する。
4.Q&Aの作成、協議会による研修会や公開討論会を通して高齢者がん医療に精通する医療人を育成する
5.「高齢者がん診療指針」策定に必要なマニュアルを用意し、がん関連学会が作成する各がん種における診療指針の中で、高齢者の項を作成する指針として利用いただく。
結果と考察
1.高齢者がん医療の教育・研究・診療の実態
・教育・研究・診療の実態は、学部教育では、老年医学講座があるのは14校(29%)、老年医学の系統だった教育実施施設は23校(48%)であった。医学研究科における高齢者がん医療に関する研究は2校(5%)のみで、拠点病院において老年科設置施設が3%、老年病専門医のいる施設は13%で、老年腫瘍科のある病院は皆無であった。
2.高齢者がん医療Q&A
各領域の専門家がQ&Aの形で、高齢者のがん診療の基本的な考え方から各領域の課題を抽出・整理して総論的にまとめ、査読、パブリックコメントを得て修正、完成した。
3.高齢者がん医療協議会(コンソーシアム) の設立と活動
・班員、25のがん関連学会・団体の協力を得て2019年1月19日に設立した。その目的は本研究班のプロジェクトを支援し、高齢者がん診療指針策定・周知・評価・改訂に寄与することである。また、機能的に運営するために運営委員会を設置した。
・「高齢者のがん医療を考える会議1ならびに2」、研修会ならびに公開討論会を開催し、高齢のがん医療の現状と課題について議論した。
・高齢がん患者の外科治療について外科委員会を設置することが決定された。
4.専門医療人の育成
高齢者のがん医療Q&Aの執筆、研修会を通してがん診療に精通する医療者の育成を行っている。参加者ははじめて聞く内容も多く勉強になったと評価されている。
5.「高齢がん患者の診療指針」策定のための骨子作成
日本における高齢者のがん診療の考え方について議論し、「高齢がん患者の診療指針(総論編)」を用意して、取り上げるべき項目の整理を行った。
考察
・日本の老年腫瘍学の教育・研究、高齢者のがん診療の現状の調査結果からは、老年医学・腫瘍学の系統だった教育や研究、診療がなされていないことがわかった。第3期がん対策推進基本計画ではライフステージに応じたがん対策があげられており、これらの充実にむけて、すべてのstakeholder、とくに関係省庁の取り組みに期待したい。
・エビデンスが少ない中、Q&Aの形で現在まで蓄積された情報をまとめ(総論)、公表できたことは医療者、患者双方にとって有意義なことである。診療ガイドライン作成にあたって有用な情報源となるはずである。
・診療ガイドライン策定にあたって診療の考え方をまとめ、適切なプロセスを経て普及・推進することを前提に関係省庁を含めての議論に期待したい。
・ガイドラインの作成・周知・評価・改訂が継続的に実施される組織としての協議会は、本研究班と連携し指針策定、人材育成、研究に取り組んでいくことが期待される。
・教育・研究・診療の実態は、学部教育では、老年医学講座があるのは14校(29%)、老年医学の系統だった教育実施施設は23校(48%)であった。医学研究科における高齢者がん医療に関する研究は2校(5%)のみで、拠点病院において老年科設置施設が3%、老年病専門医のいる施設は13%で、老年腫瘍科のある病院は皆無であった。
2.高齢者がん医療Q&A
各領域の専門家がQ&Aの形で、高齢者のがん診療の基本的な考え方から各領域の課題を抽出・整理して総論的にまとめ、査読、パブリックコメントを得て修正、完成した。
3.高齢者がん医療協議会(コンソーシアム) の設立と活動
・班員、25のがん関連学会・団体の協力を得て2019年1月19日に設立した。その目的は本研究班のプロジェクトを支援し、高齢者がん診療指針策定・周知・評価・改訂に寄与することである。また、機能的に運営するために運営委員会を設置した。
・「高齢者のがん医療を考える会議1ならびに2」、研修会ならびに公開討論会を開催し、高齢のがん医療の現状と課題について議論した。
・高齢がん患者の外科治療について外科委員会を設置することが決定された。
4.専門医療人の育成
高齢者のがん医療Q&Aの執筆、研修会を通してがん診療に精通する医療者の育成を行っている。参加者ははじめて聞く内容も多く勉強になったと評価されている。
5.「高齢がん患者の診療指針」策定のための骨子作成
日本における高齢者のがん診療の考え方について議論し、「高齢がん患者の診療指針(総論編)」を用意して、取り上げるべき項目の整理を行った。
考察
・日本の老年腫瘍学の教育・研究、高齢者のがん診療の現状の調査結果からは、老年医学・腫瘍学の系統だった教育や研究、診療がなされていないことがわかった。第3期がん対策推進基本計画ではライフステージに応じたがん対策があげられており、これらの充実にむけて、すべてのstakeholder、とくに関係省庁の取り組みに期待したい。
・エビデンスが少ない中、Q&Aの形で現在まで蓄積された情報をまとめ(総論)、公表できたことは医療者、患者双方にとって有意義なことである。診療ガイドライン作成にあたって有用な情報源となるはずである。
・診療ガイドライン策定にあたって診療の考え方をまとめ、適切なプロセスを経て普及・推進することを前提に関係省庁を含めての議論に期待したい。
・ガイドラインの作成・周知・評価・改訂が継続的に実施される組織としての協議会は、本研究班と連携し指針策定、人材育成、研究に取り組んでいくことが期待される。
結論
高齢者がん医療に関し、教育・研究・診療において系統だった対策は十分でなく、専門家も極めて少ない。高齢者がん医療協議会(コンソーシアム)と本研究班が連携し、本邦に適した高齢者がん診療の考え方をまとめ、幅広い議論を行い、関連する学会やアカデミア等においても基盤整備の導入を推進していく。
公開日・更新日
公開日
2019-10-15
更新日
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