生まれ年度による罹患リスクに基づいた実効性のある子宮頸癌予防法の確立に向けた研究

文献情報

文献番号
201808024A
報告書区分
総括
研究課題名
生まれ年度による罹患リスクに基づいた実効性のある子宮頸癌予防法の確立に向けた研究
課題番号
H29-がん対策-一般-024
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
上田 豊(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学)
研究分担者(所属機関)
  • 平井 啓(大阪大学大学院人間科学研究科)
  • 中山 富雄(国立がん研究センター 社会と健康研究センター)
  • 宮城 悦子(横浜市立大学大学院医学系研究科産婦人科学)
  • 榎本 隆之(新潟大学大学院医歯学系産科婦人科学)
  • 池田 さやか(公財)東京都保健医療公社多摩北部医療センター)
  • 八木 麻未(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
6,576,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HPVワクチンの積極的勧奨の差し控えは現在も継続されており、生まれ年度により接種状況が大きく異なる。当研究では、有効性の速やかな評価、積極的な勧奨の差し控えによる影響の把握(生まれ年度による頸癌罹患リスクの違い)、ワクチン導入後世代の検診受診行動の把握とその対策、ワクチンの利益・不利益に関する認識の調査と積極的勧奨の再開時の普及手法の開発を実施する。
研究方法
(1)生まれ年度の頸癌罹患リスク評価とワクチンの有効性検証
精密検査結果が確定している2009~2016年度の20歳(20歳時未受診者は21歳)の検診データを収集し、細胞診異常・前癌病変の頻度を年度毎に比較する(生まれ年度:1989~1996年度)。
(2)ワクチン接種世代における接種者・非接種者の検診受診行動の把握
1995年度・1996年度生まれ(接種率約7割)において、各個人のワクチン接種歴と20歳(20歳時未受診者は21歳)時の子宮頸がん検診(2015~2017年度)受診率を調査し、接種世代の接種者・非接種者の検診受診率を算出する。
(3)ワクチン接種世代の接種者・非接種者のリスク認識の調査と、それに基づくワクチンの接種の有無別の検診受診勧奨手法の開発
ワクチン導入後世代の 20・21歳に対するインターネット調査にて、接種者・非接種者にそれぞれ接種者用・非接種者用の検診受診勧奨メッセージを提示し、検診受診意向の変化を調査し、接種者・非接種者それぞれに効果的な子宮頸がん検診受診勧奨リーフレットを作成する。協力自治体においてリーフレットの効果を検証する。
(4)ワクチンの利益・不利益の認識の調査と、ワクチン接種の積極的勧奨の再開後のワクチンの普及(接種率向上)のための手法の開発
HPVワクチンの積極的勧奨再開の見込みが未だ不詳であるため、インターネット調査およびリーフレット作成は、これをより適時的に行うために2019年度に先送りすることとした。
結果と考察
(1)生まれ年度の頸癌罹患リスク評価とワクチンの有効性検証
松山市のデータの解析において、1991年度~1993年度生まれはワクチン接種の機会のなかった世代(接種率0%)であり、20歳(未受診者は21歳)の子宮頸がん検診でのCIN 3以上の発見率は0.09%(7/7872)であったが、1994年度~1996年度生まれ(接種率79%)では0%(0/7389)に有意に低下していた(p=0.016)。このCIN 3 以上の予防効果の証明は本邦での最初の報告である(Yagi A et al. Vaccine. 2019;37:2889-2891)。
(2)ワクチン接種世代における接種者・非接種者の検診受診行動の把握
1995年度生まれのいわき市・豊中市の20歳(未受診者は21歳)の子宮頸がん検診のデータにおいて、ワクチン接種率は64.3%(940/1461)で、接種者の子宮頸がん検診受診率は6.4%(112/1753)、非接種者の受診率は3.6%(38/974)であり、接種者の受診率が非接種者に比して有意に高い(p<0.01)ことがすでに明らかとなった(論文投稿中)。
(3)ワクチン接種世代の接種者・非接種者のリスク認識の調査と、それに基づくワクチンの接種の有無別の検診受診勧奨手法の開発
20歳・21歳の接種者・非接種者に対するインターネット調査を行った。接種者に比して非接種者では、子宮頸がんの罹患者数や死亡者数を極端に少なく見積もる傾向が強く(それぞれp=0.12、p=0.012)、また家族の健康意識も低い傾向であった(それぞれp=0.23、p=0.11)。これらをもとに、接種者・非接種者それぞれに対するメッセージを含んだ検診受診勧奨リーフレット案を提示したところ、いずれの群においても、検診受診意向は有意に上昇した。これらリーフレットの効果を検証するために、茨木市・枚方市の2018年12月の検診受診再勧奨において、接種者・非接種者それぞれに対して、これらリーフレットと従来の案内とのランダム化試験を実施した(2019年度より前倒しで実施)。現在、このデータを収集中である。
(4)ワクチンの利益・不利益の認識の調査と、ワクチン
ワクチン対象年齢の娘を持つ母親に対するインターネット調査を行い、普及のためのリーフレットの作成とその効果検証を行う予定であったが、HPVワクチンの積極的勧奨再開の見込みが未だ不詳であるため、2019年度に先送りすることとした。
結論
ワクチン導入によるCIN 3 以上の予防効果については本邦で初めての証明となった。また、ワクチン接種世代の接種者・非接種者では20歳の子宮頸がん検診受診率が有意に異なり、今後、接種者と非接種者のセグメントに分けた勧奨が必要となる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2019-11-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201808024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,548,000円
(2)補助金確定額
8,518,000円
差引額 [(1)-(2)]
30,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 19,385円
人件費・謝金 908,063円
旅費 972,144円
その他 4,647,338円
間接経費 1,972,000円
合計 8,518,930円

備考

備考
930円は自己資金

公開日・更新日

公開日
2020-04-08
更新日
-