地域包括ケアにおけるがん診療連携体制の構築に資する医療連携と機能分化に関する研究

文献情報

文献番号
201808023A
報告書区分
総括
研究課題名
地域包括ケアにおけるがん診療連携体制の構築に資する医療連携と機能分化に関する研究
課題番号
H29-がん対策-一般-023
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
松本 禎久(国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 緩和医療科)
研究分担者(所属機関)
  • 荒尾 晴惠(大阪大学大学院・医学系研究科保健学専攻)
  • 川越 正平(あおぞら診療所 在宅診療所)
  • 浜野 淳(筑波大学医学医療系臨床医学域(総合診療学・緩和医療学)/筑波大学付属病院医療連携患者相談センター総合診療・家庭医療・緩和医療)
  • 後藤 功一(国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 呼吸器内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
4,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 わが国の高齢化は、諸外国に類を見ないスピードで進行し、医療や介護の需要がさらに増加する。特に都市部において超高齢社会への対応が急務となっている。がん診療拠点病院(以下、拠点病院)において抗がん治療を受けている患者は約6割、がんによる死亡のうち拠点病院以外での死亡は6割であり、拠点病院を中心としたがんに限定した連携体制では不十分であり、拠点病院以外の病院やかかりつけ医、高齢者向け施設との連携に基づいて行う地域完結型の包括的ながん診療連携体制が必要となる。一方で、包括的ながん診療連携モデルは乏しく、地域包括ケアシステムを基盤としたがん診療連携モデルの構築が必要である。
 本研究では、地域包括ケアシステムを基盤とした診断・治療・併存症の治療・終末期ケアまでを含む包括的ながん診療連携モデルの開発を行うことを目的とする。
研究方法
 研究は、地域包括ケアシステムにおけるがん診療連携に関して、医療者を対象としたインタビューの質的調査および質問紙調査による量的調査を行う。
 はじめに緩和ケアおよび在宅医療に先進的に取り組んでいる東葛北部二次医療圏の拠点病院および拠点病院以外の病院、かかりつけ医、在宅医療機関、緩和ケア病棟、各市医師会、各市行政担当部門、高齢者向け施設の担当者にインタビュー調査を行い、質的分析を行う。次いで、質的研究をもとに、2年次に実施する実態調査の質問紙を作成し、当該地域における実態調査を行い、量的分析を行う。質問紙は、がん診療連携に関する現状、好ましい取り組み、課題、連携先に求めること、自機関で担当できること、課題に対する解決策についてなど多面的な内容を尋ねるものとする。
 最終的には、地域包括ケアにおける望ましいがん診療連携についてのガイドを作成し、ガイドブックに基づく連携モデルの実施可能性および予備的な効果を検討することを目標とする。
また、診療所医師が患者・家族と行っているアドバンスケアプランニング(ACP) discussionの実態を明らかにするために、全国17か所の診療所に勤務する22名の医師が定期的に診察する65歳以上の患者を対象として、診療録に記載してあるACP discussionを調査する。
結果と考察
 平成30年度は、主に平成29年度に行ったインタビュー調査の質的分析および質的分析に基づく質問紙調査を実施した。
 質的研究では、望ましいがん診療連携は23のカテゴリに集約され、がん診療連携の困難は、12のカテゴリに集約された。診断期から終末期を見据えた地域包括ケアでの診療連携を構築する必要性、診療情報だけでなく患者の感情や価値観、希望を情報として共有するシステムの構築、治療期からACPの作成を導入すること、医療、介護者の教育及び人材育成、患者側への地域包括ケアの理解を促す教育やACPについての教育を進めていく必要性が示唆された。
 質的分析の結果から重要と考えられる項目に基づき質問紙を作成し、地域包括ケアのモデル事例とされている柏市内に勤務地がある医療従事者、介護従事者、行政職医療従事者、介護従事者、行政職859名を対象とした質問紙調査を実施した。平成31年3月末の時点で質問紙調査の集計を開始している。
 また、ACP discussionの実態を明らかにする研究では、我が国の診療所外来において、がん患者が定期的に通院している頻度は多くないこと、および診療所外来では65歳以上の患者の約20%が診療所医師と少なくとも1つの事柄についてACP discussionを行っていることが明らかになった。地域包括ケアにおけるがん患者・家族への意思決定支援を推進するにあたって、今後は、がん患者が定期通院している地域の中小病院において、患者と主治医の間で行われているACP discussionの実態を明らかにすることが必要と考えられた。
結論
 平成29年度は、医療従事者および介護従事者88名を対象にインタビュー調査を完遂し、平成30年度に質的分析を行った。質的分析からは、診断期から終末期を見据えた地域包括ケアでの診療連携を構築する必要性、診療情報だけでなく患者の感情や価値観、希望を情報として共有するシステムの構築、治療期からACPを導入すること、医療、介護者の教育及び人材育成、患者側への地域包括ケアの理解を促す教育やACPについての教育を進めていく必要性が示唆された。今後は、平成30年度に実施した質問紙調査について量的分析を行い、ガイドブック作成を行う予定である。
 また、地域包括ケアにおけるがん患者・家族への意思決定支援を推進するにあたって、今後は、がん患者が定期通院している地域の中小病院において、患者と主治医の間で行われているACP discussionの実態を明らかにすることが必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2019-10-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2019-10-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201808023Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,301,000円
(2)補助金確定額
6,082,000円
差引額 [(1)-(2)]
219,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,369,779円
人件費・謝金 217,119円
旅費 602,628円
その他 439,468円
間接経費 1,454,000円
合計 6,082,994円

備考

備考
994円は自己資金

公開日・更新日

公開日
2020-04-08
更新日
-