文献情報
文献番号
201808020A
報告書区分
総括
研究課題名
がん対策の進捗管理のための指標と測定の継続的な発展に向けた研究
課題番号
H29-がん対策-一般-020
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
東 尚弘(国立研究開発法人 国立がん研究センター がん対策情報センターがん登録センター)
研究分担者(所属機関)
- 小川 千登世(国立がん研究センター 中央病院 小児腫瘍科)
- 樋田 勉(獨協大学 経済学部)
- 助友 裕子(日本女子体育大学 体育学部スポーツ健康学科)
- 増田 昌人(琉球大学医学部附属病院 がんセンター)
- 松坂 方士(弘前大学医学部附属病院 医療情報部)
- 若尾 文彦(国立がん研究センター がん対策情報センター)
- 高山 智子(国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報提供部)
- 脇田 貴文(関西大学 社会学部社会学科 心理学専攻)
- 伊藤 ゆり(大阪医科大学 研究支援センター医療統計室)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
13,659,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、がん対策推進基本計画に定める進捗評価指標について、以前からの研究班における検討を引き継ぎ、これまでの指標・測定の改善を行うとともに、また、本年度改訂された第3期がん対策推進基本計画に適合させて適切な指標を策定・測定体制の構築を目的としている。これまでは、指標の見直しを行うとともに、患者体験調査の質問紙設計と解析方法の検討、および、未測定指標の測定、都道府県との連携の模索などを行ってきた。今年度は3か年計画の2年目であり、大別して、①患者体験調査の設計、②小児患者体験調査の設計、③未測定指標の測定(がん教育)、④都道府県との連携、⑤がん対策評価における数理モデルの活用、のそれぞれのテーマにおいて進めていくことを目的とする。
研究方法
①患者体験調査の設計:病院ではない場におけるがん患者の経済的な負担状況や孤立状況に関する情報を網羅的に把握するため、がん関連の患者支援団体を通して調査協力を呼びかけ、協力の得られた4支援団体、4名に対して、約90分程度のフォーカス・グループ・インタビューを実施した。また、方法論の検討として、患者体験調査のデータを用いて、欠測データの処理方法の検討や、Web調査を用いた患者体験調査の実施可能性についての検討を行った。②小児患者体験調査の設計:小児がん患者を対象とした患者体験調査の設計をするために、1)サンプリング方法、2)調査票について、患者会の関係者等からのインタビューによる意見収集、がん対策推進協議会での検討を行い決定した。③未測定指標の測定(がん教育):文部科学省が行っている、がんの教育総合支援事業の担当部署である初等中等教育局健康教育・食育課がん教育推進係取り纏めの事業実施校の児童生徒を対象アンケート結果のうち、平成28年度版データの提供を受けた。これをアンケート調査は平成28年度のモデル校172校(24道県2市)のデータを、小学校7道県、中学校20道県、高等学校19道県の校種別に層化して解析を行った。④都道府県との連携:青森県では、がん診療連携拠点病院の指定において大きな動きがあった。地域がん診療連携拠点病院が以前は6施設あったものが、3施設に減少し、その結果、がん診療連携拠点病院のない医療圏が増加している。これらの要因を検討した。沖縄県においては、国のがん対策推進基本計画の指標を見直すために、ロジックモデルを用いて、分野ごとにロジックモデルの表に落とし込む。その上で、分野アウトカム、中間アウトカム、施策、それぞれの指標について、検証した。そのうえで、沖縄県のがん計画における評価指標を検討した。⑤がん対策評価における数理モデルの活用:今後のがん対策評価に資するために、海外の事例についてはPubmedおよびInternet検索により“cancer control”, “simulation”, “microsimulation”等のキーワードにより、がん対策に数理モデルを活用するための研究や実際に対策に実装された事例を収集した。
結果と考察
患者体験調査の質問紙はパイロット・面接による改訂を繰り返して文言などの修正を行った。またがん対策推進協議会の承認、および倫理審査委員会の承認を得て完成とした。その後は厚生労働省委託事業として施設に協力を得て調査を行っている。また、今後郵送調査だけではなく、Web調査などを組み合わせて実施していく可能性を探るために、ネット調査の登録パネルのがん患者を対象として、ランダムに割り付けをして、郵送調査、質問紙調査を行った。その結果いくつかの項目については差異を認めており、その検討を続けている。未測定指標については、特に小児がん患者の患者体験調査の準備を行った。実際には患者団体の代表者との意見交換を経て、成人の患者体験調査の質問項目を改変し、また、その調査方法についての意見交換を行った。がん教育についても、未測定であったものを文科省のモデル事業に際しての調査データを入手し、指標に相当する部分の集計を行った。今年度の成果としては、着実に研究目標に向けて、各種の研究・調査活動を準備して、一部の結果が出始めて、一義的な解析を開始した段階にある。特に本研究の結果をもとに、患者体験調査の質問紙は確定し、全国の病院の協力を得て調査を実施し、次年度に解析を行っていく段階となっている。
結論
3年計画の2年目であり、計画された調査・研究において実施が進んでいるところである。様々な段階を経たうえで、がん対策評価の中心的存在である、患者体験調査は進んでおり、3年目内には結果を報告する予定である。また、今後を踏まえたがん対策評価の方向性についても都道府県連携なども含めて今後検討をしていく。
公開日・更新日
公開日
2020-01-14
更新日
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