がん患者の健康増進および患者と家族の社会的問題の解決に資する乳がんサバイバーシップコホート研究

文献情報

文献番号
201808019A
報告書区分
総括
研究課題名
がん患者の健康増進および患者と家族の社会的問題の解決に資する乳がんサバイバーシップコホート研究
課題番号
H29-がん対策-一般-019
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
山本 精一郎(国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター 保健社会学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 溝田 友里(国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター 保健社会学研究部 健康増進科学研究室)
  • 岩瀬 拓士(名古屋第一赤十字病院 乳腺内分泌外科)
  • 岩田 広治(愛知県がんセンター 中央病院乳腺科部)
  • 大橋 靖雄(中央大学 理工学部 人間総合理工学科)
  • 澤木 正孝(愛知県がんセンター 中央病院乳腺科部)
  • 平 成人(岡山大学病 乳腺・内分泌外科)
  • 向井 博文(国立研究開発法人 国立がん研究センター 東病院乳腺・腫瘍内科)
  • 吉田 輝彦(国立研究開発法人 国立がん研究センター 研究所 基盤的臨床開発研究コアセンター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
13,285,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
がん患者の健康増進やサバイバーシップの支援の必要性が高まっているにも関わらず、再発予防や予後改善に効果のあるmodifiableな生活習慣等の要因は世界的にも明らかになっていない。そこで本研究は、乳がん患者に対する大規模前向きコホート研究を行うことにより、様々な要因(食事や喫煙、飲酒、身体活動など生活習慣、就労や社会活動、サポート、生きがいなど心理社会的要因等)が予後(再発、死亡等)や合併症(リンパ浮腫等)、QOLに与える影響を疫学的に調べることを目的とする。
また、その成果を患者支援の実践につなげるため、再発予防のための患者の生活指針、支援指針の作成など、エビデンスに基づいたサバイバーシップ支援の具体的なあり方を提案し、患者、家族、医療関係者、行政等に研究成果を提供する。
研究方法
本研究は、H19年度厚労科研がん臨床研究事業より11年間継続している。H19年末から対象者登録を開始し、H28年度末時点で全国から登録数4,235人を登録しベースラインデータを得た。また本研究と並行して研究代表者の所属する国立がん研究センターの中央病院日常診療においても、乳がん患者コホート研究を実施し、データを収集している。これらを合わせるとすでに世界最大級のがん患者コホートとなっている。
本研究期間は1年目で新規対象者登録を終了するが、研究参加者のデータの収集は術後(登録後)5年時点までを継続するため、引き続き行う。また、4つのサブコホートのうち2つは1年目で予後追跡期間終了となるため、2年目より予後情報を用いた解析を開始し、3年目までに各要因と予後との関連に関する解析結果の公表を行う。
結果と考察
今年度は、対象者登録中だったコホート瀬戸内について、2018年2月で新規登録を終了し追跡期間に入った。すでに予後追跡期間に入っている3つのコホートは、対象者の通院する全国の医療機関から臨床情報および予後情報を収集し、データベース化を進めた。論文化については、研究デザイン論文が出版されたところである
また、がん患者のサバイバーシップ支援として、研究班ウェブサイトを月1回ペースで更新し、研究の進捗や国内外の最新の知見の紹介を行っている。

1)対象者登録とベースラインデータの収集
対象者登録中だったコホート瀬戸内についても、昨年度253人を登録できたため(合計1,932人)、2018年2月で新規登録を終了し、追跡期間に入っている。自記式質問票によるベースラインデータ収集は登録時(術前)から術後5年まで継続するため、今後も引き続き対象者への質問票の配布と回収を行う。

2)臨床情報、予後情報の収集
すでに新規登録を終え、予後追跡期間に入った3つのコホートについて、対象者の通院する全国の施設から臨床情報を収集した。データの確認を行い、不明な点等を各施設に確認し、修正を進めた。予後情報については、2つのコホートについて、昨年度2017年10月、12月に予後追跡期間が終了したため、今年度は予後情報の収集を中心に行った。現在ほぼ予後情報のデータ収集を終え、いくつかのクエリを行っているところである。

3)データベースの作成と解析
患者記入の質問票データ、施設から収集する臨床情報、予後情報をまとめたデータベースの作成を進めた。データクリーニングを行い、必要が生じた場合はその都度、各医療施設にデータの確認を行っている。また、質問票データ(ベースラインデータ)と臨床情報を用い、対象者の属性等基礎情報の集計を行った。

4)研究成果の普及
本研究用ホームページ(国立がん研究センターのサーバー内に立ち上げ)を通じ、月1回ペースで更新し、研究の進捗や研究成果の紹介を行った。
結論
がん患者における予後と、食事や肥満などとの関連をみる臨床試験やコホート研究は、欧米でようやく開始され始めたものの、エビデンスレベルの高い研究は数も少なく、十分なエビデンスは得られていない。また、わが国においては、全国に渡る大規模がん患者コホート研究は本研究のみである。そのため、世界中において再発を防ぐためにどのような療養生活を送ればよいか明らかになっていない。
そこで、本研究成果を、国際的には、国際誌や国際学会で報告するとともに、国内、国際的なガイドラインに組み込んでいく予定である。

公開日・更新日

公開日
2019-10-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201808019Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,270,000円
(2)補助金確定額
17,248,000円
差引額 [(1)-(2)]
22,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 251,074円
人件費・謝金 3,303,224円
旅費 900,413円
その他 8,809,178円
間接経費 3,985,000円
合計 17,248,889円

備考

備考
計算上の繰り上げ、繰り下げによる差異。
千円未満の端数(889円)は自己資金である。

公開日・更新日

公開日
2020-04-07
更新日
-