文献情報
文献番号
                      201808002A
                  報告書区分
                      総括
                  研究課題名
                      小児期に発症する遺伝性腫瘍に対するがんゲノム医療体制実装のための研究
                  研究課題名(英字)
                      -
                  課題番号
                      H29-がん対策-一般-002
                  研究年度
                      平成30(2018)年度
                  研究代表者(所属機関)
                      熊本 忠史(国立研究開発法人国立がん研究センター (1)中央病院小児腫瘍科、(2)中央病院遺伝診療部門)
                  研究分担者(所属機関)
                      - 中川原 章 (佐賀国際重粒子線がん治療財団)
 - 恒松 由記子(順天堂大学医学部小児科学講座)
 - 金子 安比古(埼玉県立がんセンター血液内科 )
 - 鈴木 茂伸(国立がん研究センター中央病院眼腫瘍科 )
 - 川井 章(国立がん研究センター中央病院骨軟部腫瘍・リハビリテーション科)
 - 田尻 達郎 (京都府立医科大学医学研究科小児腫瘍外科)
 - 中野 嘉子(大阪市立大学大学院医学研究科・医学部ゲノム免疫学)
 - 真部 淳 (聖路加国際大学聖路加国際病院小児科 )
 - 高木 正稔(東京医科歯科大学院医歯学総合研究科茨城県小児・周産期地域医療学講座)
 - 服部 浩佳(名古屋医療センター臨床研究センター予防治療研究室 )
 - 宮坂 実木子(国立成育医療研究センター小児放射線診断科)
 - 野崎 太希(聖路加国際大学聖路加国際病院放射線診断科)
 - 滝田 順子(京都大学大学院医学研究科・発達小児科学)
 - 舩戸 道徳 (長良医療センター第二小児科、再生医療研究室)
 - 伊藤 道哉(東北医科薬科大学医学部 )
 - 田村 智英子 (MC東京クリニック医療情報遺伝カウンセリング)
 - 田代 志門(国立がん研究センター社会と健康研究センター生命倫理研究室 )
 - 掛江 直子(国立成育医療研究センター臨床研究開発センター)
 - 濱島 ちさと(帝京大学・ 医療技術学部)
 
研究区分
                      厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 がん対策推進総合研究
                  研究開始年度
                      平成29(2017)年度
                  研究終了予定年度
                      令和1(2019)年度
                  研究費
                      7,730,000円
                  研究者交替、所属機関変更
                      所属機関異動
研究分担者:中川原 章
所属機関名:佐賀医療センター好生館ー→佐賀国際重粒子線がん治療財団
研究分担者:中野嘉子
所属機関名:国立がん研究センター→大阪市立大学
研究分担者:滝田順子
所属機関名:東京大学ー→京都大学
研究分担者:濱島ちさと
所属機関名:国立がん研究センター→帝京大学
                  研究報告書(概要版)
研究目的
            我が国においてがんゲノム医療提供体制を実装するために、特に小児期およびAYA世代に発症する遺伝性腫瘍に焦点を当て、それらを横断的に扱う診療ガイドライン(GL)を整備し、政策として提言することである。これを達成するため、(1)小児に遺伝学的検査を実施する際の小児およびその家族に対する遺伝カウンセリングを横断的に扱ったGL、(2)多岐に渡る遺伝性腫瘍を個別に扱ったGLの整備を主要研究目標とした。
      研究方法
            (1)小児に遺伝学的検査を実施する際の小児およびその家族に対する遺伝カウンセリングを横断的に扱ったGLの整備:
田村を主研究担当者としたLFS班(熊本、恒松、中野、田代、掛江)グループ会議において、LFSを対象に、国内外の遺伝性腫瘍の指針、研究などを吟味して、遺伝カウンセリングの要点をまとめ、また、LFS患者およびその家族に対する説明文書・アセント文書を作成する。これらの最終案は、がんの子どもを守る会、日本小児血液・がん学会、日本家族性腫瘍学会などからコンセンサスを得る。
(2)多岐に渡る遺伝性腫瘍を個別に扱ったGLの整備:
(2-1)LFSの診療GLの作成:濱島の指導の下、LFS班グループ会議でAnalytic Framework (AF)およびClinical Question (CQ)を作成し、Systematic Review (SR)班(濱島他研究協力者3名)においてLFS関連論文についてSRを行い、Evidence Reportを作成する。これに基づいてCQに対する推奨・GLを作成する。
(2-2)遺伝性網膜芽細胞腫(RB)のGL作成:LFSのGL作成手順を参考に(RB)班(鈴木、服部、熊本)グループ会議にてAFとCQを作成、SR班によるSRの後に、GLを作成する。
(2-3) 多岐にわたる遺伝性腫瘍のGLの整備:米国がん学会がClinical Cancer Research誌に公表した小児期/AYA世代に発症する遺伝性腫瘍の推奨サーベイランス法を中心とした、フォローアップとケアの基準に関する17件の論文のうち15件について、26名の担当者を配置し、レビューワークを行い、これらを論文化する。日本小児血液・がん学会のレビューを受ける。
(3)今後の研究課題を探索することを目的に、本邦における遺伝性腫瘍診療について実態調査を行う。
      田村を主研究担当者としたLFS班(熊本、恒松、中野、田代、掛江)グループ会議において、LFSを対象に、国内外の遺伝性腫瘍の指針、研究などを吟味して、遺伝カウンセリングの要点をまとめ、また、LFS患者およびその家族に対する説明文書・アセント文書を作成する。これらの最終案は、がんの子どもを守る会、日本小児血液・がん学会、日本家族性腫瘍学会などからコンセンサスを得る。
(2)多岐に渡る遺伝性腫瘍を個別に扱ったGLの整備:
(2-1)LFSの診療GLの作成:濱島の指導の下、LFS班グループ会議でAnalytic Framework (AF)およびClinical Question (CQ)を作成し、Systematic Review (SR)班(濱島他研究協力者3名)においてLFS関連論文についてSRを行い、Evidence Reportを作成する。これに基づいてCQに対する推奨・GLを作成する。
(2-2)遺伝性網膜芽細胞腫(RB)のGL作成:LFSのGL作成手順を参考に(RB)班(鈴木、服部、熊本)グループ会議にてAFとCQを作成、SR班によるSRの後に、GLを作成する。
(2-3) 多岐にわたる遺伝性腫瘍のGLの整備:米国がん学会がClinical Cancer Research誌に公表した小児期/AYA世代に発症する遺伝性腫瘍の推奨サーベイランス法を中心とした、フォローアップとケアの基準に関する17件の論文のうち15件について、26名の担当者を配置し、レビューワークを行い、これらを論文化する。日本小児血液・がん学会のレビューを受ける。
(3)今後の研究課題を探索することを目的に、本邦における遺伝性腫瘍診療について実態調査を行う。
結果と考察
            (1)LFS患者およびその家族への説明文書「リー・フラウメニー症候群について」第1.6版まで作成した。(2-1)で作成中のEvidence reportとの整合性をとり、最終案を作成する。最終案に基づいてSOP文書の最終案を作成し、学会、患者会などのレビューを受ける。
(2-1)約5000件のLFS関連論文のSRを終了した。現在Evidence report作成がほぼ完了している。
(2-2)令和元年度に開始予定
(2-3)15件の論文のレビューワークを実施し、論文化した。現在日本小児血液・がん学会のレビューを受けている。
(3)中野らによりアンケート用紙を作成し、日本小児血液・がん学会研修施設代表者112施設にこれをメール配信し、82施設より回答を得た。結果を解析し、学会などで公表し、現在論文化し英文雑誌に投稿中である。
海外ではカナダ、アメリカ、イギリスなど6カ国で、12のLFSがんサーベイランスプログラムが進行中である。採用されているがんサーベイランス法のほとんどが、カナダの「トロント・プロトコール」を基盤として、全身MRIを中心に定期的な画像検査、血液検査などが行われている。これらは臨床研究として実施されており、がんサーベイランスがLFS患者の予後にどのような影響を及ぼすかは未確定である。しかし、高陽性率であることに改善の余地はあるものの、がん検出率は高く、また、検出されるがんの多くが早期がんで、早期治療につなげることが可能であるとの報告は多く、がんサーベイランスが有効である可能性は否定できない。本邦においても本研究結果をもとに、がんサーベイランスや遺伝カウンセリングを含めた包括的な前方視的臨床試験を立案・実施し、遺伝性腫瘍診療体制構築につなげなければならない。
      (2-1)約5000件のLFS関連論文のSRを終了した。現在Evidence report作成がほぼ完了している。
(2-2)令和元年度に開始予定
(2-3)15件の論文のレビューワークを実施し、論文化した。現在日本小児血液・がん学会のレビューを受けている。
(3)中野らによりアンケート用紙を作成し、日本小児血液・がん学会研修施設代表者112施設にこれをメール配信し、82施設より回答を得た。結果を解析し、学会などで公表し、現在論文化し英文雑誌に投稿中である。
海外ではカナダ、アメリカ、イギリスなど6カ国で、12のLFSがんサーベイランスプログラムが進行中である。採用されているがんサーベイランス法のほとんどが、カナダの「トロント・プロトコール」を基盤として、全身MRIを中心に定期的な画像検査、血液検査などが行われている。これらは臨床研究として実施されており、がんサーベイランスがLFS患者の予後にどのような影響を及ぼすかは未確定である。しかし、高陽性率であることに改善の余地はあるものの、がん検出率は高く、また、検出されるがんの多くが早期がんで、早期治療につなげることが可能であるとの報告は多く、がんサーベイランスが有効である可能性は否定できない。本邦においても本研究結果をもとに、がんサーベイランスや遺伝カウンセリングを含めた包括的な前方視的臨床試験を立案・実施し、遺伝性腫瘍診療体制構築につなげなければならない。
結論
            LFS患者およびその家族への説明文書「リー・フラウメニー症候群について」を作成中である。
診療GLの整備研究では、LFS関連文献のSRを終了、Evidence Report作成をほぼ終了した。各遺伝性腫瘍に対しては、米国がん学会が策定した推奨サーベイランスの基準のレビューワークを行い論文化した。また、本邦における小児遺伝性腫瘍診療の実態を明らかにし、今後の研究課題を探索する目的で、小児がん診療施設に対してアンケート調査を実施し、結果を公表、論文化した。
以上の研究は我が国のゲノム医療診療体制を実装するための基盤整備につながる。
      診療GLの整備研究では、LFS関連文献のSRを終了、Evidence Report作成をほぼ終了した。各遺伝性腫瘍に対しては、米国がん学会が策定した推奨サーベイランスの基準のレビューワークを行い論文化した。また、本邦における小児遺伝性腫瘍診療の実態を明らかにし、今後の研究課題を探索する目的で、小児がん診療施設に対してアンケート調査を実施し、結果を公表、論文化した。
以上の研究は我が国のゲノム医療診療体制を実装するための基盤整備につながる。
公開日・更新日
公開日
          2020-01-27
        更新日
          -