乳幼児健康診査に関する疫学的・医療経済学的検討に関する研究

文献情報

文献番号
201807018A
報告書区分
総括
研究課題名
乳幼児健康診査に関する疫学的・医療経済学的検討に関する研究
課題番号
H29-健やか-指定-002
研究年度
平成30(2018)年度
研究代表者(所属機関)
山崎 嘉久(あいち小児保健医療総合センター 保健センター)
研究分担者(所属機関)
  • 山縣 然太朗(山梨大学大学院総合研究部医学域社会医学講座)
  • 弓倉 整(弓倉医院)
  • 秋山 千枝子(西山 千枝子) (医療法人社団千実会)
  • 小倉 加恵子(大道会森之宮病院 神経リハビリテーション研究部)
  • 野口 晴子(早稲田大学政治経済学術院 公共経営研究科 医療経済学)
  • 田中 太一郎(東邦大学医学部 健康推進センター)
  • 鈴木 孝太(愛知医科大学医学部 衛生学講座)
  • 佐々木 渓円(実践女子大学 生活科学部食生活科学科)
  • 朝田 芳信(鶴見大学 小児歯科学)
  • 船山 ひろみ(鶴見大学 小児歯科学)
  • 石川 みどり(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
  • 黒田 美保(名古屋学芸大学 ヒューマンケア学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
8,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
乳幼児健康診査(以下、乳幼児健診)で対処すべき疾病や健康課題に対して、疫学的な視点も加味して標準的な健診項目を提示し、医療経済学的にその効果を分析する手法を検討すること、及び、乳幼児健診事業と他の健診事業との連携を視野に入れた政策提言を行うこと。
研究方法
【研究目標1.1】乳幼児健診の標準的な健診項目の提示
厚生労働省の通知(雇児発0911第1号 平成27年9月11日)で示されている医師の診察項目が、本研究班が昨年度抽出したスクリーニング対象疾病、及び日本小児医療保健協議会健康診査委員会委員などが作成した「乳幼児健康診査 身体診察マニュアル」に例示されたスクリーニング対象疾病の把握に妥当であるかを根拠に基づいて検討し、標準的な医師診察項目と対象疾患を作成した。
【研究目標1.2】スクリーニング対象疾患の医療経済学的検討
レセプト情報・特定健診等情報データベース(以下、「NDB」とする。)の第三者提供(特別抽出)データから疾病スクリーニングの効果を分析する手法を検討した。乳幼児健診事業の予算・人員・所要時間を把握するため、2019年1月に全国市町村を対象とした調査を実施した。
【研究目標2】他健康診査等との連携を視野に入れた乳幼児健診のあり方の検討
妊娠期と子育て期のデータ連結についてモデル地域で親の喫煙状況について縦断的に分析した。また、乳幼児健診とのデータ連結を行うため、学校健診でデータ化すべき項目を検討した。特定健診との連携では、乳幼児健診事業において市町村が用いている「カルテ」(医師の診察項目等を示したもの)、および「問診票」(親への質問項目等を示したもの)などの帳票の項目データを用いて、既往症等の項目について分析した。学童期の食の課題を見据えた幼児への食支援事業の事例から、継続的な支援に重要な事項を検討した。また、地域保健全体の中で保健師が乳幼児健康診査にどのような意義や目的を設定しているかについて質的に検討した。
【研究目標3】乳幼児健診を活用した支援の評価モデルの検証
先行研究で示してきた支援の評価手法をモデル地域で試用し、その有効性を検証した。
結果と考察
【研究目標1.1】
標準的な医師診察項目として、疾病のスクリーニングを中心とした医師記入項目、および身体計測の判定や問診による既往症などを把握する保健師記入項目を作成した。3~4か月児健診では、医師記入38項目・保健師記入9項目、1歳6か月児健診では、医師記入25項目・保健師記入22項目、3歳児健診では、医師記入25項目・保健師記入20項目を示し、各診察項目に対する、乳幼児健診で発見する手段(問診、計測値、検査等・検査値、視診、触診、聴診、手技)、判定と対応の考え方を整理するともに、スクリーニング対象疾病の疫学的な根拠である発見の臨界期、治療・介入効果、発症頻度 (国内・海外)、保健指導上の重要性などの根拠を明記した。
【研究目標1.2】
NDBを用いて乳幼児健診を医療経済学的に分析するため、乳児股関節脱臼を対象疾病として、適切な時期での疾病発見による医療費抑制効果、及び先進的なスクリーニング方法の費用対効果測定する計画を厚生労働省に申請し、許可された。来年度抽出データを活用した分析を予定している。
市町村の受診者1人あたりの予算は、健診対象者が1000人以上の市区町村では4,920円、100人~999人の市区町村では5,030~5,510円、50~99人の市区町村では6,940円、1~49人の市区町村では10,230円であった。
【研究目標2】
 市町村が既往症として把握している項目の分析や学校健診で用いられている項目との比較から、personal health record(以下、「PHR」とする。)として市町村が保持するデータになり得ると考えられる項目を示した。乳幼児健診と他の健診事業との連携について、昨年度提示した生涯を通じた健康の保持を目的とする基本領域にPHRとして保持すべきデータ項目を加えた改訂案を提示した。
【研究目標3】
親・家庭の要因に対する3~4か月児健診と1歳6か月児健診の判定の変化を類型化し、支援対象者に対する支援状況を個別支援の受け容れと支援事業の利用に整理・数値化して分析した。その結果、判定の変化と支援状況に有意な関連性が認め、判定の変化と個別支援や支援事業の受け容れ・利用状況の関連性に、支援の評価モデルとして妥当な解釈を与えることができた。
結論
疫学的な視点も加味した標準的な健診項目を提示し、医療経済学的にその効果を分析する手法を開発することができた。今後、他健康診査等との連携によるデータヘルス時代の乳幼児健診事業を企画するために必要な事項の整理と方向性を示す予定である。

公開日・更新日

公開日
2019-08-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2019-08-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201807018Z